- 本土最南端の佐多岬より、南東40㎞の位置にあり、全長およそ58㎞、幅およそ5㎞~12㎞と細長い島。
- 一番高いところでおよそ282mと低く平らな島。
- 鬼界カルデラの噴火による、火山灰土が堆積して出来た土壌なので、水はけが良く、農地に恵まれている。
- 全国有人離島の中で5番目の大きさ。
- 気候は「亜熱帯性気候」だが、冬場は北西の季節風が吹き込むことが多く、霜もおりる。
- 日本で唯一実用衛星の打ち上げが行なわれている「種子島宇宙センター」がある。
- 鉄砲がポルトガル人によって初めて伝来した土地としても有名。
- サツマイモ栽培国内初成功地
→1698年、琉球から取り寄せたさつまいもを農家の大瀬休左衛門が試行錯誤の末、日本で始めてサツマイモの栽培に成功した。そのおかげで日本全国が食糧難に襲われる中、種子島は難を逃れたのが知られるようになり、飢饉の救世主として日本全国に広がった。
屋久島と種子島の違い
島の成り立ち
屋久島と種子島は最短距離で18kmしか離れていないが、それぞれの地形は全く異なる。
種子島
海底の堆積物がプレートの運動によって、押し上げられ隆起し、形成された。
→日本列島と同じ。
→その為、元々は粘土質の土壌。7300年前に起きた鬼界カルデラの大噴火によって、火山灰が堆積し、肥沃で、通気性・排水性に富んだ土壌になった。
屋久島
元々は、種子島と同じような平坦な島だったが、およそ1550万年前に地下2~3kmのマグマだまりが上昇し、冷え固まることで1500万年かけて2000m級の山々を作り出した。
→その為、岩が島の大部分を構成することになり、種子島とは全く違う地質になった。
→2000m級の山々に雨雲が引っかかり、せき止められるので、「屋久島は月のうち、三十五日は雨」と言われるほど大量の降雨をもたらす。
種子島のだからこそ生まれる、ずば抜けた“甘さ"
その甘さの秘密は、種子島の気候、風土が大きく関わっている。
海と大地からの恩恵
- 360度海に囲まれ、一番高いところでも252mと平たいので、マグネシウムやカルシウムといったミネラルをたっぷり含んだ海からの潮風が、何百年もの間、大地に降り注ぎ、ミネラル分が豊かな土壌を産んだ。
- 火山灰土は水はけが良く、サラサラしているので根を伸ばしやすく、その分、栄養をよく吸収する。
→より多く糖分を作り出す事が出来る。
→火山灰土は鉄分を多く含む土壌なので、濃厚で美味しい芋が育つ。
太陽からの恩恵
- 種子島は、日照時間が長く、日差しが強いため、光合成を充分に行う事が出来る。
→より多く糖分を作り出す事が出来る。
- さつまいもは寒さに弱く、10℃を下回るまでには収穫しなければいけないが、種子島は年間平均気温19℃と温暖なので、長く畑で育てられる。
→長く光合成できるので、デンプンをより多く溜め込む。
安納芋農家
中園正男さん(65歳)
農業歴は47年。高校を卒業した直後から農業を始め、安納芋も昔から栽培していた。
農業以外に和牛の飼育にも力を入れており、グランドチャンピオンを獲得するほど。
現在は、次男の昌吾さんが継いでいる。
沖田浩司さん(34歳)
22歳の時に、正男さんの長女・めぐみさんと結婚したのを機に安納芋の栽培を手伝い始める。
一から学び、現在では品評会で金賞をとるまで。
安納芋料理を作ってくれた方々
中園明子さん
中園正男さんの奥様
中園晴菜さん
中園正男さんの次男・昌吾さんの奥様
- 収穫時期:9月上旬~12月上旬
- 日本発祥の地:鹿児島県 種子島 安納地区
→第二次世界大戦後、スマトラ島北部のセルダンという地域から兵隊が持ち帰った1個の芋が始まりと言われる。その芋を島内で栽培したところ、大変甘く、食味が良いことから、種子島では昔から食べられており、さつまいも=安納芋だった。
→平成元年に鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場で優良品種の選抜育成に取りかかり、平成10年に品種登録され、知られるようになっていった。
→安納地域から他地域に拡大したため、「安納いも」と呼ばれるようになった。
- 生でも高いものだと糖度16度にまでなるが、1ヵ月ほど熟成させ、低温でじっくり焼くと40度を超えることある。その糖度は、砂糖を使ったジャムに匹敵し、その甘さから蜜芋とも呼ばれる。
→そのままでもスイーツのようで、芋の中ではダントツに甘い。
- 一般的に、さつまいもは焼き芋にするとホクホクするというイメージがあるが、安納芋は、その蜜の量から柔らくクリーミーな焼き芋になる。
- 糖度のわりに、他の芋よりもカロリーは低い。
→食物繊維を多く含む為、カロリーの吸収が抑えられる。
- ビタミンCがリンゴの10倍以上あるなど、ミネラルやビタミン類が豊富。
- ニンジンと同じようにカロテンを含む為、その果肉はオレンジ色。
安納芋の特徴
皮
表皮は淡いピンク色。
薄く、軽く引っ掻いただけですぐに剥けてしまう為、桃のように大切に扱わなければならない。
→収穫から出荷まで手間ひまがかかる。
→皮がむけると傷みやすく、日持ちが悪くなる。
→一般的なサツマイモより収量が少なくなる。
→繊細なので、流通させるのも難しい。
甘味
安納芋の特徴は甘味としっとりとした食感。
→糖質が全体のおよそ30%を占める。
→他のサツマイモと比べてショ糖が多く含まれている。
→しっとりとした食感は、オクラや山芋などに含まれている多糖類を多く含んでいるため。
ショ糖とは?
- 植物自身が成長するため、また子孫を残すために必要な膨大なエネルギーを確保しておくために、デンプンやショ糖を作ると言われる。
- 料理に使っている砂糖の主成分。
- 安納芋は、その含有量が一般的な芋の3倍ほどある。
安納芋が甘くなる仕組み その①
安納芋を加熱すると、でんぷんを分解するアミラーゼが作用して、麦芽糖が生じるため甘くなる。
→比較的低い温度でじっくりと加熱することでアミラーゼが活発に働く。
→電子レンジは高温かつ短時間で加熱するため、アミラーゼが作用しにくい。
→蒸かしイモの場合はその中間と言える。
糖を作り出す仕組み
光合成によってまず糖質が作られ、それがデンプンになるが、各部位に輸送される時は、再び糖質に変わる。
→デンプンは貯蔵物質として優れるが、実際に利用する時は糖に変化。
→「(光合成)→糖質→デンプン→糖質→(輸送)→デンプン→糖質」という具合に、分解・構築を繰り返す。
糖度の測り方
一般的に、果物や野菜の糖度の測り方は、その物の果汁を絞り出して、その果汁を測る。
しかし、安納芋の場合、蒸した芋と水を『1:1』の割合で希釈し、測定。
→希釈している分、出た数値を2倍したものが、その安納芋の糖度になる。
苗
- 種子島高校では、生物生産科で植物バイオ科を選考した生徒に授業の一環として、農家さんが使用する苗を培養している。
→植物の培養は、様々な分野で活用できるだけでなく、地元の特産品を守る重要な役割を担う事になる。
- さつまいもは、作物が育ちにくい土地でも栽培されるなど生命力が強いので、脇芽を切り取り、植えると根が育つ。その特性を利用し、種や種芋を利用するのではなく、その芽を培養し、増殖させる方法で行われる。
使用する苗の条件
- 一株に成る個数が多く、形が揃った優秀な系統の芋を選抜。
- その芋を元に栽培し、2年連続して優秀な株を選抜。
- 脇芽を切り取り、寒天に差し、ある程度の大きさになるまで育てる。
→芽の先端はまだ菌に侵されていない(ウイルスフリー)の苗。
- 苗が各農家さんなどに配布された後も、蔓を切り、挿し苗をする事で株を増やす。
収穫
- つる刈り機で地上部の葉やつるを粉砕。※粉砕された葉やつるは、畑の栄養分としてすき込んでいる。
- 皮が剥けやすいので、芋掘り機の刃を芋のすぐ下を通らせ、畝を崩すことで地上にあぶり出す。
→刃の高さが浅いと芋を切断し、深いと畝を崩せずに芋を掘り取れない。
- 芋の根を切る。
- 芋同士がぶつかり合い、皮がむけるのを避ける為にカゴの中で茎から切り離す。
蟻
さつまいもは、自分で作り出した糖分を蜜腺から出し、葉を食い荒らす天敵のヨトウ蛾の卵を食べる蟻を誘き寄せる。
→蟻は芋を食べる訳ではないので、害は少なく、両者はうまく共存している。
泥落とし
一般的には水洗いで泥を落とすが、安納芋は水で洗うと糖度が落ちたり、皮が剥がれ傷みやすくなるため、スポンジの柔らかい部分で丁寧に擦り、泥を落とす。
貯蔵
一般的にさつまいもは収穫後、すぐに出荷されるが、安納芋は一ヶ月ほど熟成。
→温度と湿度を管理し、さつまいもが出す二酸化炭素を外に逃がす事により、デンプンが糖分に変わり、極上な甘味を引き出す。
安納芋が甘くなる仕組み その②
デンプンは次世代の苗の栄養分だが、越冬するためにも蓄えられている。
→さつまいもは、寒さにはめっぽう弱く。氷点下になると腐ってしまうので、気温が下がるとデンプンを糖に変えて身を守る。
安納芋のコロッケ
- じっくりと焼き、甘味を充分に引き出した焼き芋の身をすり潰し、ペースト状にする。
- ひき肉と玉ねぎを塩・コショウで炒める。
- 1と2を混ぜ、手のひら大に固める。
- 小麦粉・とき卵・パン粉を付けて、きつね色になるまで揚げる。
安納芋のジャコいも天
- 生芋を棒状に切り、塩、小麦粉、水を絡める。
- ジャコを加えて、芋を3本でまとめて揚げる。
安納芋のタルト
- 焼き芋をペースト状にし、生クリーム、バターを加えて、よく混ぜる。
- タルトの生地に1を敷き詰め、茹でた芋を飾り付ける。
- といた卵黄にハチミツを混ぜ、表面に塗る。
- 180℃で25分焼き、完成。
安納芋のスムージー
凍らせた焼き芋のペーストに牛乳・生クリームを入れて、ミキサーに30秒ほどかける。