日付が変わってしばらくすると、
待ち合わせ場所であるミラノ市内のホテル前に真っ赤な車が颯爽と現れた。
肌寒い空気と薄暗い街の景色が、一層緊張感を漂わせる。
そんな気持ちをよそに、イタリア名門クラブのエンブレムがあしらわれたスーツに身を包んだ先輩は、
降りてくるなり充実感に満ちた表情で握手を求めてくれた。
先日、サッカー日本代表・長友佑都選手をインタビューする機会に恵まれた。
インテルで長らく活躍する日本一の韋駄天であり、自分にとっては明治大学体育会サッカー部の先輩。
八幡山のグランドを駆ける姿は、10年近く経った今も色褪せず、記憶に刻まれている。
登り詰めていくその背中を、プレーヤーとして追いかけ、アナウンサーとして追い続けてきた。
もう久しく、この日が来ることを待ち望んでいたのだ。
土壇場でPK戦突入という壮絶な試合の直後ということもあり、長友選手は僅かながら興奮している。
帰りの車中ではその高ぶりをそのまま言葉に乗せてくれた。
恐いもの知らずだった入団当初。
怪我を境に出場機会を得られなくなった昨季。
監督から放出候補に上げられたシーズンオフ。
葛藤の末導いた残留への決意。
紅白戦に参加すらさせてもらえない日々。
自然と涙がこぼれた孤独な走り込み。
少しずつ見えてきた光。
そして今...。
混沌とした状況の中、必死に感情をコントロールしながら、
ただ黙々と戦っていたことは想像に難くなかった。
取材を終え、宿に着いたのは1時過ぎ。
語られた苦悩はほんの一端に過ぎないが、
助手席でその熱や語気、時に沈黙に触れ、僭越ではあるが辛酸を共有出来た気がした。
あの瞬間一つ一つを真空パックにして、
自分が苦境に立たされた時にでも開封出来たらどれだけ心強いだろうと、
しばらく妄想を膨らませながら、その日は眠りについた。
翌日。
この日も、イタリア生活から未来のことまで丁寧に話してくれた長友選手。
が、不意に"長友先輩"が顔を覗かせる。
「山本、自分を厳しい環境に置かないと、成長はないからなぁ。」
4月から6年目。
奇しくも長友選手のインテル在籍年数と同じである。
自分に問いかける。
「成長してる?」
※インタビューは3月13日(日)「Going!~Sports&News~」で放送予定