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どこが違う 磁器 vs 陶器
第772回 2005年3月13日


 2回にわたってお送りすることになった陶磁器の科学、前回の「陶器編」に引き続き、今回は「磁器編」。女性を中心に人気の磁器を科学しました。

 まず磁器と陶器はどう違うのでしょう?意外とわかりませんよね?そこで、家庭で出来る簡単な見分け方をお教えします。
 1つめは、箸で叩いてみる。磁器は陶器に比べて、叩くと高い音がするのです。2つめは、お茶を入れてみる。磁器の方が陶器に比べて熱伝導率が高いので、熱くなりやすいのです。3つめは、光を当ててみる。磁器は陶器に比べて透けて見えやすいのです。更に強度でも、磁器の方が陶器に比べて約1.5倍硬いのです。

大きな陶石  では、この陶器と磁器の違いはどこに理由があるのでしょう。そこで、前回に引き続き矢野大路魯山人が、磁器発祥の地、佐賀県は有田を訪ねました。するとビックリ、なんと磁器は陶石と呼ばれる白い石から出来ていたのです。この陶石とは、火山活動で出来た流紋岩が、温泉によって中に含まれていた鉄分などの不純物を流されたもの。元々、灰色の流紋岩を温泉が白色に変えたものなのです。
 しかしこの白い陶石から、どうやって磁器を作るのでしょう?実は、磁器を作るために、この陶石を細かく砕いて粘土を作っているのです。この細かく砕いた磁器用の粘土には、既に珪石と長石も必要なだけ含まれているので、そのまま使うことが出来るのです。

 さあ、いよいよ矢野大路魯山人が有田焼に挑戦!粘土を練る作業も、ろくろを回す作業も、陶器で経験したから大丈夫と思ったら大苦戦。練るのにかなり力が要るというのです。なぜ陶器の土は軟らかいのに、磁器の土は硬いのでしょうか?
 その理由は、土の成分の違いにありました。磁器に使用する陶石を砕いた土には、粘り気が少ない長石や珪石が60%含まれており、軟らかい粘土の割合が少ないのです。ちなみに、陶器を作る陶土には、長石と珪石は50%含まれています。つまり磁器の土の方が、長石と珪石の割合が多いので、硬く練りにくいのです。
 しかし、900度で焼かれる素焼きの状態では、陶器より磁器の方がもろいのです。それは、珪石も長石も溶けていない素焼きの段階では粘土の強さだけが頼りなので、粘土が少ない磁器はもろくなってしまうのです。

所さんのポイント
ポイント1
磁器は、陶石という白い石を砕いて原料になる土を作っていた。また陶器とは成分の割合が違い、珪石や長石がより多い。

 続いては色付けです。呉須(ごす)と呼ばれる酸化コバルトの使って青く発色させます。ここで気を付けないといけないのは、呉須を重ねると色が濃くなってしまうので、重ね塗りできないということなのです。  次に釉薬(ゆうやく)を塗ります。前回放送した陶器では、色をつける場合は、鉄などの金属を使いましたが、磁器は全体にかける釉薬は透明釉を使います。なぜなら磁器は素地が白いため、その上に描いた絵を楽しむことができるからです。

登窯の断面図  そして磁器を焼く窯を見て、矢野大路魯山人はまたビックリ。それは陶器を焼く時とは全く異なる形をした窯だったのです。この窯は登窯を呼ばれ、斜面にドーム型の部屋がいくつか連結された形をしています。各部屋はサマと呼ばれる穴でつながっていて、薪は各部屋の横からも入れられるようになっています。さらに磁器は、灰がかかって色がつかないように、サヤと呼ばれるもので守ります。灰を直接かけて風合いを出す陶器と違い、磁器は下地の白さと絵付けの色が特徴なので、灰が被らないようにしているのです。
 実はこの登窯は、熱をより長く溜める事ができるように工夫され、高い温度が出せる窯なのです。磁器は陶器よりも100度高い1300度で焼かれるのです。なぜなのでしょう?
 そこで、1300度で焼いた磁器と、陶器を焼く温度1200度で焼いた磁器を用意しました。すると1200度では、磁器の中に含まれている珪石は融けないのですが、1200度に達すると長石が培養剤として働いて珪石が融け始め、さらに長石と結びつきガラス化します。これにより、磁器は硬い器になり、光にかざすと透け、更に叩くと硬い音が出るのです。珪石が融けるか否か、これが磁器と陶器の違いだったのです。

所さんのポイント
ポイント2
磁器と陶器では焼く温度も違う!1300度まで上がる登窯で焼くと、磁器の中の珪石と長石がガラス化して硬くなるのだ!




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