熱中症・夏バテへの備え
熱中症とは・・
2023年に熱中症で救急搬送された人は5月から9月までのたった5か月間に全国で9万1467人に及んでいます。さらに、熱中症で亡くなった人は、2018年には年間1581人、2020年も1528人にも上っています。
毎年大雨などの自然災害で亡くなる人が年間100人強程度、交通事故の犠牲者が年間3000人程度なのを考えると、熱中症の被害がいかに大きいかがわかります。
そして、2023年に東京都で亡くなった人の場合は、8割以上が65歳以上の高齢者。さらに、屋内で亡くなった人の約9割がエアコンを使っていませんでした。きちんとエアコンを使って涼しくしていれば亡くならずに済んだかもしれません。
「熱中症特別警戒アラート」がスタート
こうした事態を受けて、国は2020年から始まっている熱中症に警戒を呼びかける「熱中症警戒アラート」に加え、いわば特別警報にあたる「熱中症特別警戒アラート(熱中症特別警戒情報)」を2024年から発表することになりました。
「熱中症警戒アラート」が発表される基準とは?
熱中症の危険度を予測するには、気温と湿度などから計算する「暑さ指数(WBGT)」を用いています。
熱中症にかかりやすい条件である、体に暑さがたまってしまい、外に逃がすことができなくなることに注目し、気温、湿度、日射・輻射、風、の要素をもとに算出したのが暑さ指標(WBGT)です。
この暑さ指数は熱中症の起こりやすさを示す国際的な指標で、「℃」で表現され、日本では環境省が毎日「熱中症予防情報サイト」で発表しています。
熱中症予防情報サイト: http://www.wbgt.env.go.jp/
暑さ指数が31℃以上になると危険な状態になるといい、患者搬送も急激に増えていることがわかります。
熱中症環境保健マニュアル2022から
暑さ指数ごとの各地の患者搬送数(環境省資料から)
こうしたことから、「暑さ指数33℃以上」という“危険な暑さ”が予想されるときに発表されるのが「熱中症警戒アラート」です。気象庁の府県予報区の単位を対象地域とし、府県予報区の中のどこか1カ所の観測点でも暑さ指数33℃以上が予想される場合に発表されます。
「熱中症警戒アラート」は、毎日、前日の夕方17時頃と当日の朝5時頃に発表されます。
このアラートが発表されると、各市町村は防災無線などを通じて住民にも伝え、運動や不要不急の外出をひかえるよう強く呼びかけています。
<「熱中症警戒アラート」が発表された時の注意点>
◆涼しい部屋に移動し、エアコン等を適切に活用する。不要不急の外出を避ける。
◆高齢者などは、特にエアコン等を適切に活用し、定期的に水分・塩分補給を行う。周囲が協力して注意深く見守る。
◆学校などでは、児童生徒らを涼しい屋内に誘導する。エアコン等が設置されていない屋内及び屋外での運動、校外活動の中止・延期などを検討する。必要に応じて、臨時休校の対応も。
◆農作業では、気温の高い時間帯を避け、作業前・作業中の水分補給、こまめな休憩を心がける。汗を吸いやすくすぐに乾きやすい素材の衣服や、屋内では送風機などを活用する。単独作業を避け、定期的に異常がないか確認しあう。
◆工事現場などの事業者は、各現場の暑さ指数(WBGT)を再確認の上、作業時間の短縮や作業内容の変更等を検討する。
「熱中症特別警戒アラート」が発表される基準とは?
さらに、気温が特に著しく高くなることにより熱中症による人の健康に重大な被害が生ずるおそれがある場合には「熱中症特別警戒アラート(熱中症特別警戒情報)」が発表されることになりました。
これは、過去に例のない広域的な危険な暑さが想定されるときに出されるもので、都道府県を発表単位として、都道府県内のすべての観測ポイントで暑さ指数が35℃以上になった時にだけ発表されることになっています。
発表のタイミングは前日の午前10時に環境省のHPで翌日の暑さ指数の予測が公表され、基準を満たしたときには午後2時をめどに環境省が記者会見をひらいて「熱中症特別警戒アラート」を発表、危険な暑さから自分と自分の周りの人の命を守るように呼びかけることになっています。
ちなみに、2024年4月の段階では過去に特別警戒アラートが発表される基準を満たしたケースは全国で1度もないということです。もしも熱中症特別警戒アラートが発表される事態になったら、これまで経験したことのないようなとても危険な暑さの状況になるといえます。
<「熱中症特別警戒アラート」が発表された時の注意点>
◆全ての人が自ら涼しい環境で過ごす。
◆高齢者、乳幼児等の熱中症にかかりやすい人の周りの人は、エアコン等により涼しい環境で過ごせているか確認する。
◆学校や企業、イベントの主催者などの管理者は、全ての人が熱中症対策を徹底できているか確認し、徹底できていない場合は、運動、外出、イベント等の中止、延期、変更(リモートワークへの変更を含む。)等を判断する。
◆これまでの熱中症予防の対応では不十分な可能性があるので、今一度気を引き締めて対応するようにする。
熱中症のサインとは・・
◆めまい ◆顔のほてり ◆筋肉のけいれん ◆筋肉痛 ◆だるさ ◆吐き気
こんな体のサインに気づいたら、熱中症の可能性があります。
涼しい場所で体を冷やし、水分と共に塩分を補給してください。
熱中症かな?と思ったら・・
まず意識があるか確認。涼しい場所に寝かせ、ベルトや衣服をゆるめます。
そして、首筋や脇の下、足の付け根など太い血管がある所に氷や冷たいペットボトルをあて、体を冷やしましょう。
言動がおかしい、意識がない、と思ったらすぐに救急車を呼んでください。
熱中症の3段階・・
軽度の症状・・
◆めまい ◆立ちくらみ
⇒涼しい場所で衣服をゆるめ、水分・塩分の補給を
中度の症状・・
◆頭痛 ◆吐き気
⇒涼しい場所で足を高くして休み、病院へ
重度の症状・・
◆意識障害 ◆高熱
⇒首・脇の下・足の付け根を冷やし、すぐ救急車を呼びましょう
暑くなり始めに注意を・・
体が暑さに慣れるには、数日~2週間の時間が必要と言われています。
日常的な運動で意識的に汗をかく機会を増やして、暑さに負けない体作りが大切です。
気温がそこまで高くなくても、湿度やスポーツなどでの体調変化、水分補給の状態や健康状態によっては、熱中症を発症することもあるので注意してください。
自分や周りの人の体調に気をつけるようにしましょう。
子どもや高齢者の熱中症に注意を・・
子どもや高齢者は、思っている以上に室温が上がっているのに気づかず、熱中症になってしまうこともあります。
保護者の皆さんや、一緒に暮らしている人が、協力して快適な空間を作ってあげましょう。
家の中・夜でも熱中症の危険が・・
家で熱中症になる人は、熱中症患者の全体の4割にも達しています。
一番多い場所は、長い時間を過ごす居間や、寝室です。
寝る前に、水やスポーツドリンクでしっかり水分補給をしましょう。
さらに、エアコンと扇風機の合わせ技で室温を下げましょう。
風通しの良い半袖・半ズボンもおすすめです。
【夜の熱中症対策(1)】
アルコールやコーヒー、緑茶などに含まれるカフェインには利尿作用があるため、水分をとっても排出されてしまい、熱中症のリスクが高まります。
寝る前には基本的に常温の水を飲みましょう。
脱水気味なら経口補水液やスポーツドリンクもおすすめです。
【夜の熱中症対策(2)】
冷房が苦手な方は・・
エアコンを少し高めの温度に設定しても、扇風機を天井にあてて空気を混ぜると涼しく感じられます。
冷たい空気が下にたまり続けるのを防ぎ、冷え予防にも有効です。
エアコンを使いこなそう
【エアコン 賢く使うコツ(1)】
2週間に1度フィルターを外してホコリを吸い取り、電気代を節約します。
冷却の効率を下げないように、室外機の吹き出し口にはものを置かないことが鉄則。
「帰宅したらすぐエアコン」より、まずは窓を開けて家にこもった熱を追い出すようにします。
【エアコン 賢く使うコツ(2)】
風量を強くすると体感温度が下がって涼しく感じ、設定温度を下げるよりも消費電力は少なくなります。
設定温度を1℃上げると約10%の節電に。
無理は禁物なので、快適に感じる範囲でエアコンをお得に使いましょう!
【エアコン 賢く使うコツ(3)】
睡眠中は体温が下がります。
エアコンの設定温度をやや高めにして、タオルケットなどを羽織って寝るのがおすすめです。
【エアコンは“つけっぱなし“がお得?】
ちょっと外出という時には、エアコンを止める人が多いと思いますが、日中の30分程度の外出であれば、つけっぱなしにしておいた方が電気代が安かったという実験結果もあります。
エアコンで「咳ぜんそく」に・・
屋外と室内の寒暖差が激しい夏は、過敏になった気道の粘膜にエアコンから出るホコリ、カビ、冷気が刺激を与え、「咳ぜんそく」になる危険があります。
もし咳が2週間続くようなら病院へ行った方が良いかもしれません。
また、エアコンを掃除したり、切る前30分の送風運転でカビ対策をしたりしましょう。マスクをするのも予防には効果的です。
こんな熱中症への対処方法も・・
運動後30分に乳製品で、熱中症予防ができる!?
運動後の30分間はゴールデンタイムで、牛乳などの乳製品をとると、筋力アップに有効だとされています。
血液の量も増やすので、汗をかいて熱を体から逃がしやすくなり、熱中症予防にもつながります。
【参考記事】「体づくり」に最適のタイミングはいつ?
http://www.news24.jp/articles/2016/08/04/07337146.html
ペットの熱中症にも注意を・・
犬や猫なども熱中症にかかることがあり、特に、暑い中で散歩中の犬は熱中症にかかりやすいので注意が必要です。
気象庁が観測・発表する気温は、日陰の風通しの良い場所で地上から150センチの高さの空気の温度なので、気温35℃といっても路面近くは約60℃になることもあります。
背の低い犬などは、地面から反射する熱の影響を受けやすく、舌や肉球でしか体温を下げることができないので、重症化すれば死に至るケースすらあります。
炎天下の散歩は避けましょう。
また、犬や猫を家に残して留守にする場合はエアコンをかけてあげてください。
こまめに水を与えてあげることも忘れずに。
夏バテにも注意を
食欲不振、倦怠感(けんたいかん)、だるい、気力がない、眠れない・・
こんな症状が出たら、夏バテかもしれません。
食欲がない時は、食欲がわくものを食べて栄養補給をしましょう。
かき氷ではなく、脂質とタンパク質を同時に摂取できるアイスクリームがおすすめです。
夏バテは、脱水症状が進むと熱中症になる危険もあります。
規則正しい生活とバランスのとれた食事、適度な運動で、まずは夏バテ予防を。
なぜ夏バテになるの・・
エアコンの効いた室内と暑い屋外の出入りを繰り返すと、自律神経のバランスが乱れることで夏バテに。
冷たい飲みもののとり過ぎで胃腸機能が低下することも一因となります。
十分な睡眠とバランスのとれた食事で、夏バテを予防しましょう。
また、悪い姿勢を続けると、姿勢を正しく保つための筋肉を使わず、いざ動く時に疲れやすくなります。
筋肉に余分な緊張が加わって血流が悪くなり、疲労性物質がたまって夏バテの原因にもなるので、程よい運動が大切です。
【関連リンク】
食中毒を予防しよう サルモネラ菌の特徴 症状は?
熱中症・夏バテへの備え/熱中症かな?と思ったら
水の事故に注意 海や川で溺れた時の対処法は?