「あのぉ、すごくつまらないことなんですけど…」
会社にいると、若いアナウンサーが遠慮がちに尋ねてくることがあります。
敬語の疑問、助数詞の迷い、アクセント辞典に載っていない言葉のアクセント、等々。
ロートルが役に立ち、大きな顔も出来るチャンスなので、私は張り切って饒舌に答えます。
時には、本質をついた難問もあり、一緒に考えこむことも。
こうした職場でのやり取りが、アナウンサーの言葉の蓄えを少しずつ増やしていくのです。
会議や打ち合わせ、研修までも、オンラインが基本になって、はや1年。
思いのほか、用は足りるものですが、「すごくつまらないこと」を話すまでには至らない。
栄養素で言えば、たんぱく質、脂質、炭水化物は摂取できるけれども、
ビタミンやミネラルが不足している感じがします。薬味を忘れた料理のようです。
オンラインの活用は、良い面もたくさんあると思いますが、
こぼれ落ちていく、小さなこと、何気ないことに、もっと気を配らないと、
数年後、人間の気質や仕事が、きめの粗いものになっていそうで、怖いな、と思うのです。