フランス人の夫婦、バーバラとマニュの間に新たな命が宿った。
奇跡ともいえる2つの細胞の出会いから、
約40週にわたる人体創造の壮大な旅が始まるのだ。
【受精】
夫マニュの遺伝子を運ぶ、生殖細胞「精子」。
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約2憶もの精子が、バーバラの生殖細胞「卵子」を探し求めて突き進んでいく。
だが卵子と結ばれる精子は、たった1つなのだ。
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そして、卵子の中へ入った精子は、マニュの遺伝子が詰め込まれた核を放出、
バーバラの遺伝子を持つ核と合体。これが「受精」である。
受精卵は子宮へ移動し、約3日間をかけて子宮の内膜に深々と潜り込んでいく。
これが「着床」、妊娠の始まりである。
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【受精から14日後】
子宮の中では早くも心臓が形成される。
全体の大きさは、わずか2ミリ。
【受精から34日目】
体長は5ミリ。手足が生え始めるが、指の間には、まだ水かきのようなものがある。
実は赤ちゃんは、母親のお腹のなかで、原始の生命誕生から魚の時代、
両生類、爬虫類、原始哺乳類の時代を経て人間の姿へと変化し、
35億年を費やした生命の進化を、数週間で体験するのである。
【受精から2か月後】
体長が3センチになった赤ちゃんは「胎児(たいじ)」と呼ばれる状態になる。
【妊娠3か月目】
母親が食べたものは糖、脂肪、タンパク質などに分解され、
胎児の栄養を管理する器官「胎盤」へと運ばれる。
胎盤には有害なバクテリアなどを阻止するフィルター機能があり、
選抜された栄養素だけを「へその緒」を通じて、胎児へと運ぶのである。
しかし、母親が吸い込んでしまったタバコの煙の成分の一部は、
胎盤のフィルターを通り越すことができてしまうため、赤ちゃんに届いてしまうのだ。
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【妊娠4か月目】
胎児を包んでいる弱アルカリ性の液体「羊水(ようすい)」は量が増え、
様々な衝撃から、胎児を守る役割を果たすようになる。
【妊娠5か月目】
胎児の身長は19センチ。体重は200グラムまでに成長。
胎児は羊水の中で活発に動きだす。
さらに生殖器が成長し、外見から男女の区別がはっきり分かるようになる。
バーバラとマニュが授かった赤ちゃんは、女の子。
二人は、彼女に「ジュリア」と名付けた。
【妊娠6か月目】
ジュリアは身長24センチ、体重は450グラムに成長。
聴覚が発達し、母親の心臓の音や周囲の声に反応するようになる。
さらには味覚を感じるように。
実はこの時期、胎児は羊水を飲むようになり、
母親が食べるものにもよって羊水の味も変わるのだ。
【妊娠7か月目】
ジュリアは目を開くことができるようになる。
【妊娠8か月目】
ジュリアは、体重が1000グラムに。
その体を動かし、頭をゆっくりと子宮の入口へと向け始める。
自らの力で、外の世界にでるための位置につくのだ。
【妊娠9か月目】
この頃になると爪や髪の毛もそろい、骨格もほぼ形成される。
頭蓋骨だけは、まだ隙間があり結合していないところがある。
これは、狭い産道を抜けるときに
頭を変形させることが出来るようにしているためである。
【妊娠10か月目】
ついにジュリア誕生の時。
へその緒をつけたまま、子宮の外へゆっくりと体を滑り込ませていく。
頭を押しつけ、母親の力を借りて下へ下へと動いていく。
長時間の苦痛の果てに、母親となった喜びを心から実感するバーバラ。
生命の誕生は、母胎という神秘の小宇宙で、2つの細胞の出会いから始まった
我々の最も身近で起きている、最も偉大なる奇跡なのである。
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