《ジスモンダ》の成功でミュシャはサラのいわば「座付きポスター作者」のような存在となり、彼女のため《椿姫》、《トスカ》、《ハムレット》などのポスターを次々にデザインした。これらは販売用に1000部単位で印刷され、莫大な売り上げを記録した。ただしこのポスターはサラの舞台のためでなく、世紀末に刊行された芸術雑誌のためのもの。「羽根ペン」を意味する「ラ・プリュム」は文芸・美術の総合誌で、このポスターは同誌の1896年12月のサラ・ベルナール特集号のためのもの。大きな白百合を頭に飾り、正面を向いたサラはロシア・イコンのような風情である。左右に翻り、波打つロングヘアはアール・ヌーヴォーそのものであり、同時にミュシャのトレードマークでもある。ミュシャが最初の本格的な個展を開いたのも、この雑誌社に併設されたギャラリーであった。