半鐘。それは、警報・合図の際に打ち鳴らすための梵鐘より小さな釣り鐘。
中国大陸で楽器として造られた青銅製の金属器が鐘の原形と言われる。中国には紀元前16世紀〜前5世紀にかけて、鐃(しょう)や鉦(せい)とよぶ楽器があり、合戦の合図や、祭祀饗宴で使われた。これが鐘の祖形と考えられ、柄を持って叩いたのが、やがて大形となり建屋内に釣り下げるように変わり、朝鮮半島を経て、日本へ伝わったものと言われている。DASH村では、同時に建設する火の見やぐらに吊り下げるため、2004年夏から製作を始めた。果たしてDASH村に半鐘の音は鳴り響くのか!?



1.デザイン決定
半鐘作り班長・達也がデザインを決める。鐘を吊るす龍頭という部分は北登、表面に施す模様は八木橋の足拓と、作物の豊作を願う「豊」の字と、村長に決定。
2.砂づくり
良い音を奏でる鐘は一定の厚みでなくてはならない。一定の厚さの鐘を作るためには型を作りそこに液体と化した金属を流し込む鋳造という方法が適している。
半鐘の型の素材となる砂を里山から掘り出す。(耐火性、粘着性があり、目の細かいものが適している) 瓦づくりで使った粘土に水を混ぜ、そこに掘り出した砂を混ぜる。混ざったものを団子状に固め、完全に水分がとぶまで直火で焼く。褐色に焼き上がった砂を取り出し、細かく砕く。砕いた砂をふるいにかけ、目の細かい砂だけを取り出し、型の素材が完成。
3.外型・中型づくり
金枠と呼ばれる金属の型に砂を押し込んでゆく。金枠には上の段と下の段があり、下の段から砂を敷き詰めていく。そして、金枠に設置されている木枠を回し、半鐘の外側となる輪郭をつくる。輪郭が出来れば、水で溶いた砂をそこに塗り、再び木枠を回す。こうすることで、表面の目が細かくなり、銅を流し込んでも砂の隙間から漏れなくなる。下の段が出来れば、上の段をのせて同じ作業をする。半鐘の内側となる中型も同じく、木枠を回し、輪郭をつくって表面に砂水を塗り、また木枠を回す。
こうして形になった外型と中型を、水分が完全にとぶまで乾燥させる。模様が入る前の外型と中型の完成。
4.乳づくり
外型を削り、直線などの模様を入れれば、金枠の上下を分割し、乳づくりに入る。下の段にコンパスで印をつけ、等間隔に穴を108つあけていく。穴をあければ、粘土でつくった乳の型に油を塗って、その穴に押し付けて均等な円形をつけていく。
108という数字は人間の煩悩の数。煩悩を乳として鐘につけ、それを撞くことにより煩悩を突き飛ばすといわれている。
5.外型の模様づくり
八木橋の足型をとる。その足型を綺麗に整え、粘土を押し付けて型をとる。これをしっかり乾燥させ、外型にはめ込む。この時、周囲を崩さぬよう、必要なだけの大きさの穴をあける。しっかり穴があけば、接着剤代わりの粘土をつけ外型に埋め込む。

「豊」の文字と村長をつくる。細工するものを和紙に書き、反転させ、外型に水で貼り付ける。それをヘラで押して型の表面をへこませ形づくる。村長は口ばしのみ、本人から形をもらう。
6.龍頭・撞座づくり
型の材料としてつくった砂をさらに目の細かいふるいにかける。それを水に溶かした瓦の粘土と混ぜる。この粘土で、半鐘を吊るす部分である「龍頭(りゅうず)」と、半鐘を鳴らす際に打つ部分である「撞座(つきざ)」をつくる。ここで出来た型の型は、「原型」という。原型を2日干した後に素焼きする。素焼きが終われば、粘土に押し付けて型をとる。こうして出来た型は「土型」と呼ぶ。土型も2日間乾燥させ、素焼きする。
八木橋の足型を埋め込むのと同じようにして、撞座を外型に埋め込む。
龍頭は、取り付けるために外型に穴をあける。そこへ龍頭の土型を埋め込み、銅を流し込む湯口の場所を確保し土で固める。
7.銅流し込み
地面に穴を掘り、溶鉱炉を設置する。温度を上げるため、風を送るふいごを溶鉱炉に管でつなげる。 2時間程ふいごで風を送り続けると、銅がほぼ液体化する。それに音を良くするための錫を入れて溶かし、それを型に流し込む。型に流し込み一定の厚さ(約5mm)にするのがよい音を奏でる鐘を作るためのポイント。
1日冷やし、半鐘を傷つけないよう少しずつ型を壊していく。全て壊し、ヤスリなどで手直しして水で洗い流せば半鐘の完成。
火の見やぐらに吊るし、叩いてみると、見事な半鐘の音が村中に響き渡った。