4月22日 井田 由美

「あのぉ、すごくつまらないことなんですけど…」

会社にいると、若いアナウンサーが遠慮がちに尋ねてくることがあります。

敬語の疑問、助数詞の迷い、アクセント辞典に載っていない言葉のアクセント、等々。

ロートルが役に立ち、大きな顔も出来るチャンスなので、私は張り切って饒舌に答えます。

時には、本質をついた難問もあり、一緒に考えこむことも。

こうした職場でのやり取りが、アナウンサーの言葉の蓄えを少しずつ増やしていくのです。

 

会議や打ち合わせ、研修までも、オンラインが基本になって、はや1年。

思いのほか、用は足りるものですが、「すごくつまらないこと」を話すまでには至らない。

栄養素で言えば、たんぱく質、脂質、炭水化物は摂取できるけれども、

ビタミンやミネラルが不足している感じがします。薬味を忘れた料理のようです。

 

オンラインの活用は、良い面もたくさんあると思いますが、

こぼれ落ちていく、小さなこと、何気ないことに、もっと気を配らないと、

数年後、人間の気質や仕事が、きめの粗いものになっていそうで、怖いな、と思うのです。