ロンドン渋滞対決 カーナビ vs ロンドンタクシー vs 新聞配達 vs バイク

 

 伝統と流行が同居する街・ロンドン。この街は、「大航海時代」「産業革命」と世界に新しい風を吹きこんできた国・ イギリスの首都であり、そして、現在では世界経済の中心の一つとしてリードする大都市。 しかし、この街も、私達の国「日本」と同じように、現代都市特有の問題を抱 えている。

 それは…「渋滞」。 およそ700万人が住むロンドンは、古い街並のため細い道が多く、またラウンドアバウトと呼ばれる、入り口・出口が複数あるロータリー形式の交差点があるため、朝夕や週末はかなり道が込み合う。 そこで、このロンドンの街で、それぞれに特色を持った3台の車と1台のサイドカーで、この渋滞を回避し、どれが1番速く目的地に着けるかを競う。

 今回の実験に挑戦するのは、この4台。

ロンドンタクシー●ロンドンタクシー
 街を堂々と、そして優雅に走る黒塗りでオースチン型の「ロンドンタクシー」。
この「ロンドンタクシー」は、その姿ゆえ「走るグランドピアノ」と呼ばれ、 現在、約1万2500台のロンドンタクシーが、イギリスに住む多くの人々の 足となっている。また、駆動力も十分で、ロンドンの街を走る細い道をも、全く苦としない。さらに、その車を運転するドライバーは、目的地を告げるだけで、即座に最短ルートをはじき出し、快適に、すばやく乗せていってくれる。 このロンドンタクシーのドライバーになるためには、運転技術、性格、地理の厳しいテストがあり、専門の学校で勉強しても合格するのには3年かかるといわれ、またその合格者は100人のうち5人から6人しかいない。 そのため、「キャビー」という愛称で呼ばれる、このロンドンタクシーのドライバーは、大変誇りが高く、別名「世界一安全な乗物」といわれているのである。 ちなみに、戦後、交通事故で死亡したロンドンタクシーの乗客は一人しかいないという。

● カーナビ
 今回、使用するのは、最新鋭GPS付きカーナビ。このカーナビは、宇宙で地球の軌道上を周回している地球を眺める眼である、GPS衛星通信を利用したもの。ドライバーが、設定した目的地までのルートを、この通信衛星から送ら れてきた情報を基に、最も速く移動できる道を算出する科学技術の結晶。

●イブニングスタンダード
 新聞は、ロンドンで最も重要な情報源。日本では、自宅に配送される新聞だが、 ロンドンでは、街のいたるところに点在する「スタンド」とよばれる小型売店 や、その他店頭で自らが直接購入する形式。そのため、多くの人々が、店頭に並ぶ新聞を心待ちにしている。 そして、この人々の期待に答えるために存在するのが、新聞をスタンドや店舗 に配送している「イブニングスタンダード」。彼らは、ロンドンの街に点在する何十もの店舗を1台で担当しているため、限られた時間で速やかに、街を移動 しなければならない。そこで、ドライバーは、地元の人間が多く、渋滞回避や 抜け道などの独自のルートを持っているのである。

● サイドカー(サイドカー付きバイク)
 今回の実験では、最も小さい「サイドカー」。この「サイドカー」の強みは、やはり、車では行けない細い道でも入る事ができ、また、渋滞の車の横をすり抜けられること。

 今回の渋滞対決のスタート地点となるのは、東経・西経とも0度であ り、世界標準時を刻むグリニッジ天文台。目的地・ゴールは、グリニッジ天文台から、約20キロ西にある、EMIスタジオ。ちなみに、このEM Iスタジオは、ビートルズの「アビーロード」のレコードジャケットで、彼ら4人が渡っていた横断歩道の目の前。

 ロンドンタクシーに乗るのは、松岡とイギリス紳士のタクシードライバー。カ ーナビ付きを運転するのは、城島。イブニングスタンダードは、毎日、一緒に行動している地元ドライバー2人。そして、サイドカーには、長瀬と太一が乗る。

 今回の実験のポイントは、ロンドンの中央に流れる「テムズ川」にかかる橋。 というのも、ゴールのEMIスタジオには、テムズ川を渡らなければ到着でき ず、また、このテムズ川を渡る橋は、何本もあり、それぞれ混み具合が違うため、どの橋を選ぶかによっ て、大きく時間が変わってくるのである。 ロンドン名物「ロンドンタクシー」と、ハイテクの粋を集めた「カーナビ」、そして、ロンドンの人々の最も重要な情報源である新聞を配達する「イブニング スタンダード」、さらに、細い道を縦横無人にかけ抜ける「サイドカー」。 はたして、ロンドンの渋滞を避けながら、どれが一番速くたどりつくことができるのか?

 およそ700万人が住むロンドンは、古い街並のため細い道の多さとラウンドアバウトとよばれる、入り口・出口が複数あるロータリー形式の交差点があるため、朝夕や週末はかなり道が混み合う。
 その大都会で活躍するのが、「ロンドンタクシー」。黒塗りで、観音開きのドアで乗降する黒塗りの気品あるその姿は、「走るグランドピアノ」と呼ばれ、行先を告げるだけで即時に最短のルートをはじき出し、快適に最速の時間で目的地まで連れて行ってくれるという。ロンドンタクシーのドライバーは、合格するのに3年はかかるという厳しい試験を突破した、選りすぐりのエリートで、ロンドン全ての道と建物を知り尽くしていないといけない。

 この‘世界一’の乗り物に渋滞の道で挑戦するために東京からロンドンへやって来た男たちがいた。

 ロンドンでも普及率の高まるカーナビを頼りにする、リーダー城島。今回は赤い髪にリーゼントというパンクスタイルでの登場。使用するのは、最新鋭GPS付きカーナビ。このカーナビは、GPS衛星通信を利用したもので、出発地点と到着地点を入力するだけで、最も速く移動できるルートを導き出してくれるという優れもの。

 そして、サイドカー付きバイクに乗る、長瀬と太一。長瀬が運転し、太一が地図を片手にナビを務める。この「サイドカー」の強みは、やはり、車では行けない細い道でも入る事ができ、また、渋滞の車の横をすり抜けられること。

 さて、ロンドンが世界に誇るロンドンタクシーに客として乗るのは、紳士風スタイルの松岡。ドライバーはキャリア15年のベテラン、ショーン。ロンドンタクシーの車内は天井が高く、広いため、山高帽でもゆったり移動できる。

 そして、もう1台。オレンジと白の、しましま模様のカラフルな車が現れた。それは、「イブニングスタンダード」紙の新聞配達車。ロンドンでは新聞は、街のいたるところに点在する「スタンド」とよばれる小型売店や、その他店頭で自らが直接購入する形式。そのため、新聞配達システムが発達しており、このドライバーは、地元の人間が多く、渋滞回避や抜け道などの独自のルートを持っている。これに乗るのはいつもコンビを組んでいるキャリア16年のジョーと、キャリア9年のダニエルの、人呼んで「ジョーダンコンビ」。二人とも陽気な性格で、チームワークは、ばっちり。

 今回のスタート地点は、ロンドンの南西に位置するグリニッジパーク。こちらは、東経・西経ともに0度であり、世界標準時を刻むグリニッジ天文台がある。そして、ゴールは、グリニッジパークから約20キロの、ロンドン北西部にある、EMIスタジオ。このEMIスタジオは、ビートルズの「アビーロード」のレコードジャケットで、彼ら4人が渡っていた横断歩道の目の前。

 4台の乗り物、はたしてどれが一番早くゴールに到着出来るのか?

 ラジオ局に道路状況をレポートする仕事をしているAA・ロードエキスパートのアンディー・バレットさんに聞いてみると、ポイントは2つあるという。

 ひとつは、テムズ川に架かるどの橋を渡るかということ。なぜならば、ゴールのEMIスタジオには、テムズ川を渡らなければ到着できない。そして、このテムズ川を渡る橋は、何本もあり、それぞれ混み具合が違うため、どの橋を選ぶかによって、大きく時間が変わってくるのである。
 もうひとつは、市内の渋滞をどう避けるかということ。ロンドン市中心部は慢性的に渋滞している。いかに渋滞を回避してアビーロードへ向かうかが、今回の勝負のカギとなるという。

 午後1時、グリニッジパークを兵隊さんに見送られて、4台同時にスタート。アビーロードを目指す。

 スタート直後、まずはタクシーが直線で飛び出す。そして、パークの門を出て左折。新聞配達車も同じく左折する。やはり地元っ子は道を知っている。そして、英語のカーナビに戸惑う城島も、音声の「レフトターン」の指示に従い、タクシーと新聞配達車を追いかける。

 一方、長瀬と太一の乗るサイドカー付きのバイクだが、スタート早々、どうも様子がおかしい。ボボボボボと変な音がして、軸がぶれる。そして、次第に減速し、ついに…エンジンが止まってしまった。長瀬・太一チーム、早くもリタイヤか。突然のアクシデントに、途方に暮れる二人。

 困り果てた二人は急きょ、バイクのオーナーを呼び、来てもらうことに。すると、オーナー、新しいバイクを用意してくれるという。しかし、オーナーに何とか用意してもらったのは、サイドカーではなく、普通のバイクだった。しかし、サイドカーと比べると、より小さくなった彼らのバイク。ということは、さらに細い道を進んでいけるということ。これは、チャンスかもしれない。ただし、長瀬と太一が、このロンドンの細い裏道を上手に活用できればの話。

 先を行くタクシー、新聞配達車、そして、追いかけるカーナビ車の城島。しかし、城島、信号にひっかかって2台に離されてしまう。そのとき、カーナビを見ると、カーナビの指示は先の2台の進路とは異なり、右折。城島、カーナビに従い道を進めることにする。

 そのころ、タクシーは順調に走行中。が、目の前に車の列が。ここは観光客が多い場所で、混雑することがあるという。そこでドライバーのシェーン、松岡に「ロンドンの渋滞へようこそ」と、ジョークの混じったお言葉。

 そして、同じプロのドライバーとして、タクシーにライバル意識を燃やす新聞配達車のジョーとダニエルも、テムズ川は地下トンネルでくぐろう、と意見が一致。抜群のコンビネーションを発揮して1位を狙う。

 さて、カーナビ車に乗る城島は、ロンドンの交通事情にも少しずつだが慣れてきた。しかし、何か様子がおかしい。速度のメーターは「40」の所を指しているのだが、40キロ/hにしては速すぎる。疑問に思い首をかしげるがよく見ると、単位がキロではなく、マイルであった。文化の違いに納得。ちなみに、40マイル/hは64キロ/h。

 そのころ、再スタートを切ったバイクの長瀬と太一も、ようやく軌道に乗ってきた。ゴールへ向かうにはテムズ川を渡らなくてはならないため、橋を目指し進む。

 タクシーは信号の少ない道を選んで通行。こういったロンドンタクシーのドライバーの道路状況に関する細かい知識に、松岡、感心。

 新聞配達車はミレニアムドームの近くを通過中。

 スタートから25分。先行するタクシーを新聞配達車が追う展開。さすがにプロは違う。

 タクシーは、ロンドンブリッジを渡る。この渡る橋の選択にもドライバーの経験と知識が生きている。なぜなら隣のタワーブリッジは、観光名所であるため、混雑しているのだ。しかし、タワーブリッジの荘厳で美しい姿に松岡、すっかり見とれてしまった。

 カーナビを頼りに進む城島。しかし、その時、城島の視界に日本では見たことのない標識が…そして、ロータリーのようなものが前方に…。
 これは、「ラウンドアバウト」と呼ばれる入り口、出口が複数あるロータリー型の交差点。この交差点には信号がないため、慣れていない人には逆に難しい交通システムだという。
 難関を乗り切れるか城島。とその時、カーナビに異変が。カーナビが切れてしまった。と思いきや、城島が曲がる所を間違えてしまったようだ。混乱する城島。しかし後戻りはできないので何とか元に戻ろうと焦る。しかし、目の前にはまたしても「ラウンドアバウト」が…。カーナビの画面と道路を交互に見比べ、正しい道を必死で探してみる。しかし2つ目の「ラウンドアバウト」でも、焦って混乱し、きょろきょろ。自分がどうなっているのか、わからなくなってしまった。

 ロンドンの道に精通しているタクシーと新聞配達車は順調に進んでいる。タクシードライバーのショーンは、渋滞を難なくクリア。この道選びの魔術に松岡はびっくり。ショーンいわく、「ロンドンの道の99パーセントは頭に入っている」とのこと。ロンドンタクシーのドライバーはやはり頼もしい。

 この時点で川を越えたのは、さすがはプロ、のタクシーと新聞配達車。しかし、ここへきて新聞配達車の名コンビに異変が。二人は直進するか、左折するかでもめていた。お互いプロとしてのプライドがあるため譲らない。しかし、二人とも冷静になり、仲直り。再び協力して1位を目指す。

 川を渡ったのはタクシーと新聞配達車の2台。ここまではリードするタクシーを新聞配達車が追う展開。最新システムのカーナビ城島は、なかなか距離を伸ばせず。

 タクシーは「シティ」と呼ばれる銀行や金融機関の集まる中心部へ。ここは世界の金融の中心地の一つ。平日は身動きが取れないほど渋滞する箇所であるが、この日は土曜日のため、がらりとすいており、流れは順調。さすがはショーン、知識が光る。

 ビッグ・ベンが目の前に見え、ウエストミンスターブリッジを通り、なんとかテムズ川を渡る事に成功したカーナビ付きの車に乗る城島。その後、最短ルートでゴールを目指す為、多少の渋滞はあるが、トラファルガースクエア、ピカデリーサーカスのあるリージェントストリートを通る。

 そのころ、ついにバイクの二人もテムズ川にたどり着いた。渡るのは「タワーブリッジ」。太一、あまりに良い景色だったため、カメラを取り出し記念撮影。運転中の長瀬とのツーショットもしっかり撮った。

 カーナビの城島も交通事情に慣れてきた。混雑した道で右往左往していると、車に道を譲ってもらった。この異国の地での親切に城島感動。すっかりロンドンが気に入ってしまったようだ。

 そして、バイクにまたがる長瀬と太一は、テムズ川を渡り終えたが、なぜか、また橋を渡り、元の岸に戻ってしまう。この時点で、他の3台とは、かなりの差ができてしまった…。

 そのころ、新聞配達車もわざわざダニエルが車から降りて近道を探す、という気合の入りようで、勝利の行方はまだわからない。

 ロンドンタクシーの松岡は、一般車は原則的に走る事ができない「バス・タクシー専用車線」を利用するため、リージェントストリートを途中で左折し、オックスフォードストリートへ入り、こちらも一気にゴールを目指す。

 カーナビの城島は、リージェントストリートをそのまま北上し、一気にEMIスタジオへ。

 ロンドンタクシーは、バス・タクシー専用道路へ進んだのだが、思いがけず渋滞しており、少々足止め状態。

 そのころ城島は一方通行が多い地区をカーナビを唯一の頼りにゴールへ近づき、タクシーに乗る松岡との差は、ほとんどなくなってきた。そのとき、城島、前方のロンドンタクシーに紳士風の帽子をかぶった客を発見。もしや松岡では?ついに追いついたか?と期待して近づき、確認するが残念ながら人違い。

 この時点でスタートから45分。バイクはテムズ川を3回渡るという珍体験で、大きく出遅れ、相変わらずタクシーがリードしている。しかし、タクシーが渋滞に巻き込まれている間にカーナビが追い上げ、展開が変わってきた。

 新聞配達車が選んだルートは、とにかく渋滞を避ける道。そこで、街の中心街ではなく、郊外にあるゴズウェルロードを北上し、ゴールを目指す。二人は探していた近道が見つかったため、がっちり握手。

 さて、スタートから一時間。プロフェッショナルの技で巧みな道選びを進めてきた松岡の乗るタクシーと、城島の運転する衛星を使ったカーナビ搭載の車の一騎討ちとなっている。そして、すいている外回りの道で勝負に出た、陽気なコンビの新聞配達車が北の方向から猛スピードで追い上げている。

 そして、ゴールのEMIスタジオに、一番速くやって来たのは…

 タクシーの松岡が到着。1位を確信してゴールゲートをくぐったその時、何と真っ赤な髪にリーゼントの城島が着いていたのだ。実はタクシーに乗った松岡の到着するわずか1分前にビートルズのそっくりさんの出迎えるゴールに着いていたのだ。


 一方、新聞配達車は、その後も、街の中心街はできるだけ避けるルートを通り、EMIスタジオを目指したが、結果、3番目に到着。タクシーとカーナビに敗れたことが信じられない様子。がっかりする二人だが、新聞をビートルズのそっくりさんにしっかり届け、任務は遂行。

 先に着いた城島と松岡は、ビートルズのレコード「アビーロード」のジャケット写真の撮影が行われ、「世界一有名な横断歩道」となった横断歩道で、ビートルズのそっくりさん達に「再現」してもらい、満足。

 そして、残るは、バイクに乗る長瀬と太一だが、約30分以上遅れて、皆の待つゴールに無事到着。

 一番速く着いたのは、城島の「カーナビ」(1時間12分)、2番は松岡の「ロンドンタクシー」(1時間13分)、3番は「新聞配達車」(1時間17分)、そして最後は長瀬と太一の「バイク」(1時間53分)という結果となった。

 全員到着したその時、「ビートルズ!?」の‘ポール’が意味ありげに新聞を広げた。その紙面にはこんな文字が。「Back to Tokyo by 3000 steps」。そして、ゴールゲートの文字をはがすと、「ロンドン→東京10000キロ、3000歩で帰れるか?」。これにはメンバーもあ然。しかし、4人は一晩それぞれに工夫して道順を考え、東京へ向かう。果たしてロンドンから東京まで、3000歩で帰ることができるのか?

次週放送予定。

 それは、このカーナビロケが終わった後の事でした。宿泊先のホテルに戻ったスタッフとメンバーは、食事までの時間、それぞれの部屋でくつろいでいました。すると、突然、非常ベルが鳴り響いたんです。なかなか鳴り止まず、その後、アナウンスで火事であることがわかったのです。みんなパニックになってホテルのロビーに集合し、点呼を行ないました。するとあるメンバーの一人が、かなりあせったようで、上半身裸で、手には、テレビのリモコンを持ったまま出てきていました。幸い、この非常ベルは誤報だったらしく大事には至りませんでしたが、皆、ヒヤっとしたのは間違いありません。さて、この裸でリモコンを持ってきたのは誰でしょう? ヒントは、Nです。
「ぴんく」 オーディションでどこまでやれるか!?

 1999年、春。
 長瀬と松岡は、自らの音楽性を高めるために、自分達も「15minutes」のように音楽ユニットを作ることを決心し、ある人物に協力を求めた。その人とは…「日本のロックの王様」である、大先輩の忌野清志郎さん。

 そして、ここにもう一つのインディーズユニット「ぴんく」が結成された。

 長瀬、松岡、清志郎さん、そして清志郎さんの仲間であるグリコさんの4人で結成された「ぴんく」は、自らの音楽のみで勝負するために、正体を隠す手段として覆面をかぶった。そして、まずはデモテープを作る事に挑戦。

 そこで、清志郎さんは、「何度も夢の中で繰り返すラブ・ソング」と「Sweet Lovin'」という2曲の歌を書き下ろしてくれ、密かにデモテープ完成へ向けて練習が始まった…。

 この「ぴんく」の編成では、なんと松岡が、初めてのベースを担当する。松岡は、慣れないベースに頭を抱えた。そして、練習のやりすぎで、手にマメができてしまう。マメをつぶしながら、懸命に練習をする松岡。

 その結果、ついにこの努力が実り、1本のデモテープが完成した。

 そして、今回「ぴんく」の4人は、音楽の聖地「福岡」にやって来た。なぜ、彼らが、ここ「福岡」にやって来たのか?

 それは…「オーディションに挑戦する」ため。

 「ぴんく」が挑戦するオーディションとは、FM福岡主催の「ガンガン・オーディション」。この「ガンガン・オーディション」で勝ち残った2組は、同局の人気イベントである、「ガンガン・ライブ」への出場権を手に入れることができるのである。
 参加資格は、アマチュアバンドであること、またはインディーズバンドであること(バンドとしてプロ活動していなければ可)以外はなし。
 そして、そもそも「ぴんく」が、このガンガン・オーディションに出場することになったのには、こんな経緯があった。
 それは、遡ること1週間前。長瀬と松岡の元に、ある一通の封書が届いたのだった。その手紙というのが、今回のガンガン・オーデションテープ審査の合格通知だったのである。
 というのも、実は長瀬と松岡は、完成したデモテープを「ガンガン・オーディション」宛に送っていたのだった。そして、その審査の結果、応募した108組の中から選ばれた8組の中に入り今回の福岡でのオーディションライブ出場に至ったのである。

 そこで、長瀬と松岡は、この合格とオーディションに出場をしたいという気持ちを伝えに、清志郎さんのもとを訪ねた。

 二人の気持ちを聞いた、清志郎さんは「(オーディションで)落ちたら相当カッコ悪いよ」とこの二人の申し入れに対し慎重であったが、オーディションに出場することは快諾してくれた。

 そこで、オーディションに向けてさらなる練習を重ね、1週間後、オーディション当日となったのである。

 「ぴんく」4人は、オーディション会場へ、もちろん自らの正体を隠すために覆面をして向かった。到着した控え室では、今回のオーディションに出場するアーティスト達が、リハーサルが始まるのを、今か今かと待っていた。
 そして、午後2時、それぞれのグループのリハーサルが始まった。「ぴんく」のメンバー達は、自分達の順番が来るのを、リハーサルが行なわれている会場の客席で待っていた。
 次々にリハーサルをしていく出場アーティストの中には、清志郎さんをうならせ、長瀬と松岡を黙らせる腕前のグループがゴロゴロしていた。
 そして… ついに「ぴんく」のリハーサルの順番。今まで閉じられたスタジオで練習を続けてきた「ぴんく」は、これが人前での初めての演奏となる。
 地元福岡の出場バンドの熱い視線が「ぴんく」に注がれる。
 そして、演奏開始… になるはずが、ここで問題発生。というのも、長瀬のかぶっている覆面についている長い鼻が、邪魔をして思う様に歌うことができない。
 しかし、リハーサルで与えられた時間はわずか。そこで、気を取り直し、演奏開始。果たして、上手く演奏する事はできるのか?

 そして、注目の中、リハーサルは終了。3人は、控え室に戻る。

リハーサルを終えた清志郎さんは、「きついよなー」と、まず覆面をかぶって歌わなければならないことをちょっと後悔。そして、全てのメンバーの口から「緊張」という一言が飛び出した。
 その後、トーナメント形式であるオーディションの組み合わせ抽選も行なわれ、その結果、「ぴんく」は、8バンド中、6番目に演奏することが決定した。
 午後6時。今回のオーディションの審査員となる観客も入場し、会場の熱気も増し、間もなく開演。
 その頃、「ぴんく」のメンバーの中でも、とりわけ松岡は、のしかかるプレッシャーからか、妙に明るく振舞っていた。しかし、やがて無口になり、その後、黙々と直前練習を行ないはじめた。

 いよいよ開演。

 ゲスト審査員であるSMILEのメンバーもステージに到着。このSMILEは、オーデションで演奏した際に、その会場にいた全てのレコード会社が獲得に乗り出したという伝説のバンド。そして、一組目の演奏が始まった。

 ステージで歌っているのは「hi-limits」というグループ。この「hi-limits」は、地元北九州を中心に活動するバンドで、すでに昨年・今年と全国ツアーを敢行している強者である。
 ステージ全体を使って繰り広げられる彼らの演奏は、パワーがあり、会場のボルテージを一気に上昇させた。

 そして、2組目、3組目と次々と演奏が行なわれていき、徐々に「ぴんく」の出番が近づいてくる。そして、4組目の演奏が行なわれてはじめた。
 この4組目で演奏しているのは、優勝候補として最も有力視されている「THE WONDER SOUL STYLE」。彼らは、東京を拠点に活動しており、下北沢を中心にライブを行なっているバンド。
 評判通り、質・パワーとも申し分なく、順調に「THE WONDER SOUL STYLE」は準決勝に駒を進めた。

 その頃、ピンクもステージ袖に移動開始。次に演奏するのは、彼ら「ぴんく」だった。

 「ぴんく」の運命の鍵を握っているのは、初めてのベースを担当している松岡。慣れないベースを一心不乱に抱え、練習してきた成果を、松岡は発揮する事はできるのだろうか?
 気合を入れ、実力勝負の厳しい世界に、今、名もなきバンド「ぴんく」がステージへ上がる。

 すると、一部の観客が妙な反応を示しだした。もしや、「ぴんく」の正体が見破られたのだろうか?

 そんな中、「ぴんく」の演奏がついに始まった!!

 ミスをしないよう賢明に演奏をする松岡。力強い歌声で会場を包み込む長瀬。そして、安心感のあるリードギターで、演奏の舵をとる清志郎さん。

 やがて、緊張の中、演奏終了。

 はたして、「ぴんく」の演奏に、観客達はどんな判定を下すのだろうか…?

 ドラムロールが鳴り響き、そして…結果は、「ぴんく」の勝利。体全体で喜びを表現するメンバー達。次に彼らを待っているのは、準決勝のステージ。
 1回戦の興奮冷めやらぬまま、控え室に戻ったメンバー達。やはり、感想は「緊張」の一言に尽きるようだった。

 そんな中、長瀬は言った。「(何度も夢の中でくり返す)ラブ・ソングは、腕じゃなくて、『心』で弾く」と…。
 そして、やってきた準決勝のステージ。

 今回の対戦相手は、何よりも「心」で歌い、地元でも多くのファンを得てきた、ギター一本で歌い上げる男、その名も「マルツカ道」。
 力強い彼の演奏は、演奏が終わった長瀬と松岡を、圧倒させた。この男気あふれるマルツカ道の歌声に対し、先攻のピンクは、一体どんな演奏をみせたのかだろうか!?
 先攻の「ぴんく」が演奏した『何度も夢の中でくり返すラブ・ソング』は、演奏開始後、いきなり長瀬が歌詞を間違えてしまうというアクシデントが発生。だが、メンバーは全く動揺した素振りも見せず。そして、その後は、順調に演奏は進んでいき、演奏終了となっていた。
 しかし、「ぴんく」のメンバーは、マルツカ道の歌を聞き、自分たちの負けを確信していた。
 ところが、一回戦での、ざわつき同様、会場は何かを怪しむような反応をみせる。
 そんな中での結果発表。はたして…。
 勝ったのは、「ぴんく」だった。しかし、勝利した「ぴんく」には、喜びのポーズはない。
 控え室に戻っても、素直に喜ぶことができないメンバー達。自分達では、負けたと思っていた。勝つことはないと思っていた。でも、勝ってしまった。それも、正体が気づかれつつあるときに…。
 複雑な気持ちを隠せない松岡。しかし、勝負に勝った以上は、決勝戦で、もう一度歌わなくてはならない。
 決勝戦の準備をするまで、控え室は、長い沈黙に包まれた。しかし、松岡の「大人になろう」という一言で意を決した。そして、また誰からともなく練習が始まった。
 そして、いよいよ決勝戦。相手は、あの実力ナンバーワンの優勝候補「THE WONDER SOUL STYLE」。
 彼らは、オリジナルが豊富で、この決勝戦のステージに、最も得意とするロックンロールナンバーで挑む。
 一方、「ぴんく」はまだオリジナルが2曲しかないために、1回戦と同じ曲を演奏することに。
 この「ぴんく」の今、できる精一杯のステージは、観客にどのように映るのだろうか…。

 そして、結果発表。

 勝ったのは、「THE WONDER SOUL STYLE」だった。

 清志郎さん達の協力を得て、結成してから3ヶ月にも関わらず、実力勝負の舞台に挑んだ「ぴんく」。「音楽の聖地」である福岡の街で、ステージで演奏することの重みをあらためて思い知らされた「ぴんく」のメンバーだった…。