9月20日 中島芽生

「あともう10分。」
 ゴロンと寝返りを打ち、夢の続きを。内容はよく覚えてはいないけれど、幸せな夢の余韻だけははっきりと残っている。もう一眠りしようと布団を引き寄せると・・・
「待ったー!!!」
 そこで声を張り上げたのは、小さな、でも頼もしい私の相棒。"カタカタカタカター!!"声にならない声で、全力で私に訴えかけてくれる。
「さあ、今日もオンエアがあるぞ」と。・・・そんな、午前2時半。

 社会人1年目の私にとって、働くということは、とても新鮮で、発見とやりがい、そして、失敗と反省を積み重ねる毎日です。そんな中で、一番のプレッシャーは「起きること」。特にZIP!に出演させて頂いている今、オンエアのある日は午前2時半に起きるという生活をしています。時間は不規則なのが当たり前の職業。そう分かってはいたものの、いざ直面してみると、これがなかなか難しく、規則正しい生活と、陽の光の有り難さを思い知りました。
 そんな私を気遣ってか、両親がプレゼントしてくれたのが、冒頭に登場した私の相棒「トトロの目覚まし時計」。木製の時計で、丸い形をした時計の一番上にどんぐりが付いています。そして、時間になると、そのどんぐりを小トトロが叩いてカタカタカタカタと起こしてくれる。そんなかわいらしい動きをする目覚まし時計です。
「どんなに早い時間でも、せめて木の優しい音で、癒されながら起きてほしい」
 大阪に住む両親の心遣いに、社会人になったとはいえ、まだまだ支えてもらっているなと、しみじみ感じています。
 そんな早朝出社の時の私の楽しみは、高層階にあるアナウンス部から見る、見渡す限り、静まり切った東京の街。人影も、ビルの明かりも息を潜め、日中の喧騒からは想像もつかないような、穏やかな風景が広がっています。ある日の早朝、いつもと同じようにふと外を見ると、ちょうど日が昇り始めたところで、ビル群が朝日に赤く染められ、その光が反射して、浜離宮庭園の緑に降り注いでいました。夜明けの神秘的な瞬間。ほんの10分くらいの出来事だったのですが、なかなか贅沢な時間でした。
 こうして、少しゆとりを持ってオンエアに向けて準備を始めると、いつもより少しだけ、挨拶の声にも張りが出てくる気がします。
 それもこれも、朝、無事に目覚めることができたから。一日の始まりの大切さを噛み締めます。
ただ...ただひとつだけ。
この目覚まし時計の音。大きすぎて、毎朝、飛び上がるように起きてしまいます。「全然、癒しなんかじゃなーい!」そう両親に訴えると、笑って一言。
「その方が目覚ましとしてはいいやん」
はい、おっしゃる通り。まだまだ親には敵いません。