米をご飯にするための古の知恵。 手作業でわらから粒へと形を変えていくDASH米。 しかしまだそれを食すまでには至らない。 脱穀機にかけられ、とうとうモミになったDASH米は、敷かれたゴザの上に
山のように重なってゆく。 それを福引のような取っ手のついた道具へ流し込む。 取っ手を回すことで中の風車が回り、 前からはチリ、横からはモミが選別される。
これは「唐箕(とうみ)」という昔ながらの道具だが、 それにしては驚くようなスピードで選別されてゆく。 達也「どうなってんの?この中身?」
と驚けば 城島「50過ぎのおっちゃんが、これもちがう、これもちがうって・・・」 いやいや、これはモミとくずの重さの違いを利用して、
風の力で選別する江戸の世から使われている道具。 米の品種ごとに選別をしてみると、 やはり「たかねみのり」のモミはたくましい。 しかし、どれだけの量がとれるのだろうか?心配な城島。
金光さん「俵にして一俵だな」 一方達也は「ひとめぼれ」の選別。 いもち病にやられた「ひとめぼれ」。 ほっそりとしているが、確かに実は入っている。
「ひとめぼれ」、果たしてどれだけのモミが取れたのか? 両者の量の違いは歴然だった。 「ひとめぼれ」の実入りの悪い軽いモミは飛ばされ、
その量たかねみのりの半分。 城島「やばいんちゃうかなと思ったけど」 達也「一年目だから。開田病といもちで・・・」 命を失いかけただけに、量は少なくても思い入れが強いようだ。 モミの状態ではまだ白い米までは遠いが、こちらもまだまだかまどづくり。
土を盛っては乾かしてのくり返し。 表面はようやく乾燥してきたようだ。 火入れまであともう少し。 そして連日、唐箕での作業は行われ、5種類の米がモミの状態になった。 寒さに強い「たかねみのり」そして「ひめのもち」は健闘。
そして穀箱いっぱいのモミは「コシヒカリ」。 質がよければ確実に1俵分。 うれしい黄金色の粒の山が出来上がった。 おいしいごはんを食べるため、かまどづくりは最終段階。
表面のデコボコをこそぎ落とし、かまどらしさは増す一方。 太一「すっげー火入れしたくない?」と、興奮するも 明雄さん「まだまだ残ってる」と、いつもの。 そのまだまだとは、男達が手にしている白い布。
そう、かまどの表面に布を貼ることによって、表面からのひび割れを防ぐ。 かまどをきれいにして長持ちさせるには不可欠な作業。 何層も土を重ね表面をきれいにならしたかまどは、
まるでケーキのように美しく仕上がった。 そして、釜を乗せてより完成に近づくと同時に、 DASH米を食す時も近づいてきた。 表面が乾くまであと1週間。
究極のかまどでおいしいごはんが食べられるまであともう少し。 DASH米は次なる作業。 木摺臼(きずるす)でモミから玄米へ。 現代では機械で瞬時にしてモミから玄米へと変わるのだが、
昔の人はもちろん手作業でこの臼を回していた。 ゴリッゴリッという音とともに臼の隙間から玄米とモミがらがこぼれ落ちる。 その玄米とモミがらは箕(み)という道具を使うのだが、
太一「ムズカシイ」 箕の中で玄米とモミがらを跳ね上げ風でモミがらだけを飛ばす、 一見簡単そうな作業。 達也はもうコツをつかんだか、もくもくとモミを飛ばす。 やがて夕やみがせまって・・・
太一「あー、とれたなぁ!」 達也「量半分になっちゃったね」 1日かかって選別し、できあがった玄米の山とモミの山。 そしてこの玄米はさらに選別される。
万石と呼ばれる道具、スキーのジャンプ台のような坂をつけた網の上に 玄米を流す。 今度は大きさが選別のポイント。 網の上を流れることによって殻のとれた玄米は滑り台の途中で下に落ちる。 粒が揃い、いよいよごはんが見えてきた。
太一「早く食べたいね」 明雄さん「まだまだだ。」 明雄さんはそういうが米はだんだん白くなってゆく。 早く食べられますように、と流れ星に願いを込めて。 家の中ではなにやら別の作業が始まった。
脱穀してもみを取り除いたわら。 これをそのまま捨てるのは勿体ない。 無駄にしないでつくる昔からの知恵の産物、「米俵」。 通気性と保温性を兼ね備え、ぜひとも自分たちの手で作りたかったものの一つ。 明雄さんに教わりながらわらを形にしてゆく。
夜な夜な進む細かい作業、一つ一つ俵らしい側面の円を形づくってゆく。 そんな俵の側面は、太一のつくった胴の部分につける。 夜なべしてつくる手づくり米俵。 この俵の中にまずたかねみのりが入った。
今となってはなかなかお目にかかれない米俵。 中の米も全て自分たちの手でつくったため思い入れも強い。 達也、持ち上げることでその重みを実感。
すると太一、外の様子に気付く「朝5時くらいでしょ?今」 黙々と続けた俵づくり、気がつくと夜が明けていた。 秋晴れの日はかまどの乾燥も早く、夜なべして作った米俵5個。 臼と杵での精米作業が始まった。
方法はもちつきと全く一緒。 杵で米をついていく。 城島と明雄さん、息を合わせ交互についていたのだが・・・ 勢いよくつきすぎて臼から玄米が飛び出してしまった。
明雄さん「あら〜」 弘法も筆の誤りか、しょうがねえべと笑い飛ばす。 いよいよこの玄米が真っ白なあの米へと変わる。 もう一つの精米の方法、一升瓶と棒でつくのは達也と松岡。
その玄米がふるいにかけられぬかが下に落ちてゆく。 あの茶色がかった玄米がふるうほどに白くなってゆく。 想像していた以上の白さに男たちは言葉が出ない。 そしていよいよ米研ぎ。
村長のいる水場をお借りしてざるの中の米に水を通す。 教わらなくてもやったことのある簡単な作業。 城島「僕にもやらせてくださいよ〜」
明雄さん「ちょっと待て!」 とひとりじめ。 やがて水場が乳白色に染まる。 城島「村で米の研ぎ汁見るなんて思わへんかったわー」
達也「村長、どうですか?研ぎ汁風呂は」 陽の光をいっぱい浴び、まんざらでもない表情。 かまに米が入れられ準備は整った。 そして米を炊くのと同時に、いよいよかまどに火が入る。
パチパチと音を立て燃え盛る炎。 煙突からの煙も順調。 城島、煙突が気になって中を覗き込むと 明雄さん「そこはだめだ!」と険しい表情。
城島の行動が何か危険だったらしいのだが・・・ 次の瞬間、その危険を間近で体験する! 『ボン!』と大きな音を立てて煙突から何かが出てきた!
中に何か詰まっていたらしいのだが、一命をとりとめた城島、 「ドリフみたいになるところやった」と胸をなでおろす。 ご飯の炊きあがりを待つ間、いよいよおかずの料理が始まった。
達也、大根、いんげん、しいたけを炒める。 松岡「いい匂いするねー。やるね〜」 と流れ板の太鼓判も出た。 もちろん全部村で取れた野菜。 今日のこの日のために水につけて保存していた栗の皮むきは城島と明雄さん。
大量の栗をひめのもちとコシヒカリを混ぜた米に流し込む。 流れ板が皮をむくじゃがいも、実は今日のこの日のために城島が植えていた。 夏の光を浴びて成長したじゃがいもも、花が咲いて枯れると収穫時。
流れ板はそのじゃがいもを短冊切り。 一体どんな技を見せるのか? みんなおなかがすいてきたのか、味見と称してのつまみ食い。 かまどを離れて清も漬け物をつまむ。
大根のぬか漬、そしてスイカの皮、きゅうり、なす・・・。 「究極の自給自足」さてどんな料理ができるのか? 村近くの川では魚も釣れる。
その身をつみれにし、先程のじゃがいもで俵を作る流れ板のお手製料理。 大量のじゃがいもはコロッケにも。 小さく丸めてたくさん揚げる。 孝子さんが自家製の味噌で、味付けするのはあったかい鍋。
大鍋からたつ白い湯気は食欲をそそる。 城島の前にはあのデカカボチャ。 中身をくりぬき、器になっている。 そこには生野菜が入れられる特大のサラダ。 孝子さんは鍋に続いてあったか煮物。
おいしいごはんのため、対抗して男たちの煮物づくりも開始! 夏野菜をふんだんに使った男たちの煮物。 すっかり日も暮れ終盤に近づいた頃、
「おーい」と誰かの声がする。 その主は金光さんだった。 金光さんの手にはなにやら新聞紙に包まれた塊が。 それはなんとイノシシの肉だった!
嬉しいこの差し入れは孝子さんの鍋の中に入る。 そしてかまどの方はそろそろいい感じ。 泡が少しずつ吹きこぼれ口のようにふたが開いたり閉じたり。
城島、いよいよふたを取る。 釜の中では白く米がたちキラキラと輝いている。 そして・・・ 達也「さぁ出来上がりました!」
待ちに待った自給自足の食卓が完成した。 赤、黄、緑と彩豊かな野菜と、白いご飯。 煮物、鍋、コロッケ・・・と大人数ならではの料理の品数。 さぁ、いよいよこのときがやってきた!
明雄さんの「まだまだ」もない! いただきまーすという声とともに自給自足の食材でつくった宴が始まった。 「最高だね」「うまい」と会話もそこそこに皆、箸に夢中。
米づくりに挑んで一年。 田んぼからつくって病気にもなった。 アイガモ隊の助けと男たちの思いと昔ながらの知恵の結晶。 野菜づくりも自然との戦いだった。
天変地異にイノシシ襲来、今年も簡単な野菜づくりではなかった。 苦労があったからこそのこの味。 そんな苦労は誰も口にしないが、 それは「最高の食卓やな」との言葉ににじみ出ていた。 |