エリック サティ  『孤独と戦った家』

(2003/5/28放送)


 
フランス。セーヌ川の河口にある港町・オンフルール。
ここに、エリック サティ、20世紀の音楽界に異彩を放った作曲家の生家があります。


   
   
6歳で母親を亡くし、父親はパリに単身赴任。
祖父母は、まだ赤ん坊の弟や妹にかかりっきりで、誰にも甘えることができなかった少年時代。彼はいつも、孤独と戦っていました。


   
ほんとうは寂しいのに、「寂しい」と言葉にすることが、できなくて。
ひとりピアノに向かい、行き場のない気持ちを鍵盤にぶつけるサティ。


 
「凍てつく孤独だけで、頭がカラッポになり、心は悲しみであふれるんだ」


   
 
 
やがてパリの音楽学校に入り、五線紙に音符をのせるすべを知った彼は思います。自分には、もうひとつの言葉がある。
そして夏休みに帰省したとき、初めての曲「アレグロ」をつくるのです。


 
 
明るい曲調だけれど、どこか切ない響きをもつその曲は、彼の心の叫び、そのものだったのでしょう。


 
 
サティ、18歳。
少年の日の孤独に終止符を打った、夏の終わりのことでした。


エリック サティ  『孤独と戦った家』

(2003/5/28放送)

今回の放送のBGM♪
  「アンダンテ」「アレグロ」エリック サティ

次回(2003年6月4日)の『心に残る家』は
瀧 廉太郎 『音楽の楽しさを知った家』をお送りします。
お楽しみに。