立春間近の村なのに、春には程遠い寒さが続いている。
この寒さで水車の輪も氷柱に包まれ冬休み。
そんな中、水車に替わり粉を挽いてくれる優れものが完成した。

それは手回しの「石臼」。まさか私達の手で石臼ができるとは思ってもみなかった。
あんな硬い石を私達の手で加工できるのか、不安ばかりが頭をよぎった。
石臼の原料となる火山岩を採取したが、それは丸い石臼とは程遠いただの石の塊だった。
本当に石臼ができるのか、さらに不安は募った。




そんな中、徐々に作業は進みやっとのことで丸い形になった。石を削るといっても、力で石をたたけばいいというわけではなく、たたく石の場所によって削れる場所も変わる。本当に難しかった。でも、どんどん丸くなっていく石を見るのは嬉しくて、夢中で石を削っている私がいた。
  苦労の結果、いびつながらも無事石臼は完成した。完成した石臼でさっそく蕎麦の実を挽いてみると石臼ならではのいい音がした。臼の隙間から出てくるきめ細かい蕎麦の粉。今までの石臼とは違って手で触ると指の指紋に入るほどのきめ細かさ。

 さっそく蕎麦にして食べてみると、打ち手の腕のせいか、寒晒したそばの実のせいか、苦労して作った石臼のせいか、香りもよくて歯ごたえもあり、いくらでも食べられそうな気がした。挽き立て、打ちたての蕎麦を食べられるなんて最高の贅沢かもしれない。
  こんなおいしい粉を作ってくれる石臼。今度は色々なものを粉にしてみよう。


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