9月13日 杉上 佐智枝

「ヘアードネーション」ご存知ですか?
ヘアーは髪、ドネーションは寄付。
切った髪を、病気や外傷など諸事情で頭髪の問題を抱える人に、寄付すること。
献血ならぬ、「献髪」です。
 

 

美容院で髪を切る。多くの女性は普通に経験していることだと思います。
切られた髪は、もちろんそのままゴミ箱へ。これも普通のこと、です。
 

 

その「普通のこと」を「誰かの役に立つ」ことに変えた女性が、身近にいました。
 

 

私が一部コーナーのナレーションを担当している、パラアスリート応援番組、
「ストロングポイント」(BS日テレ毎週日曜18時~)。
先日収録スタジオに行ったら、なじみのスタッフが(以下Oさん)、腰まであった見事な髪を、

ばっさり!
「思い切りましたね~!」という話の流れで、Oさんがヘアードネーションをしたことを知りました。

Oさんの親しい先輩が、抗がん剤治療をされていた時に、
ウィッグが高額なこと、治療そのものに加え、髪が抜けてしまう辛さをよく聞いており、
素敵なウィッグは病気と闘う力になるんだなと思ったことがきっかけだと、教えてくれました。
 

 

Oさんが提供した団体は、切った髪の長さが31センチ以上あればフルウィッグが作れるところで、
それを18歳以下の子どもに無償で提供する仕組み。
子ども用のウィッグは、サイズ的にオーダーになることが多く、さらに高額。
成長による買い替えも考えると、大人以上に負担のかかる部分だそう。
それを知ったOさんは、およそ2年間、髪を切らず、ドネーションに向けて伸ばしてきたそうです。

実は私も、幼なじみが白血病で闘病生活を送った時期があり、
知人の美容師さんに、毛束を縫い付けた帽子を作ってもらったり、気分を変えたい!と、
ショートや栗色など、いろいろなウィッグを試したりしていました。
 

 

今はすっかり元気になって、シアトルで家族と暮らす彼女が、渡米前、私に

金髪のウィッグをくれました。
「○○(私の娘)のハロウィンの時にでも使って~!」
明るい彼女の、辛い期間を支えた相棒。彼女も、早く忘れたいけれど、なかなか捨てられなかったのかも
しれません。
さすがに気軽に仮装道具として使う気にはなれず、大切に保管してあります。
 

 

処分されるだけだった髪が、メディカルウィッグとして生まれ変わる。
情報を拡散する人、髪を伸ばして寄付する人、美容師さん、
ウィッグに仕立てる職人さん、実際に必要な人に届ける団体...多くの人の善意を経て、届くそのウィッグは、
どれだけ受け取る人の力になることでしょう。
 

 

「知っている」というだけで、自分の行動が変わることがある。
大上段に構えずとも、誰かの役にたてることもある。
 

 

Oさんの行動で、いろいろなことを考えた、秋でした。