5歳の息子が幼稚園から帰ってきた。
汗びっしょりだ。暑かったのだろう、顔が赤い。
ごくりと水を飲んだ彼に聞いた。
父「今日の幼稚園、どうだった?」
息「たのしかった」
父「何がたのしかったの?」
息「いっぱいあそんだこと」
父「何して遊んだの?」
息「サッカーしたり、おにごっこした」
父「サッカーのどんなことが楽しかったのかな」
息「〇〇くんからパスがきて、シュートした」
父「そのシュートはどうなったの?」
息「きまったよ。ビューンってゴールにはいった」
父「じゃあ、それが今日一番嬉しかったんだね?」
息「ううん。おにごっこ」
父「え?なんで?」
息「え?はしって、おににつかまらなかったからね」
父「そっか。速く走れたことと、捕まらなかったこと、どっちが嬉しかった?」
息「はやくはしれたこと!」
言葉を掘り下げていくと、木彫りの彫刻みたいに見えなかった感情が見えてくる。
彼が楽しさを感じていた根源は、速く走れたことだった。
誰かより速く走れた小さな優越感かもしれないし
誰かに褒められた承認欲求の充足かもしれない。
それでもこれから彼は
たくさんの楽しいことに出会って
自分の好きなことを見つけていくんだろうなと思う。
見つけていって欲しいと願う。
長く生きていると
日常の一つ一つに心動かされることなく
1日を過ごすことができてしまう。
昨日と同じような今日が来て
去年の今頃と同じことを今年もする。
3年前と同じ音楽を聴いて
同じメンバーで同じ話をして同じところで笑っている。
自分に問う。
今日はどんな日だったろうか。
今日一番嬉しかったことはなんだったろうか。
明日は早く家に帰って息子とかけっこをしてやろう。
本気で走って圧倒的に勝ってやろう。
いつか負ける日が来る。
その日に汗びっしょりで飲むビールはうまいだろうな。