<アフリカ・セレンゲティ国立公園>。1989年に象牙の国際取引が禁止されて以来、
アフリカゾウの数が増加。そして畑の農作物の味を覚えてしまったゾウたちが、頻繁
に村にやってくるようになった。しかし、タンザニアではアフリカゾウを保護動物と
して指定しているため、政府の許可なしに捕獲したり、射殺することはできない。
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そんな問題を解決すべく立ち上がったのが、
生物学者の「アリー・ムクワービー博士」。彼はゾウ被害にあった村を訪れ、
被害状況を調査し、できるだけ費用のかからないゾウ撃退法を導きだした。
そのアイテムは、『トウガラシ』。ゾウの口の奥には、非常に優れた嗅覚受容器が
あり、その感度は人間の鼻の数倍だといわれている。
つまり鼻を突くトウガラシの臭いを嗅がせて、ゾウの嗅覚を刺激し退散させようとい
うのだ。しかし、ここタンザニアでは、料理であまりトウガラシを使わない。
そのため、アリー博士はトウガラシを販売している店を探しまわり、トウガラシを
見つけしだい大量に買いあさった。その姿から、博士についたあだ名は、
『Mr.ピリピリ』 。ピリピリとは、スワヒリ語でトウガラシを意味する言葉。
Mr.ピリピリは大量に集めたトウガラシを細かくすりつぶし、粉末にすると、
それを使用済みの自動車オイルに入れ、よく混ぜ合わせた。
こうすることでトウガラシの成分が飛びにくくなり、ニオイが長持ちするという。
そして液体となったトウガラシを、ワイヤーや布切れに浸すと柵にくくりつけていく。
これで 『トウガラシフェンス』 の完成。
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すると、フェンスの前まできたゾウが逃げていくではないか。ところが・・・
数日後、夕暮れ時の村の畑にゾウの群れが現れた。
トウガラシフェンスが待ち受けるが、なんとゾウたちはフェンスを嫌がることなく、
破壊して畑に入り込んできた。
前日に降った大雨で、ニオイが洗い流されてしまったのが、原因だった。
雨が降れば、トウガラシを塗り直せばいいのだが、この地域で、これ以上、
材料となる自動車オイルを探すことは困難だった。そこで、材料に困らず、
すぐに実践可能な他の方法を考えることになった博士。
ひらめいたのは・・・ゾウの糞を使うこと。ゾウの糞は、ほとんどが草。
そんな糞にトウガラシの粉末を混ぜて燃やせば、その煙でゾウが撃退できるのではと
考えたのだ。名付けて 『トウガラシスモーク』。さっそくゾウの糞に火をつけると、
トウガラシの煙でゾウが退散したのだ。
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村を守る有効な手段となりそうなトウガラシスモーク。現在、Mr.ピリピリは、
公園近くの村でトウガラシの自家栽培に精を出しているという。
地球の財産である野生動物を、被害を被ったからと攻撃するのではなく、
共存できる世界を作ることを願って…。
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