|
2016年3月13日 放送内容DASH島 無人島を開拓できるか!?
|
この日、城島は一人、森の中へ。
確認したいことがあった。
城島「もうハチはいないと思うんねんけど」
それは、スズメバチの巣。
スタッフが見つけたのは、去年の秋のこと。
その時は、巣作りと繁殖の真っ最中だった。 |
|
しかし、いつもの駆除の道具が揃わず、
手をつけられずにいた。
その結果、一回り大きく50cmほどに成長。
とはいえ、冬のこの時期、働き蜂は死に、
女王蜂は、枯れ木や土の中で越冬しているはず。
城島は、この時を待っていた。 |
|
城島「いい形(の巣)やね。このまま舟屋に飾れたらええなあ」
蜂の巣は古くから家や店の軒先に飾る縁起物で、その意味は様々。
忙しなく出入りする蜂を、商売人は店の客に見立て「千客万来」。
卵をたくさん生むことから、「子孫繁栄」。
そして、見た目で威嚇し、
門番代わり「家内安全・厄除け」のお守りに。 |
|
この1年、無人島は機材の破損や材木の炎上など、トラブル続き。
さらに、謎の大型生物の影に、今後、ケガ人が出る恐れも。
そこで城島は、このスズメバチの巣を崩さぬよう舟屋に飾り、
無人島に安全と繁栄を、との願いだった。とはいえ、
冬でも巣を壊せば、中に残っていたハチに刺される事故も。
城島「巣の中にハチが眠ってたら危ないから、燻しますか」 |
|
ハチは煙が苦手。これも経験で知っていた。
巣に送り込めば危険を察知し、出て行ってくれる。
万が一に備え、念には念を。
スズメバチの巣に直接、煙を当てて燻す。
そして、そのまま30分。
城島「これだけ燻して出てけえへんし(巣の中)空やね」 |
|
ならば、あとは壊さぬように取り外す。
地上5mの巣、木に登り、直接手で枝ごと。
城島「取れた!枝を巻き込んで支えてたんか」
というのも、キイロスズメバチの巣は、1か月あまりで巨大化。
一気に巣を拡げるため、周りに枝や葉があっても、
構わず取り込んでしまう。 |
|
城島「どうせなら舟屋の真ん中に飾りたいね」
建物の中心に飾ることで、邪気を威嚇し、
近づく災いを追い払ってくれる巣。
ならば、開拓の基地・舟屋の軒下のド真ん中に。
付け方は、本物に近いほど効果がある。そこで、
梁に打った釘に巣の枝をヒモで結んで、ぶら下げたら、
城島「あー!いいかも!」 |
|
無人島の繁栄と開拓の無事を願った縁起物。
この巣穴から、たくさんの「福」を呼び込み、
リアルな見た目が、災いを追い払ってくれるはず。
しかし、その10分後、水汲みから戻った松岡が、
2階から滑り降りる、すべり棒に飛びつき、
松岡「(すべり棒)折れちゃった!」
根元を破損…家内安全、叶わず。 |
|
そして、始まりは2年前の春。
開拓の基地・舟屋が完成するや否や、新たな問題に直面していた。
自ら捕らえた獲物は、新鮮なうちに、
香ばしさを楽しむ「素焼き」やシンプルな味わいの「茹で」。
そして、島で搾った椿やアケビの「油」で食してきた。
しかし、どれも味がない…そこで、そろそろ。
達也「調味料が欲しいよね、味噌とかさ」 |
|
味噌は、大豆を発酵させた調味料。
飛鳥時代に大陸から伝わり、日本中に広まったという。
使う材料で、米・麦・豆と3つの味噌に分けられる。
どれも、原料は大豆。
そこに、塩で味をつけ、米麹で発酵させるのが、一般的な米味噌。
麦麹で発酵させると、麦味噌に。
豆麹で発酵させれば、豆味噌となる。 |
|
福島DASH村でも、育てた穀物での味噌作りに精を出したが、
今度は、それをDASH島でも。
必要なのは、大豆、塩、麹の3つ。
そこで、海沿いの砂地や岩場に自生する、ハマエンドウを調達。
スイートピーの仲間で、その花は観賞用にも。
初夏に生る若い実は、軽く茹でれば美味。 |
|
でも、今回はハマエンドウの若い実ではなく、乾燥した実を。
それは、福島DASH村で学んだこと。
味噌の材料に、村で育てた大豆を使ったのだが、
大豆は、元々は枝豆としても食べられるものを
乾燥するのを待ってから収穫したもの。
乾燥を待つ間に、豆に含まれるタンパク質が増え、
それが味噌の旨味となる。 |
|
だが、ハマエンドウの大きさは、大豆の6分の1ほど。
達也「実が小さいね。大豆みたいな感覚じゃ無理だね」
目を凝らし、葉と同化する実を探す。
そして、1日がかり、見つかる限りを取り尽して、およそ40g。
城島「これじゃ、まだ全然足らんわ」
ならば、別の豆を。城島には、心当たりがあった。 |
|
それは、海沿いの砂地や岩場に自生する、ハマナタマメ。
若い実は直径1cm、ビー玉ほどの大きさで、
生で食べると、少し青臭い。
そこで、ハマナタマメも乾燥した実を採取。
大豆のおよそ2倍。これなら、ハマエンドウの小ささも補える。
葉に隠れたものも、取り残しないように集めたが、
取れたのは全部で、およそ30g。 |
|
ハマエンドウと合わせても70g。
城島「量少ないけど、これで(味噌)作らんと仕方ない」
味噌にするには、塩と麹も加える。
完成すれば、その量は元の2倍以上に。
福島DASH村で作ったのは、13年前の冬。
雪吹きつける、最も冷え込む時期だった。
そこで、DASH島でも大寒を待ち、仕込みの準備へ。 |
|
城島「この時期(大寒)の水が味噌の仕込みにはいいからね」
というのも、味噌の仕込みには雑菌が禁物。
そこで、菌が少なく腐りにくい大寒の時期の湧き水、
「寒の水」が、古くから使われてきた。
大豆を水に浸け、全ての豆に芯がなくなるまで軟らかくすると、
茹でても熱の伝わりにバラつきがなく、全て同じ硬さに茹で上がる。 |
|
そこで、古井戸で無人島の「寒の水」を汲む…と、
城島「わ!びっくりした!何かおるよ」
汲み桶の中にいたのは、十数匹の蜂。
スズメバチなら、土や倒木の中で越冬しているはず。
調べてみると、“キアシナガバチ"。
大人しく、刺激さえしなければ、人を襲うことはない。 |
|
この時期、オスの蜂は死に、女王蜂だけが身を寄せ合って越冬。
春にそれぞれ巣を作るが、島の果物などの受粉もしてくれる。
なので、無事に冬を越せるよう、桶ごと井戸の奥に移動させ、
改めて、仕込みに使う水を。
この水に、島の豆を浸けるのだが、
大きさが違えば、軟らかくなる時間も違うはず。
城島「(豆によって)別々に浸けてみよう。味も違うやろし」 |
|
別々のビンに入れたら、雨に濡れない倉庫跡で保管。
ここはヘビも出入りする場所、豆を狙うネズミも寄って来ない。
大豆なら、発芽するために水を吸い、18時間で軟らかく。
大きさも、およそ2倍に膨張する。
そこで一旦、18時間待つ。
まず、大きいハマナタマメは、
城島「まだ硬いな」 |
|
小さい実のハマエンドウは、どうか。
城島「硬いな…もうちょっと水に浸けとくか」
そこで、再び、倉庫跡に戻し、数時間置いておくが、
膨張する気配はない。
その頃、蜂が眠る桶に他のメンバーが触れぬよう、
城島が「サワルベカラズ」と、一筆残しておいた注意書きに、
興味を示した松岡が不意に…
松岡「(桶を移動させて)わ、蜂だ!ごめんね!」 |
|
そして、豆を水に浸けて丸2日。
ハマナタマメが、水を吸って瓶の底に沈んだ。
城島「(触って)あ、柔らかい!」
そこで、皮を剥いて一口かじってみると、
若い頃の青臭さはなくなったが、大豆のような旨味もない。
とはいえ、皮が厚いため、吸水に時間がかかったものの、
芯はなくなった。 |
|
ならば、ハマエンドウはどうか。
城島「全然硬い…歯が立たへん」
調べてみると、ハマエンドウは、海沿いに自生。
波にのせて種を運び、流れ着いた場所で芽を出す。
こうして分布する地域を広げていくため、
長時間、海水に浸かっても染み込まない、硬い皮。
ならば、水を吸うまで、今しばらく。 |
|
その間に、味噌の材料のひとつ、塩の調達。
松岡「“藻塩"作るとかさ」
10年前、福島DASH村で経験した海藻・アカモクを使った方法。
海藻の始まりは、古墳時代。
海水は、その中に3%の塩分を含んでいるため、
火にかけ、水分を蒸発させ続ければ、塩分が徐々に結晶化。
そして、塩だけが残る。 |
|
しかし、それには、薪などの燃料が大量に必要。
そこで、海沿いの薪などが少ない地域では、
豊富にある海藻を使い、効率よく塩を海水から取り出した。
水を吸いやすい海藻に、スポンジのように海水を吸わせ、
これを干せば、水かさが減る。
さらに、海藻は表面積が広いため、
風に当たると、すぐに乾燥、水分が飛ぶ。 |
|
すると、表面に塩だけが残り、
これを再び海水に浸せば、溶けて戻っていく。
つまり、これを繰り返すことで、塩の量はそのままに、
水分だけが減り、少ない薪で塩を取り出すことができる。
では、無人島の澄んだ海水を汲み、
海藻に海水を十分に吸わせ、水かさを減らしたら、
日差しと風で2時間、乾燥させる。 |
|
余ったアカモクは、湯がいて頂く。
秋田では、ギバサと呼ばれ、丼などに使われる。
まずは、さっと湯に通したら、冷めないうちに包丁で細かく叩く。
味付けなし。アカモクが本来もつ塩気で、
城島「トロッとしてて、いい塩梅!」
松岡「一番簡単に採れるのにこんなに旨いんだね」
アカモクは旨いだけじゃない。 |
|
広い表面積で多くの風を受け、乾けば表面に塩の結晶が。
これを表面の塩を溶かすように、再び海水へ。と、たった1回で
城島「結構、(海水の)塩の香りが強くなってきたな」
色だけでなく、アカモクのミネラル成分も溶け出している。
日のあるうちに、この作業を繰り返し、藻塩作りは2日目。と、
城島「これも干したら美味しいのよ」 |
|
城島が持ってきたのは、おなじみ、ヌタウナギ。
仕掛けを落とすたびに入る、
島の周りどこにでもいる、ヌルヌルの深海魚。
それを、秋田では保存食にするということで、
貴重な食料、本場で加工の仕方を学んだ。
それ以来、仕掛けに入るたびに、
少しずつ干して焼いて、食べていた。 |
|
しかし、蛇も手掴みするほどの島の絶対王者・達也は、
なぜか、ウナギ系にはめっぽう弱い。
ヌタウナギも例外ではなく、この日、達也は仕事にならず。
結局、城島と松岡で作業を繰り返し、3日目。
これが、漬け込み10回目。
桶いっぱいだった海水は、アカモクの力で3分の1ほどに。 |
|
色は飴色になり、塩分を濃縮する過程でミネラルだけでなく、
松岡「(味は)ちょっとエグ味があるね」
アカモクの雑味も滲み出していた。
しかし、こんな時もアカモクがまた役に立つ。
使い終わったアカモクを、真っ黒になるまで焼く。
これを塩分が濃縮した海水へ入れると、
炭となったアカモクが苦みを取り、まろやかな味に仕上げてくれる。 |
|
あとは、炭を取り除いて水分を飛ばすだけ。
そこで、アカモクを焼き過ぎない程度に網焼きし、
黒くなったら、石で叩いて粉末状に。
こうすることで表面積が増え、苦みを吸着しやすくなる。
これを海水に入れて30分吸着させたら、取り除く。
浜で拾い、3日使い続けたアカモクは、これが最後の仕事。 |
|
松岡「煮詰めていこうか。島塩ね」
火にかければ、塩が結晶となって浮いてくる。
2時間もすると、膜が出来、塩が結晶化し始める合図。
ここからは、鍋に焦げ付かぬよう掻き混ぜていくと一気に、
城島「すごい、できたぞ!」
3日がかりで作った“島塩"。 |
|
松岡「すごい旨味が出るね。海藻の出汁も入ってるから」
すると、思いついた。
松岡「日本酒じゃないけどさ、枡のふちに塩を盛るの」
ひと摘みの塩を肴に酒を味わう、大人の男の嗜みを、
まだ酒のない無人島では、井戸水の白湯で。
藻塩をお湯と口に含めば、
城島「海藻と塩で…お吸い物。これは美味しいな」 |
|
豆と塩は揃ったが、味噌づくりには、もうひとつ必要なものが。
東アジア特有の発酵技術「麹」。
酒・酢・漬け物などの発酵を促し、
日本の食には欠かせない、カビの一種。
江戸時代、「麹衆(こうじしゅう)」が培養し、販売していたが、
明治になると、出来のいい麹の菌だけを乾燥させた「種麹(たねこうじ)」が。
今も残る6軒の種麹屋が、その菌を守り続けている。
つまり、麹の素はもらうしかない。 |
|
そこで、城島が訪ねたのが福島県、磐梯山(ばんだいさん)の麓・会津坂下町(ばんげまち)。
江戸の頃より、200年以上、手作りで醤油だけでなく、
味噌も作り続けている「八二(はちに)醸造」。
ここで8年前、達也が醤油作りを学んでいた。
その時に教えて頂いた8代目・高久さんに、種麹を分けて頂く。
まずは島の豆を8代目はどう見るか。 |
|
ハマエンドウとハマナタマメ、どちらも微妙な味としつつも、
高久さん「味噌は豆と塩と麹のバランス。
麹作りが成功すれば、なんとか発酵はする」
そのために、必要な技術を教えて頂く。
8代目のご主人は、米麹を使った米味噌を作っている。
米なら毎年育てる新男米を使えば、米麹ができる。 |
|
まずは、米をかために蒸したら、大きく拡げ、
会津の冬の冷たい空気で、一気に冷ましていく。
そこに、味噌を発酵させるカビ・麹菌を乾燥させた「種麹」を
ムラなく米に撒くのだが、そのための知恵が。
“種切り"という、木箱に入れた米に種麹を付ける作業。
そして、その米を揉む“床揉み"で、
一粒一粒、米全体に種麹を馴染ませる。 |
|
これを拡げた米に撒いていく。
粉のまま撒くよりもムラになりにくい。
そして、この米を、麹菌を発酵させるための部屋「麹室」へ。
部屋の中は二重扉で35℃を保っている。
ここまで温度を管理する理由は、
高久さん「温度が下がったら麹菌が発酵しない」
とくに、菌が一番活発になる最初の12時間が勝負。 |
|
福島DASH村でも、そうだった。
温度が低いと麹菌は働かず、
高すぎると麹菌が死んで、別のカビが繁殖する。
上手くいけば、12時間で米全体に白っぽく浸透し、
48時間経てば麹菌が繁殖、米の周りを覆う。
この繭のような状態が、米麹ができた証。 |
|
城島「(米麹一口食べて)甘いですね」
甘い程、分解が進んだ証拠。
高久さん「いい麹が出来れば味噌作りの7~8割は成功」
麹を発酵させるため、温度を一定に保つ部屋。
似た環境を無人島で見つけねば。
城島は、島の北側に心当たりがあった。 |
|
そこは、岩盤に波の浸食でできた穴がいくつも。
中には、人が入れる洞窟もあった。
城島「中あったかいわ。風も入ってけえへんし」
空気の出入りが少ないため、温度が一定。
古くは、食料の貯蔵や酒の熟成にも使われた。
しかも、ここは作業ができる浜もある。 |
|
城島「火焚いて温めて温度をキープしよう」
というのも、麹室は保温性の高いレンガ作り。
ストーブを焚くことで、温度を一定に保つ。
そこで、広島で学んだ方法で。
江戸時代から続く、天然の岩盤を利用した石風呂。
中で火を焚き、一度、岩盤全体を温めれば、
熱気はこもり、12時間冷めることはない。 |
|
とはいえ、ここはあまりにもすき間が多い。
そこで、足場丸太を骨組みにし、番線で固定、
そこに、舟屋作りで余ったすだれ、
集落跡で見つけたトタンを組み合わせ、
熱を逃がさず、風も通さぬよう、
高さ4m、重さ50kgの洞窟のフタを。
さらに、海岸の防風林としても植えられる、
マサキの枝ですき間を埋める。 |
|
燃料は、拾い集めた流木。
全体が温まるよう、満遍なく並べたら火を焚く。
炎の熱気を岩盤が奥深くまで吸収することで、
簡単には冷めなくなる。
そして、次第に炎は高く、温度も上がり、1時間。
城島「中の温度がどれくらいになってるかな」 |
|
適温は、35℃前後だが、
城島「40℃近くなってる。上の方はもっと熱いわ」
というのも、この洞窟は、奥に向かって上り坂。
中で火を焚けば、熱気は上昇し、常に奥に溜まる。
つまり、これならば、出入り口を確保したまま
城島「奥はかなり温度が保たれるわ」 |
|
では、この洞窟を室に麹作り開始。
まずは、毎年育てている新男米を蒸して人肌程度まで冷ましたら、
そこに、蔵元8代目に頂いた麹の種をまぶして、
城島「ダマにならんように満遍なく、偏らんように混ぜる」
混ぜムラで、発酵の進みにもムラが出る。
隈なく行き渡ったら、これを洞窟の奥へ。 |
|
だが、この日の気温は5℃。
米の準備をする間に、温度が下がり、室は30℃に。
25℃よりも低いと麹菌は働かない。しかも、
城島「(洞窟の上部から)煙が抜けていってるわ」
塞ぎようのないすき間から、熱気が逃げる。
でも麹菌は、もう動き出している。
出来を決める勝負の12時間。 |
|
ならば、ひたすら火を焚くしかない。
しかし、炊きすぎると温度が上がり、
城島「40℃、熱すぎる」
40℃を越えれば、麹菌が死滅する恐れも。
そんな時は、冬の冷気を洞窟内に送り込み、温度を下げる。
と今度は、空気を入れすぎて、
城島「あかん30℃、温度調整が難しいな…」 |
|
一人、洞窟での作業、次第に口数が減り、
もはや、肌感覚で大体の温度もわかるようになったが、
城島「夜になって冷えてきたから温度が下がるなあ」
日が落ちると、せっかく掴んだ火加減が振り出しに。
冷え込みに合わせて、火の強さと位置を調整し続けるしかない。
城島「これはもう自分との戦いやな」 |
|
火加減に感覚を研ぎすまし、気が付けば深夜3時、
火を焚いて11時間。麹の具合を見てみると、
城島「パラパラで甘い香り。麹菌が浸透した気がする」。
12時間前、新男米を覆っていた麹菌が、米全体に浸透。
城島「大事な最初の12時間の峠は乗り切った」
これで、ある程度の温度を保てば麹は自力で発酵する。 |
|
ふと周りを見渡せば、たいまつ以外に灯りはない。
城島「こんな綺麗なんやな、島の夜空って」
空には北斗七星、そして、海にも、
城島「あれ?なんか海の中で光ってる」
調べてみると、夜の波に刺激されて発光する“夜光虫"。
愛知県・三河湾では、海を埋め尽くすほどに打ち寄せることも。 |
|
と、薪に紛れて、手紙が添えられた竹筒が。
城島「“しげちゃん!おべんとう食べてがんばって!母より"」
それは、松岡からのささやかな差し入れ。
生放送で、東京に戻る前、島の食材で弁当を作り、
薪の中に紛れ込ませていた。
中身はサザエなど貝類に、ユリ根とキクラゲ。
サザエは、タンパク質と筋肉疲労がとれるタウリンが豊富。 |
|
ユリ根は、DASH島に生えるコオニユリの根。
高級食材として知られ、茶碗蒸しやおせち料理にも使われる。
そして、森で見つけた天然のキクラゲも水で戻し、
茹でたユリ根と椿油炒めで。
城島「料亭に出てきてもおかしくないで。元気出てきた」
米麹ができるまで、あと30時間。 |
|
室の中と外、両方の温度を感じられる入り口で仮眠しながら。
寝ては火を焚き、冷えを感じたら目を覚まし、
温まったら目を閉じる。
そして、夜が明け、
城島「丸2日かかるって大変やな」
しかし、この日、民謡番組の予定が入っていた。 |
|
そこで、城島に一晩、付き添っていたAD足立に麹を託す。
しかし、その難しさをすぐに痛感した。
峠を越えても、温度を上げ過ぎれば、麹菌が死んでしまう。
温度を下げ過ぎても、麹菌は死ぬ。
AD足立、それだけは避けなければ。
そして、さらなる問題が背後から迫っていた。 |
|
足立「めっちゃ海の水近いやん!」
実は、この日は大潮。前日までは低かった海面も、
夜が近づくにつれ、徐々に高くなり、
このままでは、室の中に海水が入ってきてしまう。
そこで、即席の堤防を築いて海水をせき止める。
人力で築いた堤防、しばらくこれで持ち堪えるしかない。 |
|
そして、2日目の朝。
民謡番組の収録を終えた城島が戻ってきた。
麹が発酵しきるまで、あと10時間。
火は落ち着き、麹の状態も安定している。
そこで、腹ごしらえに、島ではおなじみのカメノテを。 |
|
そうする間に、火を焚いて、48時間。
麹菌が、新男米に徐々に根付き、繁殖を続け、
表面は繭のような状態に。そして、味も
城島「うん、甘い。これこれ!“麹"完成!」
丸2日がかりの、米麹。
DASH島にあるもので、味噌を作るための全ての材料が揃った。 |
|
ここからの作業は、福島DASH村で学んていた。
まずは、柔らかく煮込んだ豆を潰す。
そこに米麹を混ぜ、最後に塩。
だが、ひとつ気がかりが。
水に浸け続けたが、未だ膨らまぬ豆、ハマエンドウ。
そこで、木槌で叩いて硬い皮を砕き、
城島「これで煮たら柔らかくなるんちゃう?」 |
|
では、大きく火の通りにくいハマナタマメから鍋へ。
少し待ったら、砕いたハマエンドウを煮込んでいく。
城島「指で潰れるくらいまで柔らかく」
煮上がれば、仕込みへ。
その時に欠かせないのが、福島DASH村でも使った木桶。
木が自然に水分を調整し、
使い込むほど良い菌が棲み着き、発酵が促される。 |
|
そんな木桶、民家跡に心当たりが。
少し壊れてはいるが、サイズも丁度いいのを見つけた。
番線ですき間を締めて、長年、放置された汚れを水で
根こそぎ落とし、熱湯で殺菌する。
さらに、熱した焼き石を入れれば、お湯は一気に沸騰。
木桶の雑菌を、完全に殺すことができる。 |
|
そして、煮込み中の豆、指で潰れれば茹で上がりの目安だが、
あの頑固なハマエンドウも、
城島「潰れた!柔らかくなってるやん」
ならば、ペースト状にして米麹を加えていく。
カビの一種・麹菌が、豆のタンパク質を分解し、
味噌特有のコクと旨みを生み出す。
一般的には、豆と同じ量を混ぜるが、
城島「豆にコクがないから麹の甘みでカバーしよう」 |
|
そこで、豆4に対し、麹6の割合に。これでカサも増す。
発酵の差ができぬよう、ムラなく混ぜたら、
味を付けるだけでなく、雑菌の繁殖も抑えてくれる藻塩を。
これは、全体の1割程。
味が均一になるよう、よく混ぜれば、
城島「麹が効いてて、藻塩の旨味も感じる」 |
|
桶に殺菌した布を敷き、これを仕込んでいく。
そのやり方も、福島DASH村で学んでいた。
味噌作りの天敵は、カビ。
カビにも、麹のように発酵を促す良いヤツと、
風味を損なう黒カビなどの悪いヤツが。
悪いカビ菌は、味噌ダネに入った空気にも潜んでいる。
そこで、味噌ダネを桶に投げつけ、空気ごと抜く。 |
|
硬いDASH島の味噌は、力技で押し込み、
城島「よし、仕込み完成。どんな味噌になるか楽しみや」
これが、味噌になるには、1年ほど熟成。
通常は温度が変わらない、蔵などの冷暗所で熟成させる。
そこで、舟屋の中でも日も当たらず、風もしのげる隅っこに。
しかし、3か月たった、ある日のこと。 |
|
城島「カビ生えてる!」
手作りの舟屋、そこかしこから、すき間風が入ったせいか、
春になり、気温と湿度が上昇。
カビが好む環境となってしまった可能性が。
だが、生えたのは表面だけ、削り取れば問題ない。
これも福島DASH村で学んだこと。 |
|
味噌も1割ほど削ってしまったが、
二度とカビが生えぬよう、木桶のカビを洗い落とす。
さらに、古くから使われる生薬の一種・ビワの葉。
燻して出る煙には、殺菌作用があるとも。
そこで、葉を燻した煙を10分、木桶に籠らせる。
そして、殺菌効果があるツワブキの葉を敷いたら、
藻塩でフタをし、カビの繁殖を防ぐ。
ここから発酵が順調に進めば、完成まで10か月ほど。 |
|
そして、今年の2月。待望の時を迎えた。
城島「最初(材料集め)から2年」
味噌の完成は、メンバーと一緒に。と、
10か月前は白かった、味噌を包む布が茶色っぽく。そして中身も、
松岡「赤味噌だ」
しかも、味噌が発酵する際に染み出すエキス“たまり"も。
旨味が凝縮し、これが醤油の元となった。 |
|
そこで、旨味が凝縮したたまりを、味噌に混ぜ戻す。
10か月前に味を見たときには、
発酵前で、素材の味がバラバラ。それが、10か月で、
城島「味が丸くになった」
達也「大豆じゃないから濃いね」
長瀬「島で出来る味噌がこれってことだね」
少々、塩気は強いが、その分、少量でも味がつく。 |
|
ならば、この「島味噌」で、味噌汁を。
味噌汁は、800年程前から食べられている、日本古来の健康食。
魚介や野菜など、豊富な具と味噌の栄養が同時に摂れ、
体も温まる、開拓にもってこいの料理。
城島が作った味噌、入れる具も城島の好物を。
島の定番、カメノテ、ムラサキガイで出汁を取る。 |
|
では、魚介から取った出汁に島味噌を溶く。
思えば始まりは、2年前。
材料を集め、夜を徹しての火の番で、
やっと出来上がった味噌の味。
美味くないはずがない…が、
太一「んー、なんだろう…味噌汁とは違うんだよなあ」
松岡「塩気が強くなってきちゃってる」 |
|
おそらく、原因はカビ防止にとたっぷり入れた藻塩。
これでは、味噌というより豆の塩漬け。
松岡「これは(味噌汁というより)島汁…城島汁だ」
太一「しげる汁にしよう」
長瀬「“しげる"でいいんじゃない」
つまり、2年がかりで出来たのは、味噌っぽい調味料。
しかし、同時に美味い塩もでき、DASH島に初めての調味料が。 |
|
|
|