放送内容

第1361回
2017.02.05
鍋 の科学 食べ物

 まだまだ、寒さが厳しいこの時期。そんな時に食べたくなるのが…「鍋料理」。昔からの定番、「寄せ鍋」や…すっかり定着した「キムチ鍋」。
 そして、いま女性に人気の野菜をたっぷり使った「草鍋」など、年々、鍋は進化を遂げているんです。そこで今回の目がテンは…無限の可能性を秘める「鍋」を科学します!

「定番の白菜vs流行のキャベツ」一体何が違う?

 鍋の定番食材といえば…「白菜」。しかし今、その座を脅かす"ある存在"が。それは…「キャベツ」!レシピの検索サイトによると…【「鍋」と組み合わせで検索されているキーワード】で2016年はキャベツが1位という結果も。またここ数年、白菜を使ったおなじみの鍋以外にも、キャベツが具材となる鍋の素も続々登場!実に多くの種類の鍋で、キャベツが使われているんです!でも一体なぜキャベツ人気が急上昇しているのでしょうか?
 その謎を解明するため、"白菜とキャベツの違い"を調査!食品化学の専門家、東京農業大学の野口治子先生によると、「白菜とキャベツは似ているような葉物野菜だが、実は性質が全然違う。鍋料理にした時に、その違いが影響してくるのでは」と解説。白菜とキャベツでは、"性質"が違う?そこで、白菜とキャベツを鍋で煮た時の違いを検証。赤く色を付けたダシに、それぞれの葉を1枚ずつ入れ…そのまましばらく煮こんでいきます。そして20分後。それぞれを取り出してみると…表面は、どちらも赤く染まっています。そこで今度は、断面をチェック。まず白菜は、中までダシが染み込んでいました。一方キャベツは…断面が白いままで、ダシがあまり染み込んでいませんでした。では、なぜこの様な違いが表れたのでしょうか?そこで、生の白菜とキャベツを顕微鏡で見てみると…白菜の細胞はひとつひとつの細胞が大きいのに対し、キャベツの細胞は小さいことが分かりました。野口先生によると、「白菜はスカスカっとした構造で、キャベツはみっしりならんでいるような形。これにより、ダシの入りやすさ、味の入りやすさがだいぶ違ってくると考えられる」と解説。白菜はひとつひとつの細胞が大きく、ダシを吸い込みやすいんだそう。この違いが、鍋の種類との相性に関係してくるといいます。

 そこで、調理科学の専門家、横浜国立大学の渋川祥子名誉教授に聞いてみると…渋川先生は「白菜は、淡泊な【寄せ鍋】や【水炊き】などうま味を楽しむような鍋だと、うま味を吸って白菜の味もおとなしい味なのでよく合う。キャベツは、キャベツ自身の味の特色があるので、濃い味の鍋の味も生きるし、キャベツ自身の味も自己主張するので濃い味の鍋にキャベツは合う」と解説。

ポイント1

「白菜」はうま味を楽しむ鍋に、「キャベツ」は最近人気の濃い味の鍋に合うという"相性の違い"があったのだ!

鍋はシメまで食べても本当にヘルシー?

 野菜たっぷりでヘルシーなイメージの鍋。でも、シメまで食べたらさすがに食べ過ぎなのでは…?そこで検証!男女4名に集まっていただき、それぞれ1人前の鍋を食べてもらいます。無くなったらおかわりも可能です。この鍋を、満腹になるまで食べてもらい、総カロリーを計算します。
 皆さん、どんどん食べ進めていきます。男性陣も女性陣もおかわりを宣言し、4人全員が、2回戦目へ。そして、食べ始めてから30分が経過したところで、男性のひとりが最後のお楽しみ"シメの雑炊"へ。その後、4人全員がシメを食べ終わり、鍋が終了。1人あたりの総カロリーを平均すると881kcalでした。

 では、このカロリーをカツ丼と比較すると…カツ丼は、1杯およそ965kcal。つまり、鍋はあれだけの多くの具をお腹いっぱい食べたのに、カロリーはカツ丼1杯にも満たなかったんです。さらに、鍋料理の食べ方には、驚きの良いことが!栄養学の専門家、和洋女子大学・柳澤幸江教授に聞いてみると、柳澤先生は「それは血糖値に秘密がある」と解説。「血糖値」とは、血液中にあるブドウ糖の濃度の値。血液中のブドウ糖が増えると、インスリンという物質が分泌されます。このインスリン、余分なブドウ糖を脂肪として蓄えてしまう働きがあるんです。つまり、血糖値が高くなるとインスリンが増え、体に脂肪を蓄えやすくなるんです。
 そこで、ごはんやみそ汁、一般的なおかずなどのメニューを、先ほどの4人にそれぞれ満腹と感じるまで食べてもらい、その時の血糖値を測定し、変化を観察。すると…食べ始めと共に、血糖値はぐんぐん上昇し、食後から2時間後も高い数値を示しました。一方、鍋を食べた時の変化を見てみると…食べ始めてからずっと、血糖値が緩やかに上昇し、数値も先ほどより低いまま。つまり、鍋はインスリンが分泌されにくく、太りにくい料理だったんです。では、なぜこんなにも違いが表れたのでしょうか?柳澤先生は「鍋の材料になる野菜やきのこ、豆腐などはなかなか血糖値を上げない。血糖値が上がらないと満腹中枢が刺激されずついつい多く食べる。でも、鍋に使う食材の多くは低エネルギーなので、結果的に、食べる総エネルギーが抑えられる。さらにシメを食べても、低エネルギーの食材のみでお腹は十分に膨れているので、それほど量を食べることなく満腹感を得られる」と解説。その結果、鍋は全体的に低エネルギーで済むという料理、という事が言えるとのこと。

ポイント2

鍋に使われる具材の多くは、低カロリーかつ血糖値を上げにくく、たくさん食べてもヘルシーだったのだ!

所さんも絶賛!科学者に教わる絶品鍋術!

 科学者に教わる最高に美味しい鍋の作り方。今回作るのは、鍋の定番「寄せ鍋」。超お手軽テクニックから、上級テクニックまで3段階でご紹介。このテクニックは他の鍋でも応用可能!

 まずは初級編!教えてくれるのは…食のサイエンティスト、東洋大学・露久保美夏先生。

【科学者に教わる絶品鍋術其の一「全ての具材はダシが冷たい状態から鍋に入れる」!】

 まずはお肉。生の状態から入れることで、うま味がダシに溶け出すそうです。さらにキノコも。これに関して露久保先生は「きのこの中に含まれている、核酸という成分が酵素によって分解されてグアニル酸が出来ることでうま味成分となって、私たちにおいしい味わいをもたらしてくれる。グアニル酸は60℃から70℃ぐらいの温度帯で沢山できてくる」と解説。ダシが冷たい状態から煮ることで、うま味成分をつくる酵素が活発に働く温度を通過させ、キノコのうまみ成分を引き出します。また、露久保先生は「沸騰した高い温度の中にきのこを入れてしまうと、うま味成分のグアニル酸を作ってくれる酵素が80℃以上で働かなくなってしまう」と解説。では、60℃から70℃の温度帯は、どのように見分ければいいのでしょうか?露久保先生が取り出したのが…なんと生卵!実は、生卵のなかの卵白、白身の部分が温度を教えてくれる目安になるそう。60℃をこえたあたりから、白身が段々白く色が変わってきて、それが温度の目安になると言うんです。卵を入れるときは、具材をドーナツ状に並べ、その中心に入れると、崩れずに加熱できます。そして火を付けて加熱し…白身が白くなり始めたら、およそ60℃になったサイン。ここから火加減を調整し、あとは白身がゆっくり白くなるように加熱していけばOKです。

 続いては…中級編!教えてくれるのは、調理科学の第一人者、横浜国立大学 渋川祥子先生。気になるその方法とは…なんと、鍋に入れる具材の"舞茸"を使うことで、もも肉よりも安い胸肉でも柔らかくする方法。まずは舞茸を、粗みじんに刻んでいきます。
 そして、切った舞茸を袋へ入れ…大さじ二杯の水を加えます。そこへ一口大に切った鶏肉を入れたら、馴染むように、よく混ぜ合わせます。その後は、きのこと鶏肉を混ぜ合わせたまま、しばらく置いておくだけ。置く時間は、最低30分。1時間ほど置くのがベストだそうです。でも…どうして舞茸で鶏肉が柔らかくなるのでしょうか?渋川先生によると、「舞茸には、タンパク質を分解する酵素があるため」と解説。

舞茸に含まれる酵素が、生の鶏肉の筋繊維のタンパク質を分解。一度分解された筋繊維は、加熱してももとには戻らないため、煮てもやわらかく仕上がるんだそうです。そこで、下ごしらえをしていない鶏肉と、舞茸と混ぜて下ごしらえした鶏肉を煮て…その違いを比較。すると…下ごしらえをした方が、明らかに柔らかくなったんです!さらに、それぞれの柔らかさを機械で計測してみると…舞茸と混ぜた鶏肉のほうが、およそ40%も柔らかかったんです。

【科学者に教わる絶品鍋術其の二「肉は舞茸と混ぜて下ごしらえ」!】

 続いては、上級編!絶品鍋の方法を求めてスタッフが向かったのは…青森県、八戸工業大学。教えてくれるのは、食品を科学的に研究している、青木秀敏先生。青木先生がすすめる絶品鍋の方法とは…「白菜の天日干し」!なんと!白菜を天日干しにすることで、美味しさがアップするというんです。さっそく、その方法を見せてもらうと…干し方は、太陽に向けて2~3時間平干し。外に干せないご家庭では、窓際でも大丈夫。でも一体なぜ、天日干しをすると白菜が美味しくなるのでしょうか?青木先生によると、「白菜には、太陽の光を感知する光受容体があり、太陽の光を受けて白菜の中の酵素が活性化され、タンパク質を分解して、アミノ酸を増やすという効果が白菜の中で生じている」と解説。試しに、そのままの白菜と、3時間天日干しした白菜のうまみ成分をそれぞれ計測してみると…干した白菜は生の白菜に比べ、なんとアミノ酸の量がおよそ1.8倍になったんです!

【科学者に教わる絶品鍋術其の三「白菜は天日干し」!】

 こうして出来上がった、目がテン流絶品鍋!所さんが試食すると…「驚くくらい美味しい!」と大絶賛でした!ぜひご家庭でお試しあれ!

ポイント3

科学者に教わる絶品鍋術!
其の一「全ての具材はダシが冷たい状態から鍋に入れる」
其の二「肉は舞茸と混ぜて下ごしらえ」
其の三「白菜は天日干し」