出張DASH村

東京都練馬区

東京都で23番目の区として誕生した一番新しい区。
人口は約72万人と23区内では2番目に多く、また、住宅地の合間に畑が点在するなど、現在でも多くの自然が残っているという特徴がある。

お世話になった方

渡戸章(わたど あきら)さん

練馬で昔から練馬大根を作り続けているベテラン農家。82歳になる現在でも、大きな練馬大根を
バリバリ収穫している。江戸時代から先祖代々練馬区で農業を続けており、現在その6代目にあたる。知識の多さから、若手に指導をすることも多い。

吉野美智代(よしの みちよ) さん

練馬大根料理に詳しい地元の料理自慢。自身も練馬大根を栽培している農家さんでもある。

練馬大根

東京都練馬区で江戸時代から栽培されている伝統野菜。主に沢庵漬けに使用され、当時人口100万人を超えた江戸の人々の食卓を支えてきた。昭和の初め頃まで栽培が盛んに行われたが、昭和30年頃に栽培が衰退し、ほとんど出回ることがなくなっていった。
しかし近年、練馬区役所やJA東京あおばなどの活動により、徐々に栽培する農家が増えてきている。

■練馬大根の特徴【辛さ】

練馬大根は青首大根に比べ、辛味が強いのが特徴。青首大根はどんな料理にも合うように品種改良されているため、辛味は少ない。しかし、練馬大根は品種改良をされていない昔ながらの大根のため、元々大根がもっていた辛味を持つ。

辛味成分:イソチオシアネート
→練馬大根の辛味の元になっている成分。わさびやカラシにも含まれており、大根の組織が傷つけられることによって発生する。そのため、ただ大根をかじるよりも、大根おろしにして食べる方が辛味を強く感じることができる。特に根の部分に多く含まれている。

昔ながらの食べ方“辛味餅"
昔から正月によく食べられている、お餅に大根おろしや醤油をからめた料理。
大根には炭水化物の消化を促進するとされる「アミラーゼ」という酵素が含まれているため、お餅との相性は抜群に良い。

■練馬大根の特徴【大きさ】

大きさは約70cm~1mもあり、一般的な青首大根と比べ、大きさは約2倍。重さは4kgになるものもある。色が白く、首元から細くスラリとした綺麗な形状をしている。
その姿から、江戸時代の人にとっての“大根足"という言葉は“褒め言葉"だったという。

収穫が大変
地中深くに大根が伸びていることから、収穫は大変な重労働。
練馬大根を1本抜くには、普通の大根を5本分抜くぐらいの力が必要とされ、大人でもなかなか抜く事ができない。

収穫用の棒
→渡戸さんが愛用している、長さ70cmほどの鉄製の棒。
大根の横に刺し、土をほぐすことで練馬大根が収穫しやすくなる。
100年以上前から使われているもので、元々はゴボウを収穫するために作られたもの。



練馬大根が育つ土壌:黒ボク土
練馬区周辺は大昔、雑木林などが特に多い土地だったと言われている。関東ローム層と呼ばれる赤土層の上に、その雑木林から出た枯れ葉などが長年に渡って堆積してできた「黒ボク土」という土壌が形成され、それが深さ約60cmにわたって広がっている。土質が柔らかく、有機物を多く含んでいることから、大根などの根菜類が育つのに最適な土地となっている。

■練馬大根の沢庵漬け

練馬大根は元々、野菜不足になりがちな冬場を乗り切る保存食として、沢庵漬け用に人々の食卓に広まっていった。現在でもそのほとんどが沢庵漬けに加工されている。

練馬大根の沢庵漬けができるまで

1:大根を洗う
収穫した大根の葉を切り落とし、土を水で洗い流す。
この際、練馬で昔行われていたのは「サメの皮」を使って大根を洗うやり方。
しかし入手の困難さからあまり使われなくなり、現在では金たわしや機械化などがされている。

サメ皮
サメのギザギザな皮を使って洗うことで、大根の表面にわざと傷をつける。そうすることで、そこから水分が抜けやすくなり、大根を干した際に乾きやすくなる。
渡戸さんも、150年前のサメ皮を所有している。

2:大根を干す
「たち編み」という紐に大根を編みこんでいく方法で、大量に一気に干される。
2週間ほど干すことによって、元々95%近く含まれている水分を60%ぐらいまで落とし、手に持ってクネクネと曲がるほど柔らかくなれば最適な干し加減。

3:漬け込み~完成
干した大根は主に「米ぬか」「塩」「砂糖」などでシンプルに漬けて込まれていく。
1か月ほど漬け込めば、練馬大根の沢庵漬けが完成。
シャキシャキとした強い食感と、大根の風味が特徴。

調理

大根餃子

  1. 大根は皮をむいて2~3mmの輪切りにする。
  2. 輪切りにした大根に塩をふり、5分ほどおいてしんなりさせる。
  3. ボウルに豚挽き肉を入れ、刻んだニラ、おろした生姜とニンニク、さいの目切りにした大根、片栗粉を加えてよく練り、塩・コショウで味つけをする。
  4. (2)の大根をすすいで塩気を落とし、水気をペーパータオルでよく拭き、具をのせる側に片栗粉を薄くつける。(3)のたねをのせて半分に折りたたむ。
  5. フライパンにサラダ油を熱し、(4)を並べ入れ、フタをして弱火でじっくり焼く。
    焼き色がついたら裏返し、計7~8分ほど焼いて完成。
    お好みでしょうゆをつけて頂く。

練馬大根のみぞれ鍋

  1. 葉元部分の大根を厚めの輪切りにして更に半月切りにし、根の部分を鬼おろしで擦りおろす。
  2. かつおと昆布でとった出汁に半月切りにした大根を入れ、塩、醤油、酒、千切りにした生姜を入れて味を整える。
  3. 豚ばら肉と椎茸を入れ、肉の色が変わったら、大根おろしをたっぷりと入れる。
    最後に水菜を乗せ、一煮立ちさせたら完成。

練馬大根の菜めし

  1. 大根葉は水洗いし、生のままみじん切りにする。
  2. フライパンにゴマ油をひきみじん切りにした葉を入れ、塩で味付けする。
    ごはんも入るので、少し濃いめに味付けする。
  3. 温かいご飯に(2)と少し炒った桜えび、カツオ節、白ゴマを入れ、まんべんなく混ぜる。
  4. おにぎりを三角に握り、盛り付け皿に盛り付ける。
    大根の葉にはビタミンCやカルシウムがほうれん草の5倍近く含まれている。