11月26日 佐藤 義朗

「これからは自分が主役ではなく、
若い選手たちを主役に引き上げる仕事をしていきたい」


今年 8月に現役引退を発表した柔道家・野村忠宏さんの言葉です。


前人未到のオリンピック3連覇を成し遂げた柔道界のレジェンド。
さらに後輩選手の面倒見のいい兄貴肌。
現役のアスリートという立場で、
日本テレビのキャスターを務めて下さった2012年のロンドン五輪でも、
競技後のインタビューゾーンでは柔道の後輩選手はもちろん、
他の競技の選手も必ず「インタビュアー野村忠宏」の前では足を止めていました。


度重なる怪我で、自身は立つことができなかったロンドンの畳。
そこで活躍する選手達の姿を伝えながら、
ホテルでは持参したトレーニングチューブで身体を鍛えていた野村さん。
現役選手として、またこの舞台へ、という気持ちを感じていただけに、
リオ五輪前年での決断は、並々ならぬものがあったのだと思います。


先日、久々に野村さんにお会いすることができました。
野村さんがお持ちになった小さな箱を開けると。



1996年アトランタ、2000年シドニー、2004年アテネ、
それぞれ立場も思い出も異なる3つの金メダル。
その色は光り輝く黄金色ではなく、少し霞んでいるように見えました。
「皆に自由に触ってもらっていたら、少し色が変わってきたんだよ」


また、野村さんの人柄に触れた気がしました。


背負い投げでの豪快な一本勝ちのイメージが残る野村さんですが、
五輪では一つだけ後悔があるそうです。
それは、五輪の舞台では、
一度もオール一本勝ちで金メダルを取れなかったこと。


来年のリオ、2020年東京では、
レジェンドも成し遂げられなかった偉業を
「次の主役たち」が成し遂げられるのか、
楽しみです。