8月13日 藤田大介

「変化の時代〜働き方も変化」


幼い頃から僕は俳句や詩をこよなく愛し
絵を描くことが大好きな、文系人間だった。


1997年、当時高1だった僕は
当時の慶應義塾理工学部長だった安西祐一郎先生との出会いで理系に舵をきろうと決心した。


「これからの時代は文系も理系も垣根がなくなる」
「ロボット社会へと向かう中、文系と理系を繋ぐ役割がきっとこれから必要だ」
Windows95が出始め、まだパソコンが珍しかった時代、
文系と理系に大きな壁を感じていた当時の自分は、衝撃を受けたからだ。


2000年、僕は理工学部に進学し、大学3年から萩原将文教授の研究室で
人工知能=「AI」の研究を日夜行った。
「20年後は必ずAIの時代が来る」
「無いものは創り出せばいい」
教授に言われ、当時はほぼゼロからのモノづくり。
頭を捻りながら、新しいアイデアを浮かべてはプログラミングする日々だった。


時は経ち2020年。いま社会は大きく変わろうとしている。
野球中継では、今季より「AIキャッチャー」が導入され
放送中、人工知能がはじき出す「失点防止に最適な一球」を表示する
新しい実況の時代に突入した。


一方、日テレ実況アナウンサーが中継前に臨む姿勢は長年変わらない。
それぞれが選手に取材し、膨大なデータを調べ、
名前やデータ、プロフィールを入力し実況資料を作成しながら記憶。
最後に数字に誤りがないか入念に確認を行ってから実況席につく。
いい意味で継承されてきた伝統だ。


しかし近年、働き方改革で効率化も重要視された。
またオンライン化や技術進歩の流れから提供されるデータも莫大になり
入力作業は業務を圧迫し始めた。


僕は新人時代から打ち間違えが多く先輩をよく悩ませていた。
頭を抱えた末、
独自にプログラムを作って作業を自動化し、長年入力は機械任せにしていた。


ちょうど1年前、安藤アナウンサーが僕のパソコン画面を見て、
「皆も困っています。ぜひ広めましょう」と提案してくれた。
悩んでいたのは自分だけではなかったのだ。
働き方改革や業務効率化の一環から、
サッカーやゴルフ、バイクレース等、細かいデータ入力を日々行っている
実況アナウンサーの負担を軽減させるため、いま自動入力のソフト開発を進めている。


1人4〜5時間かかっていた数字などの入力作業を、ボタン1つで完了。
浮いた時間で、自分達はより視聴者目線に立った表現(言葉)を練る事ができる!
創造的な時間を更に多く確保できたら、もっと魅力的な中継になるのではないだろうか?
と思っている。


外注もできるかもしれない。
しかし「実況」という特殊な世界を理解している人が、
ソフト開発を行えば、より使いやすく、テレビの向こうの人達にも
違和感なく届けられるだろうと信じている。


新型コロナでスポーツ中継が中断し、取材が滞る時間を利用し
プログラミングの部内勉強会も始めた。
先輩方から、知りたいポイントやわかりやすい表現方法を
アドバイスしてもらい、誰でもわかる講義動画を先日撮影し共有した。
いまは部員それぞれが自在にプログラミング出来る事を目指している。


新型コロナウイルスで世界が急速に変わる中、
大学時代、理系で安西先生や萩原先生のもとで学んでいた事が
こんなにも生きてくるとは驚きだった。
苦手だった歴史や地理、漢字に、新人時代は青ざめていた日々だったが
いまは理系人間として、
少しでも世の中の、そして会社の役に立てられたら大変うれしく思う。


【大学研究室時代の作業机】