放送内容

2018年4月24日 ON AIR

恐怖...怒りの電話が殺到したナゾ

2017年10月11日。
電気設備会社社長の石橋秀文さんはこの日、出張で東京に来ていた。
彼の会社は、福岡県北九州市にある。


秀文さんの祖父が会社を構えて48年。
7人の社員は全員地方に出ていて、この日会社には、事務を務める妻が一人。


午前9時。
会社にかかってきた1本の電話を妻が取った。
この時から地獄は始まった。


晒されたデタラメな情報


受話器を取った瞬間、電話先の人物はこう言った。


「イシバシカズホの実家か?そこで働いているのか?」


秀文さんの妻は、一体何を言われているのか全くわからなかった。
何かの間違いだと告げなんとか切ったが、すぐにまた電話が鳴った。
先ほどとは別の人物からの電話だが、なぜか内容は同じ。


実はその4か月前、日本中を震撼させた事件があった。
それは...ある男がパーキングエリアで通行の邪魔だと注意されたことを根に持ち、
夫婦と2人の娘が乗るワゴン車を執拗に追いかけ、進路を塞いだ。
停車せざるを得なかった夫婦の車。そこへ大型トラックが追突し、夫婦は死亡した。


男の身勝手な行為がなければ死亡事故は起きなかったとされ、
男は過失運転致死傷罪の容疑で逮捕された。(※のちに危険運転致死傷罪で起訴)
その男の名が、イシバシカズホだった。


そしてその男が、この石橋建設工業で働いているだろう、という電話だったのだ。
事実無根の話...にもかかわらず、翌日も朝から同じような電話が殺到した。


一体なぜこんなことが...その理由は、
東名高速事故の容疑者の勤務地として、この会社の名前と、住所、電話番号が掲載され、
さらに犯人の父親として、秀文さんの名前と自宅住所も晒されていたのだ。


実は、名字が同じだけでは無くいくつかの不運が重なっていた。
容疑者は、秀文さんの会社の隣の市に住んでおり、
そして、その職業が「建設作業員」と報道されたことから
誰かが容疑者と石橋建設工業を結び付け、「容疑者の親の会社」だと
書き込みサイトに掲載したと思われた。


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こうして、晒されたデタラメな家族情報の真偽を確かめる事もないまま、
容疑者とは何の関係もない秀文さん一家が追い込まれていく。


ネットリンチの恐ろしさとは


大勢がネット上で、特定の人物を攻撃することを「ネットリンチ」という。
それは個人情報を晒したり、悪質な中傷コメントを書き込むなどの、ネット上の
嫌がらせのこと。
だが秀文さんの家族に対しては、ネット上だけでは終わらなかった。


おびただしい数の電話も鳴り続けた。電話をかけてきたのは、ほとんどが中年男性。
中には激しく怒りをぶつけてくる者もいた。
人違いだと電話の一人一人に説明をするが、相手は聞く耳を持たない。


やがて仕事どころではなくなった。
住所も晒されている。心配で、4人の子どもたちには学校を休ませることにした。


中傷の電話が始まって2日。出張中の秀文さんはすぐに帰れなかった。
東京の後は富山へ。不安の中、なんとか仕事をこなす。


秀文さんの連絡により、その夜から警察が自宅周辺を見回るようになった。
そして出張から戻るまで会社は休業することにした。


その一方で、親族がSNSで、ネットの書き込みが間違っていることを発信してくれた。
だが中傷は収まらず、嫌がらせの電話はますます増えた。


中傷が始まってから6日。
秀文さんは、出張から戻って初めて会社へ。この日も中傷の電話が殺到していた。


警察へ向かった秀文さん。着信履歴の写真や悪質な書き込み画面を証拠として提出した。
しかし、被疑者の特定が難しいという理由で結局、被害届も出すことができなかった。


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自分で濡れ衣を晴らすしかないと思った秀文さんは、拡散されている情報は
全くのデタラメだと反論のコメントを書き込んだ。
しかし、このコメントに対しても、中傷ばかりが増えていく。


声を上げても、誰にも届かない。
そんなある日、一人の人物が突然訪ねてきた。


闘いはまだ続いている


それは新聞記者だった。
秀文さんは新聞に真実を書いてもらえば、何かが変わるかも知れないと、全てを話した。
それにより事態は大きく動く。


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秀文さんが受けている被害が報道され、警察も被害届を受理。
そして、中傷被害が始まってから、2か月後。
警察は名誉毀損の疑いで、関係者と思われる数人の自宅の家宅捜索に入った。


仰天スタッフは、顔を出さないことを条件に被害を受けた秀文さん本人に
話を聞くことが出来た。


当時の恐怖は、今も根強く残っているという。
いまだに秀文さんを中傷するサイトは存在しており、すべて消えるまで戦いは終わらない。


ネット上での誹謗中傷は、その真偽に関わらず、罪に問われることもある。
この事件でも警察は加害者11人を特定、立件する方針である。

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