DASH村 〜冷麦は作れるか?〜
セミの音をバックに、夜を迎えようとしている現在、夜7時のDASH村。
すると、セミの音をかき消すような音が聞こえてきた。



「バリバリバリッ!」
長瀬が竹を真っ二つに割っている音だった。一体、何に使うのか?

「本当に1人で大丈夫?長瀬?」
日本家屋の中で何やら作業しているのは達也。
こちらは、何をしているのだろうか?

達也「イイ感じなんだよね、今年の小麦粉は…」

昨年に続いて2度目の収穫となった小麦。厳しかった冬の寒さと
一気に高まった春の陽気との寒暖差で、去年の成長期を上回る穂の膨らみとなった。
7月の半ば、良い色に乾燥したものをしっかりと刈り入れた。

その小麦を挽いて作った小麦粉をもとにしたものを、先程からこねている達也。
竹を真っ二つに割り、中の節を取る長瀬。

一体、何を作るつもりなのか?

長瀬「ヨシッ!これでイケるでしょ!流しそうめん!」
達也「そうめんじゃないの。作ってんのはそうめんより太くてコシがある冷麦。流し冷麦!」

真夏のゆうげに涼を呼ぶ、手作り流し冷麦。
冷麦はコシが命、と念入りに生地をこねる達也。

達也「でも、ここまで色々手間かけたからねぇ」
そう、ここまで来るには、色々な手間がかかっていたのである。

DASH村に欠かせない水を有効に活用する為に、と始めた水車づくり。
水車職人の方に教わり、完成したものの、軸受け部分が折れて失敗してしまった。

水車職人萩原さんの技術を受け継いでいた達也、手馴れた手付きで作業に取りかかり、無事修復することができた。

そして、作業はひき臼、つき臼づくりへと取りかかる。
この臼があれば、昨年苦労した小麦粉づくりや精米作業もグッと楽になる。

しかし、イチから臼を作るのは大変、と水車職人萩原さんが使われていない水車小屋を紹介してくれるというので、一緒にその場所へと向かう。

30年間使われていなかったので、小屋は崩れ、臼の場所も分からなくなっていた。そこでスコップ片手に土を掘り返す。

「あった!…あれっ?」
掘り返す事1時間、遂に石臼を発見したと思われたが、そこは土が堆積した
土間だった…。

結局、石臼は見つからなかった。次に訪れたのは水車小屋のある民家。
話によると、石臼を使っていたおじいちゃんが亡くなった為、現在は使っていないという。

家の方のご好意で、4つある石臼のうちの1つを頂けることに。
自然石を削って作ったという重さ180kgの石臼を、ご好意に感謝しながらチェーンブロックで持ち上げDASH村へと持ち帰った。

そして、DASH村では石臼の為の水車小屋を作ることに。
炭小屋、日本家屋、穀物倉庫と大工の経験も豊富になってきた達也の指示で、
3日間で小屋は完成。日本家屋と同じく、茅葺き屋根を施せば大敵の雨漏りの心配もない。

そして、いよいよ石臼の設置である。小屋の大きさから石臼の他に餅つきなどで使った木臼も設置する。

どちらも平行に並ぶ様に注意しつつ並べ、設置完了。
あとは臼をつく杵やそれを水車の力で持ち上げるはね板づくり。

「もう一度、水車の回る姿が見たい!」
「そして、早く挽いた粉で料理が食べたい!」

気持ちがはやる男たちによって、作業は急ピッチ。
そして、いよいよ再び水車が回る時がやってきた。

石臼には小麦、木臼には玄米がそれぞれセットされ、その時を待っている。
長瀬「行くよー!」

長瀬によって水門が開かれ、一気に水が流れ込んだ。そして…

一同「オ――――――ッ!!」
水を受け、勢い良く回る水車。そしてはね板によって持ち上げられた杵が、
リズムカルに臼をつく。

城島「苦労かけて作った甲斐あったな…」
達也「よかったね、完成して…」

一度、崩壊の憂き目にあった水車であったが、男たちによって、ここに見事に復活したのである。

その出来たてホヤホヤの水車で作った小麦粉で冷麦を細く切る達也。
気付いたらすっかり日も暮れ、セミの声がいつの間にかカエルの声に変わっていた。
ゆうげの食卓まであと少しの様子。

長瀬「ちょっとぐっさん、見て見て!」
長瀬が持っているビンには白い液体が入っている。

そう、その白い液体とはマサヨのおっぱい。
長瀬はこれを使って、バターを作るのだという。
マサヨのおっぱいに塩を入れて攪拌すると、固形状のバターができるのである。

長瀬「あともう一つ、とっておきがあるんだよね」
と、奥の戸棚を開け、壷を取り出す長瀬。

長瀬「これはホント、バッチリよ!」
フタの中は、真っ赤に色づいた梅干しでぎっしり。

梅干しづくりは、夏が来る前から準備が始まっていた。
古民家の裏にある梅の木から取れた梅の実を、漬け物名人三瓶孝子さん指導のもと漬けた。

つくるのは、カリカリした食感が美味しい「梅漬け」と、
想像しただけでつばの出る「梅干し」。

梅干しの真っ赤な色をつけるには欠かせない「赤紫蘇」と塩を揉んで、
じっくりと浸け込んだ。

果して、そのお味は…
長瀬「スッペ―――ッ!!!」
どうやら、上々の様子。


かまどにも火が入り、続々とゆうげの準備が整う。
ちなみに今夜のゆうげは、一人一品メニューを担当することになっていた。
どんなメニューかというと…

● 冷麦(担当:達也)
● じゃがバター(担当:長瀬)
● ざる豆腐の冷奴(担当:明雄さん)
● 焼きナスの梅とろろがけ(担当:清)
● 村野菜のサラダ(担当:清)
● 新ジャガと里野菜のイワナ巻き揚げ(担当:長瀬)

メインの冷麦も茹であがり、そろそろの様子。
食事をいただく場所は、ようやく風が出てきた縁側。



一同「いっただきま―――っす!」
コシのある冷麦や、味の濃いマサヨバターに舌鼓をしばしつく男たち。
そして…

長瀬「そろそろ行きますか!流し冷麦!」

涌き水を割った竹で引いた、長瀬特製の流し冷麦用の「とい」へ向かう。
冷麦を流すのは、達也。

達也「じゃあ、いくよ――」
すると…

「これ、うんまいなぁ」
「あっ!明雄さんに全部取られた!」
「…」

「じゃあ次いくねー」
「よしっ今度こそ…あっ!といが倒れた!」
「何やってんの明雄さん!」
「こりゃ、だぁめだぁ〜」
「早く直さないと流れちゃうよ!清くんも早く!」
「えぇ、えぇ…」

「今度こそ、大丈夫でしょ。いきまーす!」
「んっ!美味い!」
「これ、追いつかないよ!清くん頼んだ!」
「えぇ、えぇ…」
「明雄さん、流すの早い!」
「こりゃ、腹いっぺぇだなぁ〜」

夏の湿気も吹っ飛ぶ、男たちの賑やかな声がいつまでの村中に響いていました。

長瀬がマサヨのおっぱいを冷やしていた「室(むろ)」
季節を通してあまり気温が変わらない為、夏はとても涼しいところなのです。

ですから、夏になると、時折涼を求めに清が室に入ることもあるそうなんです。
ところがそんなある日、清がいつものように室に入ったところ、いつもとどこかが違う…

誰もいない筈なのに、何か気配がする…
室の中はもちろん真っ暗ですから、ランプで中を照らしてみました。

すると、明かりの先には、無数の虫たちが!
それは俗に「カマドーマ」「便所こおろぎ」と呼ばれる虫で、体が黒いために全く気付かなかったのです。

「!!!」
慌てて、室を飛び出す清。普段ゆったりペースの清ですが、
この時ばかりは、スピーディーで無駄の無い動きで室を後にしました。

その日以来、室には入っていないそうです…