STORY

2024.01.21 OA
普通のきみは素晴らしい

「料理は化学です」――街の小さなごはん屋さん『ありすのお勝手』の店主・八重森ありす(門脇麦)は、マイペースで人とのコミュニケーションが苦手な自閉スペクトラム症(ASD)。大きな音や強い光が苦手だし、人に近寄られるのも怖いし、物は何でも真っすぐにそろえないと気が済まない。でも…ひとたび包丁を握れば、とってもおいしい料理を作る天才料理人!一度覚えたことは忘れない驚異的な記憶力と大好きな化学の理論を基に、最適で最高の献立を導き出す。店にやってくるお客さんは十人十色。二日酔いのサラリーマン、子どものお受験につきっきりで寝不足気味の主婦、好きな女の子に告白するため緊張している男子学生…ありすはお客さんの好き嫌いやその日のコンディションに合わせて即興で料理を考える。故に店のメニューは“店主のおまかせ料理”のみ。幼なじみで元ヤンのホール担当・三ツ沢和紗(前田敦子)と2人で切り盛りする『ありすのお勝手』は、ランチ時には客足が絶えない人気店だ。

そんな『ありすのお勝手』に、住み込みのバイトを希望する青年・酒江倖生(永瀬廉)がやって来る。口下手で不器用そうで、おまけに家がない倖生のことを和紗は警戒するが、ありすが珍しく合格点を出したことから、とりあえずバイト採用は決定。しかし、住み込みで働くためには、ありすの父親・心護(大森南朋)の承諾が必要。25年前にありすを引き取って以来、男手一つでありすを育て、溺愛してきた心護。一筋縄ではいかなそうだが、倖生には心護との意外な接点があって…。
そんな中、和紗の次男・銀之助(湯本晴)の誕生日会が近づいて、ありすは野菜嫌いの銀之助にたくさん野菜を食べてもらおうと思案する――。

好きなものには一直線!超マイペースな天才料理人ありすが、みんなの心をおいしくて優しいごはんで温める!そんな彼女の生い立ちと家族には、本人も知らない重大な秘密があった――。

ミシュランでも老舗でもない…だけど一度食べたらやめられない!?切なく心温まる謎多きごはん屋さん、ついにオープン!!

以下、ネタバレを含みます。

ありすは店の営業が終わると、父・心護が大学から帰ってくるまでの間、和紗の家で息子・虎之助(三浦綺羅)と銀之助(湯本晴)に勉強を教える。もうすぐ6歳になる次男の銀之助が野菜を全く食べないことを知ったありすは、健康のため「あさっての誕生日会では野菜を食べてもらいます」と宣告。銀之助が食べたくなるような野菜料理を考え始める。

一方、ありすの店で住み込みのバイトを希望する倖生。住み込みで働くためには心護の許可が必要だが、実は倖生と心護には接点があった。倖生は、心護が勤める大学で清掃のアルバイトをしているのだ。倖生は心護の研究室を訪ねるが、心護はゲイの学生カップル・礼央(橘優輝)と栄太(堀野内智)の恋愛相談に乗っていたり、高校時代の同級生・百花(大友花恋)とバッタリ再会。結局、心護に打ち明けるタイミングを失ってしまう。
帰りの駅で心護と鉢合わせた倖生は、心護の後をついて歩くが、無言でついてくる倖生を心護は不審者だと勘違い。逃げる心護、追う倖生、2人の無言の追いかけっこが始まって…。
心護の誤解を解いて家に上げてもらった倖生は、ありすと心護の心をガッチリつかもうとして、自ら夕食を作り始める。ところが、不手際で鍋から火柱が上がり…!途端に、ありすの脳裏に幼い頃の記憶がよみがえる――3歳のありすが、激しい炎に囲まれて泣いている。炎の中を飛んでいくウサギのぬいぐるみ・ヘンリーの姿――パニックになるありすは、「ヘンリーはどこですか!ヘンリーはどこですか!」と叫びながら部屋を飛び出し、廊下の隅でうずくまってしまう…。心護はありすにヘンリーを抱かせると、元素記号を一緒につぶやく。「1番H水素、2番Heヘリウム…」これが、ありすが落ち着く行動なのだ。

心護は倖生に、ありすとの過去を話す。「母親は事故で死んだんだ」…まだ幼かったありすを、心護は1人で引き取り、それからずっと2人で暮らしてきた。「僕にとっては大切な、かわいい娘なんだ」…倖生は、家を出て行ってしまう。

一方のありすは、せっかくの食卓を自分が台無しにしてしまい、落ち込んでいた。「私は自閉症なので、私のせいでお父さんはいつも迷惑しています」と自分を責めるありすに、心護は言う。「お父さんは、ありすからしかもらえないものをたくさんもらってきたんだよ」。…25年前、幼いありすを引き取って1人で育て始めた心護。何もしゃべらないし笑いもしないありすは、突然、かんしゃくを起こすが、その原因さえ分からない。これが一生続くのか…と心が折れそうになった時、驚くべきことが起こった。ありすは、心護が大学生のために用意した化学の課題をいとも簡単に解いてしまったのだ。感動する心護に、ありすは初めて笑顔を見せてくれた。苦労も多いが、人一倍の喜びを与えてくれるかけがえのない娘なのだ。

翌朝、ありすに謝りに来た倖生は、作ろうとしていた料理について話す。昔、親が作ってくれた料理で、外は衣がサクサクで、コロッケかと思ったら、中にはトロトロの卵が…。すると、ありすは突然何かをひらめいた!

次の日、『ありすのお勝手』で銀之助の誕生日会が開かれる。野菜嫌いな銀之助のためにありすが用意した料理は、たくさんのコロッケや肉まん、春巻き。一見、銀之助が好きそうなものばかりだが、実は中身は野菜だけのものもある。お肉か野菜か、食べてみるまで分からないロシアンルーレット。銀之助は強気にコロッケをかじるが、中身がピーマンだと分かるとすぐにギブアップ…。
野菜を食べないプロサッカー選手だっているのに、なんで俺は食べなきゃいけないの?と駄々をこねる銀之助は、和紗から「そんな一部の天才のまねしてどうすんの?」と叱られ、「どうせ俺は普通ですよ」とふてくされてしまう。すると…「“普通”は素晴らしいです!」とありす。どんなに化学に詳しくて天才と言われても、自分は大きな音がしただけで動けなくなるし、お客さんの注文を取ることもできないし、鍋から火が上がっただけで頭が真っ白になってしまう。和紗や心護、たくさんの人がいるおかげでようやく生きていける。だから…「普通の銀之助さんは素晴らしいんです!」…ありすの言葉に奮起した銀之助は、ピーマンコロッケを思い切って口の中に放り込む。ありすの絶妙な調理により、野菜の苦みが薄らいでいた。「この料理は倖生さんのおかげで思いつくことができました」とありすからお礼を言われた倖生。心護の信頼も得て、住み込みで働く許可をもらうのだった。

その夜、ありすは一人、テレビのニュースにくぎ付けになる。大手製薬会社・五條製薬が新薬を発表。その会見に臨んだ五條蒔子(木村多江)の姿に、ありすは目を奪われ――「お母さん…」。その瞬間、テレビ画面がプツンと切れる。テレビを消したのは心護だ。いつもとは全く違う、険しい表情…。そんな2人を、倖生は無言で見つめていて――。

ありすの母親は生きていた!?しかも五條蒔子!?心護が母親の存在を隠すワケ…倖生がありすの店にやってきた目的とは…!?謎だらけの『厨房のありす』は第2話へ!!