泡立つ大きなジョッキを抱えて上機嫌の女性の頭は赤いケシの花や、ビールの原料となる大麦の穂、ホップなどで飾られている。ケシはアヘン、モルヒネの原料ともなるところから、しばしば死や眠りのシンボルともされるが、ここではもっぱら装飾的なモチーフとして登場しているようである。この女性は現実の女性というよりベル・エポックによみがえった酒の神バッカスの女性版ともいうべき印象が強い。《ジョブ》にも見られる優美な曲線を描きながら流れ落ちる彼女のロングヘアは、ミュシャのトレードマークとして一世を風靡した。画面下部にはモノクロでビール工場とムーズ川を表す女性の寓意像が描かれているが、この部分はミュシャではなく別人の手による。