自分はくさい...そう思い込んだ悲劇
スメルハラスメント。通称「スメハラ」とは
ニオイによって人を不快にさせてしまうこと。
実は大きな社会問題になりつつある。
人の持つ体臭や、口臭、または香水などの香料によって気分を害している人がいるのだ。
その一方で、こんな問題もある。
自分はくさい...そう思い込んだ悲劇。
実際には体からニオイが出ていなくても、自分から出ているんじゃないかと思い込む、
体臭恐怖症、「自臭症」に悩んでいる人が非常に多いという。
"口臭を気にしすぎた半生"
仰天スタッフは自分の口のニオイに悩んでいるという、
20代後半の女性、Aさんのもとを訪ねた。
ニオイに苦しみ、辛い人生を送ってきたというAさん。
きっかけは小学生の頃、クラスメートからの何気ない一言だったという。
「ねぇ...、口、くさいよ」
突然言われた友達からの言葉。
それまで、自分のニオイなど意識したことはなかった。
臭い...と言われた事に深く傷ついてしまった少女。
とにかく歯を磨くことしかできなかった。
そして、気になったまま学校へ行くと、
皆が自分のニオイを気にしているように見えてしまった。
おそらく、彼女のニオイの事など誰も気にしていなかったと思われるが、
再び傷つきたくないと思っていたAさんは、人が近づくのが怖くなった。
班ごとのミーティングや発表など、みんなの前で口を開けることに怯える日々。
何度も母親に相談しようと思ったが、くさいと言われるのが怖くて母親にも聞けなかった。
二度と傷つきたくない...その思いから、生きづらい日々が続いていく。
Aさんは常に口をハンカチで押さえ、うつむき加減になった。
生活している全ての時間がニオイとの闘い。
エレベーターでは、ひたすら息を止める。
さらに、満員状態のバスや電車は人の視線が怖くて乗れない。
学校では人を避け、いつも1人。
やがて、自由に呼吸をすることにも怯えるようになった。
休憩中のトイレにいるときだけは、思いっきり呼吸をした。
"彼との出会いで気持ちが楽に"
口のニオイに関する病院へ行きたいと思うが、
口を開けることを考えるとなかなか踏み出せない。
でもなんとか治したい。
Aさんは、なるべく年配のできれば女性の医師がいる歯医者を探した。
そしてようやく自宅から離れた歯科医院を見つけたが、
結局、口臭で悩んでいることは恥ずかしくて言えなかった。
高校を卒業すると、親元を離れて一人暮らし。
生活費のため選んだ仕事は介護の仕事。
かなり人と密着する仕事だが...決め手は、マスクだった。
介護職は毎日マスクをしても違和感がない。
しっかり密着する、厚手のマスクを使用。
そして老人ばかりの職場は気が楽だった。
そんなとき、職場でいつも気にかけてくれる男性との出会いがあった。
ヘビースモーカーの彼は、いつもタバコのニオイがした。
自分のニオイがまぎれている気がして、彼といると気持ちが楽だった。
やがて2人は交際することに。
デート中は、こまめに水分補給。口が渇くとニオイが強くなると知っていた。
飲食店は喫煙席に座った。タバコのニオイがあると、安心するためだった。
"同じ苦しみに悩む仲間たちと交流"
しかし、交際が1年ほど経った頃...彼と別れることに。
これも自分の口臭のせい...これまでの人生のほぼ全てを、口のニオイのせいで
台無しにしてきたと思い込んでいる彼女。
ついに勇気をだして、口臭専門の病院へ行った。
彼女はとうとう口の悩みを打ち明けたのだ。
すると、担当医師からは口のニオイは気にならないという診断が。
そう、Aさんの口臭はそれほどひどいものではなかった。
自分だけがそう感じていただけなのだ。
しかし彼女は20年もの間、自分を苦しめてきたものをなかったことにできなかった。
何か情報はないかと、インターネットにすがる日々。
そんなとき、彼女と同じように自分のニオイに苦しむ人たちの存在を知った。
そして彼女は行動に出た。
現在女性は、インターネットで知り合ったニオイに悩む仲間たちと定期的に集まり、
交流を深めている。
Aさんは、初めてニオイの悩みを打ち明けられる存在ができた。
仰天スタッフはその集会を取材させてもらった。
この日集まったのは、20代から40代の男女8人。
席替えをしながら全員とニオイの確認を行い、最後に匿名で書いた感想をもらう。
他人が感じた自分のニオイを知ることができるのだ。
今回の集会では、多くの人が「強いニオイはない」との評価だった。
彼らは、必要以上に気にしているケースが多い。
近年悩んでいる人が増えているという「体臭恐怖症」。
専門医によると、無臭人間は存在しないのだから、他人に迷惑がかかるニオイではない
という事を認めてあげる事が大切なのだという。
20年間、口臭を気にしてきた女性がSNSに綴った思い。
「思いっきり深呼吸する」そんな些細なことがAさんの夢だという。