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フィンセント・ファン・ゴッホ《自画像》

フィンセント・ファン・ゴッホ 《自画像》
1889年 油彩・カンヴァス

National Gallery of Art, Washington
Collection of Mr. and Mrs. John Hay Whitney

フィンセント・ファン・ゴッホは、その10年間という短い画業において、少なくとも36点の自画像を描いたとされています。本作はそのなかでも最晩年のものです。1888年、芸術家の共同体を築くことを夢見て南フランスのアルルに移り住んだファン・ゴッホは、ゴーギャンと共同生活を始めます。しかし、互いの個性のぶつかり合いに消耗して次第に精神を病み、俗にいう「耳きり事件」を起こして両者の関係は破綻しました。弟テオが結婚したのを機に、弟にこれ以上世話をかけたくないと考えたファン・ゴッホは、1889年5月、アルルに近いサン=レミの精神療養院に自ら入院します。そこで7月から8月にかけて激しい発作に襲われ、回復後に初めて描いた作品がこの自画像でした。画中の血色の悪い顔は、青い背景に照らし出されていっそう白く見えますが、古来から精神性の象徴でもある青は、その鋭い眼差しと相まって、病に打ち勝とうとするファン・ゴッホの強い意志を表しているようにも見えます。

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