中国で産まれた桃は「毛毛(もも)」といわれ、毛がいっぱい生えた硬い果肉で、形は先がとがったものだった。それが、中国からシルクロードでペルシャへ。
古代オリエント一帯、ギリシャ、ローマにも伝わり、17世紀にはアメリカ大陸にまで伝わった。
中国から西へ行った桃は果肉が黄色くなる。白桃は日本独特の桃。
1875(明治8)年、中国から蟠桃(ばんとう)、天津水蜜、上海水蜜の3種の桃が日本に伝わり、これらが日本の桃の源流となった。
「邪気を祓い不老長寿を与える植物」として大切にされた。
非常に数が少なく、全国に多くとも2、30本しかないと言われる。
座布団をねじったような姿は異様だが、濃厚でまったりとした味わい。
西遊記にも登場している。
とがった先端部とはっきりした割れ目が特徴。
戦前まで絶大な人気を誇った品種だったか、今ではほぼ絶滅状態。
桃太郎伝説にも登場しているのではと言われる。
桃太郎の中の桃
桃太郎伝説は、岡山県に数多く残されるが元々は、「桃を食べて若返ったおばあさんが子供を生んだ」というのが筋書きだった。
古来から桃のアンチエイジング効能や回春効能は注目されていた。
日本に伝わる「桃太郎」は鬼退治として有名だが、この鬼とは「厄」のことである、という説もある。
中国では、古来桃には霊的な力があると考えられ、邪気を払うために「桃」を使った話が生まれた。
犬、猿、雉はそれぞれ、犬=人情、猿=知恵、雉=勇気の象徴とされている。
日本の桃の源流となった。
蟠桃と天津水蜜はほとんど絶えてしまったが、岡山の地で独自の発展を続けた。
中国では、長寿の象徴とされている桃は、食物繊維の中でも水溶性のペクチンを多くふくんでいる。冷え性を改善したり、血行をよくする効果があり鉄分や、マグネシウムも多い。
クリサンテミンの効果(桃の薬効成分)で肌・内臓の老化を強力に予防する。桃の果実に含まれる「ケンフェロール」が、血液をサラサラにして心筋梗塞・脳卒中を防ぐ。
明治以来、昭和30年代まで、全国1、2の生産規模を誇っていたが、最近では山梨・福島・長野など押され、全国5位。
白桃にこだわり、全国の白桃生産量の7割が岡山県で栽培される。
白桃は実が柔らかくデリケートなので、手間がかかるし、搬送時のリスクも高くなるので、値段も上がる。関東では高級デパートや果物専門店にしか売られず、スーパーに卸せるとしても、岡山県やその近隣の県のみ。
岡山県は品種開発に大きな役割を果たしている。
日本の桃の主力品種は白桃と白鳳の2系列に分かれる。白桃は岡山生まれ、神奈川生まれの白鳳も
白桃が元となっているので、日本の桃の源流をさかのぼれば、岡山に辿り着くと言っても過言ではない。
岡山県の中で、最も栽培が盛んな一つが、岡山市北区の一宮地域。
岡山県の白桃最高ブランド、清水白桃が発祥の地という、古くから桃づくりが盛ん。
気候が温暖で、雨が少なく、丘陵地帯なので水はけも良く桃づくりに最適。
後継者の育成にも力を入れており、今回お世話になった池宗さんもその一人。
清水白桃
岡山市芳賀の西岡仲一氏が、昭和7年に白桃と岡山3号の混植園で発見した偶発実生。
『大玉』『高糖度』『とろける果肉』『滑らかな姿』、それらすべてが高次元でバランスしている。
桃の最高峰、桃の王様、桃の女王・・・などとも評される。
花粉が多く受粉しやすいが、自然に落ちることが多く、収穫量が不安定。
一宮選果場果樹部会 会員
小学生2・3年の頃から、桃が大好きで、将来作りたいと思っていた。
大学は農学部に進み、論文も桃について。一時サラリーマンにもなったが、奥さんのお爺さんのお手伝いをきっかけに、農業への想いが再燃。農地を受け継いだりしたが、一から桃の栽培を始め、現在では6箇所、90アールの畑を所有する。
奥さん:池宗祥江さん | 女性部:吉原知子さん |
1~2月頃 枝の剪定
1年間で伸びた枝を放置しておくと、日当たりや風通しが悪くなり、甘くて美味しい桃を作ることが出来なくなるので、必ず剪定する。
3月頃 開花
開花前には、摘蕾(花のつぼみの選定)を行う。
※花を咲かせる際に相当なパワーを使うので、咲かせる花は少なくし、果実を熟すまで温存しておく。
4~5月頃 予備摘果
満開後30日ごろから、予備摘果を行う。
※受精できなかった実は小指大程度にまでしか大きくならないので、栄養分の無駄遣いを避ける。
桃が赤く色づく≠熟す
一般的にピンク色の桃を栽培している農家は、収穫の2週間前まで袋がけしている。
※桃の色づきを鮮やかにする為。
通常、若い桃は緑色をしているが、これは葉っぱと同じくクロロフィル(葉緑素)を含んでいる為。
この状態で、光に当てると、アントシアニンが反応して、緑色の上に赤く色づいてしまい、鮮やかな色合いにならない。そこで、袋を被せ光合成が出来なくすると、次第にクロロフィルがなくなり、クリーム色に。このタイミングで袋を外せば、鮮やかに赤く色づく。
※袋を剥がすとマルチを敷くなどして、まんべんなく光を当て、キレイに色づかせる。
桃をピンク色にする成分 アントシアニン
アントシアニンは、ポリフェノールの一種で、青紫色の天然色素。
アントシアニンは、紫外線やウイルスなどの外敵から実(身)を守るために植物がつくり出した成分※人間は太陽からの紫外線を受けると、メラニンという色素によって肌を黒くすることで、体内に紫外線が入ることを防ぎ、細胞が傷つかないように守る。
太陽に長い時間当たっている程、植物はより多くの量のアントシアニンを蓄える。
アントシアニン(Anthocyanin)とは、ギリシャ語のanthos=「花」とcyanos=「青」が語源で、「花の青色成分」という意味を表すが、青色だけではなく、赤色、紫色など幅広い色調を持つ。
現在までに発見された種類は500以上にものぼるといわれる。
様々な条件(pH、温度、濃度、金属イオン、酵素など)によって、色調・構造に微妙な変化が現れる。
抗酸化力(たんぱく質や脂質、DNAなどが酸化するのを防ぐ力)に注目が集まり、視機能の向上、肝機能の改善、メタボリックシンドロームや血糖値上昇の抑制効果など、アントシアニンがもたらす様々な生理機能や効果が明らかになり、広く利用される。
主に、色の濃い青紫・黒・赤色の食材に含まれる。主に、ブルーベリー・ナス・ぶどう/シソなど。
蛾には、夜行性と昼行性の蛾がいる。
桃の敵は、夜行性の蛾。この夜行性の蛾は、よく発達した口吻(こうふん)を果実に刺して、果汁を吸う性質がある。
傷がつくとそこから傷み、商品価値がなくなる。
夜蛾は、太陽の光が苦手なので、日中は活動せず、太陽が沈んだ夜間に行動する。
桃の畑にあった防蛾灯は、この夜蛾の特性を利用し、黄色いランプで疑似の太陽を作る事で寄せ付けないようにしている。
桃の位置は、香りを頼りに察知している。発達した触覚に、香りの成分を探知する機能があるのではないかと言われる。
※昼行性の蛾は、主に紫外線の領域で判断し行動していると言われている。よくある紫外線ランプは、わざとそこに集め、駆除している。昼行性の蛾も桃の畑に来る事はあるが、主に葉っぱを食べたり、花の蜜を吸ったりするだけなので、特に害はなく、対策もしていない。