《野外での婚礼の踊り》ピーテル・ブリューゲル2世 1610年頃 Private Collection

Special スペシャル

魅惑のベルギー、ブリューゲル紀行

1、フランドル絵画とブリューゲル

九州ほどの小さな面積に、芸術と美食がいっぱいにつまった国ベルギー。各時代の壮麗な建築に囲まれた"世界一美しい"広場「グランプラス」や、かわいらしい小便小僧の銅像が知られる首都ブリュッセルは、EU(欧州連合)の本部があり、フランドル(フランダース)の首都も兼ねるヨーロッパの一大拠点です。
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「グランプラス」にひときわ高く搭がそびえる建物は、ブリュッセル市庁舎。
15世紀の建築なので、ブリューゲルも見たことがあったはず
©神戸シュン/NTV
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歴史的な街並とともにある、ブリュッセルの穏やかな日常
©神戸シュン/NTV
よく聞く「フランドル地方」とは、ベルギーの約北半分を占める地域のこと。ブリュッセル、アントウェルペン、ゲントなど主要都市を擁するこの地方は、中世より繊維業が発達し、17世紀には未曾有の繁栄を遂げました。その豊かさを背景に興ったフランドル美術は、ヨーロッパの芸術に大きな影響を与えます。なかでも絵画の分野では、油絵の技法を発展させたファン・エイク兄弟、奇想の画家ヒエロニムス・ボス、「画家の王」と呼ばれたピーテル・パウル・ルーベンスなど、数々の天才を輩出しました。
もちろん、《バベルの塔》の作者として知られる、ピーテル・ブリューゲル1世もそのひとり。多くの画家が活躍した家系の初代であることから、「大ブリューゲル」や「ブリューゲル(父)」などと記名されることの多いピーテル・ブリューゲル1世は、16世紀に生まれました(生年&生地は不明)。彼の生涯は詳らかではありませんが、1551年に画家として独立した後、2年間のイタリア旅行を経てアントウェルペンに帰国、1563年、マイケン・クックとの結婚を機に、ブリュッセルに移り住んだことがわかっています。
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ブリュッセル時代にピーテル・ブリューゲル1世が住んだとされる「ブリューゲルハウス」。有名な小便小僧の近くにある
©神戸シュン/NTV
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ピーテル・ブリューゲル1世が結婚式を挙げ、
妻と埋葬されているノートルダム・ド・ラ・シャペル聖堂
©神戸シュン/NTV
わずか6年後にピーテルが亡くなってしまったため、結婚生活は大変短いものとなりましたが、その間に生まれた長男ピーテル2世と、次男のヤンは、父親同様ベルギーを代表する画家となりました。
ブリューゲル1世夫妻が結婚式を挙げ、仲良く眠るノートルダム・ド・ラ・シャペル聖堂は、今もブリュッセルの下町マロール地区に建っています。
■木谷節子 プロフィール
アートライター。現在「婦人公論」「SODA」などの雑誌やアートムックなどで美術情報を執筆。近年は、絵画講座の講師としても活動中。
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