放送内容

2017年3月 8日 ON AIR

空港に潜む裏切り

毎年多くの日本人が海外旅行を楽しんでいる。
空港に着くとまずチェックインをし、カウンターで荷物を預けるのが一般的。
そして預けた荷物はカウンターからベルトコンベアーで運ばれ、
X線検査によりバッグの中に危険な物が入っているかどうかをチェックされる。


もし、怪しいと思われたら検査官が中を開け直接確認を行う。
実は、2003年以降に作られたスーツケースの多くは、
あるマスターキーで開くようになっている。


この機能が出来たきっかけは、2001年に起きた「アメリカ同時多発テロ」。
それ以来、アメリカ国内全ての空港で、厳重なセキュリティチェックが
行われるようになった。


アメリカでは「運輸保安局」、通称TSAに荷物をチェックする権限が与えられている。
X線検査で問題があった荷物は別の場所へ運ばれ、TSA検査官が荷物を開けチェックする。

またX線検査で問題が無くても、ランダムに開け、検査する権利もある。
万が一この時、TSAロックではないカギがかかっている荷物は壊して開けてもいい。
これは全てTSAと乗客の信頼関係のもとに成り立っている。


しかし、ここでとんでもない裏切り行為が行われていた!


"検査官のありえない窃盗行為"


アメリカ・ニューアークリバティー国際空港でTSA検査官として働く男。
彼は乗客の私物を盗むというあり得ない行為を行っていた。
しかも、それはこの男だけではなく、他の検査官達もいたる所で盗みを働いていた。


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こうして盗んだ物は...ネットオークションに出品していたが、
そこから足がつき、男の自宅が調べられることになった。


そこにあったのは、これからオークションに出そうとしていたのか、
デジタルカメラ66台、31台のパソコン、20台の携帯電話、ビデオゲームが17セット、宝石類13個、GPS機器12個、11台のMP3プレーヤー、8つのカメラ用レンズ、6台のビデオカメラと2台のDVDプレーヤー。


男は窃盗罪で3年の実刑を受けた。
実はアメリカの空港では2003年からの約12年間で、
なんと513人ものTSA検査官が窃盗を理由に解雇されている。


そして、TSA検査官のチェックを問題なく通過したとしても、まだこんな事が...。


検査が済んだ乗客の荷物は行先別に振り分けられ、荷物係により、飛行機に積み込まれる。
大型旅客機は積み下ろしが短時間ですむよう、荷物は一度コンテナにまとめられ、
貨物室に積み込むのが一般的。そしてここでも裏切りがあった。


アメリカ・フロリダ州、マイアミ国際空港。
ここは2010年~14年までの5年間で荷物の窃盗件数が、1168件にも上った。


これでは空港の信頼に関わると...警察に捜査を依頼。
警察は隠しカメラを設置し、監視を行った。


こうしてコンテナや貨物室など荷物が通過するあらゆる所に隠しカメラが
設置されたその数日後。


なんと荷物係が乗客のバッグを開け...物色しているではないか!
誰も見ていない貨物室でやりたい放題!


この男はなんとバッグから財布を抜き出し、現金を盗んだ。
悪びれる様子もない。仲間と雑談を交わしながら盗む者も。
手慣れた様子が常習犯であることを想像させる。


犯行に手を染めた職員は解雇。
そして逮捕されたが、それはマイアミ空港に限ったことではない。


"各国にはびこる悪徳空港職員"


多くの日本人が訪れる観光大国イタリア。
ここでも信じられない事件が起きていた。


航空機内の貨物室で、荷物運搬係がバッグをこじ開け、現金や電子機器を盗み取っていた。
カギがかかっていても無理やりこじ開け、盗む。


仲間同士の連携プレイで、金目の物は残さず全て盗む。
鍵どころか荷物ごと壊して盗もうとする者も。
この事件で49人の荷物係が逮捕、解雇された。


しかしなぜこんなにも堂々と盗みが行われるのか?
それは...多くの場合で犯行が行われるのは、出発する空港での事。
そして盗みが発覚するのは到着した空港。


それぞれ、国が違う場合もある。
そのため、捜査の手が及びにくいのだ。


イギリス、ロンドンのガトウィック空港では、
また別の裏切り行為が発生していた。


警察補助官として働く女性、アレクシス・スコット。
警察補助官とは、パトロールを行い警察官の補助をしながら、市民の安全な環境を作る仕事。


彼女はまじめで、上司からも評判が良かった。
だが、彼女は信じられない事をしていた。


飛行機に乗る際、全ての手続きが終わると、乗客は搭乗ゲート前で出発を待つ。
彼女はそこでパトロールをし、
搭乗時間ギリギリにやってくる1人の男性の乗客に話しかけた。


この男性はトルコから来ていたビジネスマン。
仕事を終え、帰国する所だった。


所持金について聞くアレクシス。
実はイギリスでは、申請なしで1万ユーロ(約8400ポンド相当)以上の現金を、
EU圏外に持ち出せない事になっている。


男性が大金を持っていると知ったアレクシスは、
なんと、1000ポンド以外は全て預かると言い出した。


彼のように申告を忘れ、1万ユーロ以上を持ち出そうとした場合、
差額分だけを没収される事はあるが、1000ポンドを残し没収なんて事は、
通常はありえない。


ましてや、警察補助官である彼女にそんな権限はないのだが、
手続きが済めば返金されると伝え、お金を返還する際の連絡先などを確認し、
それらしく振舞った。


時間もなく焦っていた男性は指示に従わざるを得なかった。
こうして、まんまと乗客から現金を奪ったのだ。


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この手口で、分かっているだけでも1万3500ポンド。
日本円で206万円以上騙し取っていた。
空港の信頼を失わせた女には懲役4年6か月の刑が言い渡された。


このように空港を出発するまでに多くの裏切りが存在するのだが...
飛行機に乗り、無事目的地に着いてもまだまだ恐ろしい裏切りがあった!!


"大胆不敵な荷物の持ち去りも"


アメリカ、フロリダにあるパームビーチ国際空港。
「荷物引き取り場」で途方に暮れる、1人の男性。


休暇でフロリダまでやってきたのに、いつまでたっても預けた荷物が出てこない。


出発するとき、預けた荷物はひとつ。
航空会社のミスで荷物が飛行機に乗らなかったり
別の飛行機に乗ったり、ということもある。


すぐに、荷物の半券を見せ問い合わせると、
確かに自分の乗った飛行機に積まれているという記録が残っている。


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実は、男性の荷物はちゃんと、荷物引き取り場の回転台に出てきていた!
そして、大胆不敵な方法で奪われていた!


それは空港の防犯カメラにより明らかになった。
荷物引き取り場を歩く男が映っている。


普通の乗客のように見えるが、この男、空港の出口の方から入ってきている。


そして、回転台の方へ向かいスーツケースを取り、出て行った。
手にしている荷物、男の物ではない。


また別の男は、出口から入ってきて回転台に向かい他人のスーツケースを
なんと2つも勝手に持ち去った!
そして何食わぬ顔をして出て行った。


防犯カメラ映像により、犯人は特定され逮捕されたが、
最近は、この手の犯罪が増えているという。


だが空港職員によると、荷物を持ち立ち去る人をさらに厳しくチェックするとなると、
スタッフも足りず、乗客が空港の外に出るまでに時間がかかり、
空港が混乱してしまうという。


世界の空港では出発から到着までこんなにもたくさんの「裏切り」が発生している。
日本の空港は世界でも安全なことで有名。海外に行く際は、特別な心構えが必要だ。

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