船の大手メーカーでは、新品だけではなく中古のエンジンも販売している。 しかし中古でも、修理費・取付費などが入って数百万円の値が。 なかなか手が出せない値段。
自分で修理して治るのであれば・・・ 修理前のものならもう少し値段も下がるかと、解体屋で見つけたエンジン。 格安ではあるが、馬力がやや弱かった。
修理代がかさむエンジンは商品としての価値を失う。 そんなエンジンは東南アジアやアフリカに輸出される。 輸出業者で、また新たな格安エンジンと出会えた。 しかし、これも馬力が足りず・・・
修理も販売も行う工場兼販売店には、中古エンジンが たくさん並んでいた。 その中の、さび付いて、部品も転がっているエンジン。 他のエンジンを修理するための部品取り用に置いてあったものらしいが、 何と、タダで譲ってくれるという。 馬力も申し分なし。 しかし、このボロボロのエンジン、本当に動くのかは治してみないとわからないらしい。
エンジンが生き返るかどうか、 生命線は6本ある「シリンダー」にかかっている。 シリンダーとは、ピストンの動きで熱エネルギーを動力に変える部分。
この重要部分は生きているのか? エンジンを全てばらし、点検をすることにした。 ばらせばこんなにも細かくなるエンジンの部品。 小さなネジ一個でも紛失してはならないらしい。
シリンダーの内壁部分、ライナーという部分のキズ。 この錆を削り取らなければならないが、この修復作業は諸刃の刃。 ピストンとシリンダーのすき間はコンマ1mm以内。 ライナーを削りすぎても、エンジンが作動しなくなる原因になってしまう。
失敗の出来ない難作業。 だが、削りすぎることもなく、ピストンはぴったり収まった。
もうひとつ、エンジンの重要部分、バルブ。 シリンダーの吸気、排気を調節するための弁なのだが、ここが錆びると吸排気のバランスが悪くなり、不完全燃焼を起こす。
バルブがシリンダーヘッドに密着するように形をすり合せていく。 だが、本職の人でも1本につき40分もかかる細かい作業。 しかも、バルブの数は12本・・・
果たして修復は成功したのか? 錆止めを兼ねたペンキも塗られ、エンジンを動かす最終チェック。 バルブの錆が取れていないと黒い煙が出るという。 逆に完全に治っていれば透明に近い煙が出るというが・・・
動いた! 爆音とともに激しく上下する6本のシリンダー。 煙の色も上々。 そうなれば、一刻も早くつれたか丸にエンジンを収めたい。