放送内容

2017年8月22日 ON AIR

ニオイで苦しんだ少女

イギリス・ロンドン。
この町に住む、キャシー・グレイブス。実は彼女、ある特殊な病に悩まされていた。
それは...周りの人を不快にさせる病だった!


"魚の臭いがする女の子"


キャシーがそれを自覚しはじめたのは、小学生になったばかりの頃。
クラスメイトが自分のことをクサイと言ってくる。


そう、彼女は自分の持つニオイで悩んでいた。
だが、キャシー自身はそのニオイが分からない。


母がその事に気づいたのはキャシーが生まれてまだ間もない頃。
おむつをしている娘から魚が腐ったようなニオイがした。
しかし、ニオイの出所はおむつではなかった。


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そのキャシーのニオイは年を追うごとに増していった。
常に清潔を心掛けたが、いくら洗っても、
少し時間が経つとすぐにあの魚が腐ったようなニオイが。


やがてキャシーは外に出るときは常にガムを噛むようにし、消臭スプレーもかかさなかった。
何より苦労したのは、そのニオイに自分では気づけないこと。


そもそもニオイとはニオイ分子という化学物質でできていて、
このニオイ分子が鼻腔上部の嗅上皮という粘膜に溶け込むことで、電気信号を発生。
それを脳がキャッチし、ニオイを感じる。
だが同じニオイを嗅ぎ続けていると、この嗅細胞がマヒし反応しなくなる。


学校に行く前には母にチェックしてもらうしかない。
ニオイが強い日は学校を休むこともあった。


さらに密室は苦手だった。
自分のせいで周りの人に迷惑をかけてしまう。
そのため、エレベーターやバスなども乗ることを控えるようになった。


"原因はトリメチルアミン尿症という病"


そんなある日のこと。
この日、なぜかキャシーの体臭はきつくなかった。


母には思うことがあった。
肉や魚料理を食べたときはニオイがキツく、逆に野菜系は臭わない。
この日から親子で食べ物チェックがはじまった。


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するとやはり、食事によってニオイが変わることが分かった!
キャシーの体に起きていた異変...それはトリメチルアミン尿症という病だった。


食べ物が消化される過程で小腸に達すると、
腸内細菌により「トリメチルアミン」という物質が発生する。
これは魚などに多く含まれるもので、特有の生臭いニオイがする。


このトリメチルアミンは通常、肝臓で分解され、悪臭が体外に出ることはない。
しかし、肝機能の障害や先天的な遺伝子の異常などにより、
稀に「トリメチルアミン」を分解できない体質の人がいる。


その場合、強いニオイをもつ物質は血液の流れを介して全身を回り、
汗や尿、息などに混じって排出される。
それが魚臭症候群とも言われるこの病気の正体だった。


その対処法は...食事。
実は食材によって、トリメチルアミンの発生量が大きく異なるのだ。
特にタラやサワラなどの魚介類や牛肉、大豆などの豆類がトリメチルアミンを多く
発生させると言われている。


米や小麦などの穀物やイモ類、トマトやレタスなどの野菜、
そして果物などはトリメチルアミンを発生させにくいことが分かっている。


研究がはじめられたばかりのこの疾患。
遺伝子による発生頻度は0.1%~数%だという。
そして日本にも、この疾患を抱える家族がいた!


"病と向き合って生活する家族"


魚が腐ったようなニオイがする不思議な病。
日本にも、この疾患を抱える家族がいた。


近畿地方に住む、とある家族。
7歳になる息子がトリメチルアミン尿症と診断された。


ニオイに気がついたのは、息子が保育園に行くようになった1歳の頃。
そのニオイは1日すると収まった。


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しかし、数日すると、突然またあのニオイが。
夫婦は臭う日と臭わない日をチェックするようになった。
すると、あることに気付いた。
それは保育園で出される給食の献立表。
なんと、ニオイの原因は保育園で出されていた給食の白身魚だった。


食事によってニオイが発生することがわかった夫婦はすぐにインターネットで調べ、
トリメチルアミン尿症に行きついたという。


そんな息子さんも現在小学1年生。
キャシーさんのようにクラスメイトから嫌なことを言われるかもしれない。


しかし、両親はニオイがするからコレを食べさせないといった事はしたくないのだという。
取材をした日の夕食のメニューは、なんとタラのムニエル。
ニオイの原因となる食べ物だった。


実はこの疾患は食べたからといって、すぐにニオイが発生するわけではない。
6時間から8時間後に臭ってくるのが、トリメチルアミン尿症の特徴なのだという。
だから、食べる時間をコントロールすればいいのだ。


現在、気をつけるのは朝ごはんのみで給食も特に制限していないという。
父は息子が将来、病気だからと悲観的になるのではなく、普通にみんなと食事する時でも
「これ食べたらオレ臭くなるから」と普通に言える子になってもらいたいと語る。


一方、幼いころから自らの体臭に悩まされ続けたキャシーさん。
仰天スタッフが、ロンドンで暮らす彼女を訪ねた。


現在26歳となったキャシーさん。
ご本人の許可をもらい臭いをかがせてもらうと、ニオイはせずむしろいい香りがした。


食事制限は昔からやっていたことなので、それほど苦ではないという。
対策さえすれば問題のない魚臭症候群。
キャシーさんはポジティブにこの病気と向き合っていた。

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