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ナポレオンが1807年に、《アテナ・パルテノス》など他の約550点とともに、ローマの大コレクター、ボルゲーゼ家から購入した作品。アレスはゼウスとその正妻ヘラの子で戦いの神。ローマ神話ではマルスにあたりヴィーナスの愛人。この作品の原作は前5世紀後半にアテネで活躍したアルカメネス作のブロンズ像と推定され、ブロンズ像を重い素材の石彫で模刻する際には、像を支えるために原作には付随していない支柱や木の梢などが捕逸されることが多い。頭には兜をかぶり、手には武具を持っていたと推定されるが、鎧で身を固めた姿ではなく裸体で表現されたこのアレスは、軍神としての堂々たる体躯を見せながら、物憂げに右下に視線を落とすポーズから、ヴィーナスを想う、あるいは、ヴィーナスに寄り添う軍神アレスの姿と解釈される。 |
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