小さい頃、TVの中継を観ていて、心奪われる瞬間がある。
「現地には、○○アナウンサーがいます。○○さん現地の状況を伝えてください!」
この呼びかけがスタジオから飛んだ瞬間、TVの前の私は、
「来るぞ、来るぞ」と、いつも息をするのを忘れるぐらい真剣になる。
現地でしか感じられない、五感を含んだ中継の言葉。子供ながら、朝の学校の準備の手を止めてまで、TVの前から離れることは出来なかった。
2020年7月23日。当初行われる予定だった東京五輪の開会式の日。
この時は、まだ、アナウンス新人研修の真っ只中で、基礎の基礎を教わっていた。
それから、1年。東京五輪は延期となり、開会式は、2021年7月23日となった。
私は、新人研修テキストではなく、国立競技場の前で、マイクを握っている。
透き通る青空、強い日ざし、国立競技場に掲揚されている各国の国旗。
1年前には想像出来なかった光景が、目の前に広がっている。
ここまでたくさん支えてもらった先輩に感謝しながら、中継に臨んだ。
「国立競技場前には、北脇アナウンサーがいます。北脇さん!」