12/03/12 OA
イギリス発 16歳の少女 おくりびと
<イギリス南西部の港町ニューポート>に住む「レイチェル・ライアン(16)」は赤く
染めた髪に化粧、まさに青春真っ只中の女の子。彼女は義務教育を終えたら、姉と同
じように、父「マイク」が経営する葬儀会社で働く決意をしている。父は娘レイチェ
ルに3か月間の研修を課し、見込みがあれば葬儀ディレクターとしてデビューさせる
ことを決めた。
イギリス人の多くは身内に死者が出ると、まず遺体を葬儀会社に預け棺の用意をして
から死後およそ1週間後に葬儀を行う。葬儀ディレクターは、燕尾服にステッキとい
うイギリス式の正装で、葬儀を行う教会まで霊柩車の前を歩いて先導したり、遺族の
要望に合わせて伝統的な馬車を手配したり、火葬の手配を行うなど、葬儀にまつわる
イベントの全てを取り仕切るのが仕事だ。
この日の研修は、エンバーミングのやり方について。これは遺体を消毒し腐敗しない
ように保存処理を行うこと。そのために遺体から体液を抜き取り、保存を良くする薬
品を注入する。レイチェルは初体験で気分が悪くなってしまい、体調を取り戻した後
は、遺体の着替えなどを手伝った。それでも、彼女は遺体を扱うことを嫌だと思った
ことは一度もないと言う。
研修開始から2カ月。父であり社長であるマイクは、レイチェルに大きな仕事を任せ
ることにする。それは1970年代にイギリスを中心に活躍した歌手「ロバート・ヤン
グ」の葬儀だ。レイチェルは意気込んで故人の自宅を訪ねる。故人の妻と息子と一緒
に、棺に飾る花を選んだり、遺族の意見や要望を聞き、故人のレコードも借りた。
葬儀当日、父マイクと一緒に教会までの道のりやステッキの位置、礼の仕方を入念に
確認し、いよいよ葬儀が始まった。レイチェルを先導に故人を乗せた霊柩車が教会へ
と進む。厳かに進行した葬儀は、最後のお別れの時を迎えた。教会に故人ロバート・
ヤングの歌声が響き渡り、レイチェルの初めての葬儀は、故人の優しい歌声に包まれ
幕を閉じたのだった。
父マイクは、レイチェルを正式に採用することを発表。晴れてイギリス最年少葬儀デ
ィレクターとなった彼女に、最初の仕事は、葬儀の最後にスピーチを読み上げること。
姉ルイーズと練習を繰り返し、無事、初仕事を終えたレイチェル。彼女は、こうして
一人前の『おくりびと』として歩みだしたのだった。