ピカソ  『「芸術の世界」に触れた家』

(2004/5/12放送)


地中海に面した太陽が眩しい町、マラガ。
賑やかな通り沿いのこの建物で、
彼は産声を上げました。


   
二十世紀を代表する芸術家、パブロ・ピカソ。
貧しい家の長男に産まれたけれども、
両親の愛に育まれ、すくすくと成長していった少年・ピカソ。


   
彼にとって日曜日は、
もっとも待ち焦がれた楽しい時間でした。


   
   
美術教師だった父が、
窓の向こうの広場に群がる鳩を、スケッチするひととき。
次々に描かれていく鳥たちは、
まるで生きているようでした。
スケッチが終わると、
父はハサミで鳩を一羽ずつ切り、並び替えては色々な構図を試みます。
絵が持つ、その限りない可能性に、
少年の胸は、激しく高鳴りました。


 
のちにピカソの作品は、
独自の表現で、新しい時代の扉を幾つも開いたといわれます。
彼は、常に探し求めていたのかもしれません。
遠い日、この家で聞いた、心躍らせる熱い鼓動を。


ピカソ  『「芸術の世界」に触れた家』

(2004/5/12放送)

今回の放送のBGM♪
「Ceu da Mouraria」MADREDEVS
次回(5月19日)の『心に残る家』は
金子みすゞ『詩人のまなざしを育んだ家』
をお送りします。
お楽しみに。