「神の左」そう呼ばれるボクサーが今、日本ボクシング界の大きな記録に挑戦しようとしている。
WBC世界バンタム級チャンピオン山中慎介選手。今年の10月で34歳になるチャンピオンが挑もうとしている記録は具志堅用高さんの持つ日本人の世界タイトル連続防衛記録13回という記録だ。
9月に行われた元WBAスーパーチャンピオン・世界的なビックネーム、アンセルモ・モレノ選手との防衛戦ではダウンの応酬、山中選手が4度、モレノ選手が1度ダウンを奪う打ち合いの末、山中選手が11度目の防衛に成功した。終わった後の大阪エディオンアリーナは興奮の坩堝。これぞ世界トップ同士のぶつかり合いという試合に会場のファンは酔いしれていた。
この勝利により山中選手が連続防衛記録の2位に並び、具志堅さんの持つ記録にあと2つに迫ったのだ。
山中選手がボクシングを始めたのは南京都高校時代。当時右利きだった山中選手は恩師のアドバイスで左構えのサウスポースタイルに変更。この時「神の左」が誕生した。普通、ボクシングではリードパンチと呼ばれるジャブをまず磨くのがセオリー。山中選手で言えば右のパンチだが、山中選手は来る日も来る日も「左」を打ち続けた。周りになんと言われようと「自分は左で勝てる」ボクサーになるんだという強い思いを持って練習に励んでいたという。しかしその左ストレートが「神」と呼ばれるまでには少し時間がかかる。これだけ強烈な左でKO勝利を量産している山中選手だが、プロデビューから2戦はいずれも判定。プロ8戦目まででKOで相手を倒したのは2回しかない。今の戦績からは考えられない数字である。ただその左は突然「神の左」へ進化を遂げる。プロデビューから3年がたった9戦目、対戦相手を左で仕留めてから、そこから世界王座奪取まで9連続KO勝利。一気に世界の頂点へ上り詰める。世界タイトルマッチでも元世界王者や世界トップランカー相手に12戦中8戦KO勝利と全て左ストレートで相手を沈めてきた。「神の左」は山中選手の代名詞となった。
具志堅用高さんが13連続防衛の記録を作って36年。その偉大な記録にあと「2つ」と迫った山中選手。今でも努力を続け左にこだわり続ける職人チャンピオン。前回の試合後に山中選手に質問してみた。
中野アナ「神の左は山中選手にとってどんなパンチですか?」
山中選手「神の左は努力の左。山中慎介そのものです」
来年あたりに「神の左」がボクシングの歴史を変えるかもしれない。今からワクワクがとまらない。