2017年5月28日 放送内容グリル厄介~どう猛な見えざる怪獣~

全国にいる日本本来の生き物を脅かす、2000種以上の外来種。
この、厄介だが罪のない命を、人だけが持つ料理という力で、
美味しく頂ければ、徐々に数が減っていき、日本本来の生き物が
棲みやすい自然が戻ってくるのでは?
今回、達也と太一がやってきたのは、千葉県最大の印旛沼(いんばぬま)。
古くからヘラブナやモツゴなど、淡水魚の漁が盛んで、
成田山新勝寺参道名物の佃煮に使われてきた。
江戸時代から人々の生活を支える、大事な生態系だが、
加藤さん「流れが緩やかな場所には厄介な外来種が棲みつきやすい」
そう話すのは、静岡大学で外来種を研究する加藤英明さん。
そして、印旛沼に棲みついた厄介なヤツというのが、
太一「あ!“カミツキガメ"って書いてある」
沼のふもとに立てられた看板には、“危険!カミツキガメ注意!"の文字。
カミツキガメは、北アメリカ原産。
1960年代にペットとして輸入され、子供のころは小さくて可愛いが、
数年で約50cmまで成長!
さらに厄介なのが、その名の通り、噛みつかれれば、
強靭な力で指を噛み切られる恐れも!
そのため、攻撃的で飼いきれずに捨てられて繁殖。
各地に広がり、生態系の破壊も危ぶまれている。しかも、
加藤さん「この一帯(印旛沼)だけで推定1万6000匹いる」
ならば、TOKIOが天敵になるしかない!
さっそく、捕獲するべくやってきたのは、近くに住宅もある、
印旛沼から繋がった川沿いの田んぼ。
加藤さん「繁殖期は1kmくらいの範囲を移動する」
カミツキガメは5月~9月が産卵期。
卵や子亀が魚に食べられないよう、沼から離れた田んぼ周辺に産卵。
今は産卵を控え、気が荒くなったヤツが水路に。
加藤さん「夜行性なので(水路の)横穴に入り込んでる可能性がある」
だが、その探し方は、
加藤さん「手を(水路に)入れて探る」
しかし、むやみに探ると噛みつかれる恐れが。そのため、
加藤さん「カミツキガメらしき甲羅に触ったら、進行方向を見極めて、
尻尾を掴んで捕まえる」
カミツキガメはバックできない。なので、動いた方向の反対側にある
尻尾を掴み、持ち上げれば、噛みつかれない…はず。
とはいえ、もしもの時のために、用意したのが、
以前、マグロ解体工場でも指を守ってくれた、鉄製の手袋。
ステンレスワイヤーで大事な指先を守る。
では、この安全な手袋を装着して捕獲開始!
まずは、カミツキガメが好むという水草が多い水路を捜索。
と、何かが逃げた気配が…カミツキガメか?
さらに、逃げた先の細い水路に、達也が怪しい横穴を発見。
加藤さん「呼吸をしようと淵の方に出てくる時もある」
しかし、そこには何かがいる様子はない。
我々の気配を察知し逃げ出したか。と、
達也「石?亀っぽくもあるけど…」
穴のすぐ隣で、達也の手が何か硬いものに触れた、そして!
達也「いた!」
カミツキガメで間違いない!
ヤツは、バックはできないが前に進む力は強い。
そして、格闘すること数分、
達也「よっしゃー!捕まえた!」
尻尾を掴んで引きずり出したカミツキガメはおよそ40cm!
加藤さん「できるだけ体から離した方がいい」
近づけば厄介な噛みつき攻撃が。
すると専門家・加藤さんは素手で、立て続けに捕獲していく。
そして、尻尾を掴んだだけで分かった、
加藤さん「これがオスで、こっちがメス」
見分け方は肛門器の位置。
体に近いのがメス、離れているのがオス。
さらに、加藤さんが捕まえたのが、
加藤さん「去年、生まれた赤ちゃん」
それは、手のひらに乗るほどの小ささ。
太一「これがあんなに大きくなるの!?」
最終的に罠も使って、今日一日で捕まえたのは、試食には十分な15匹。
では確かめたい、こいつらを美味しく頂けるか?
やってきたのは、東京・銀座京橋。
ここに、世界が認めたシェフが。
イタリア料理「リストランテ・フィオレンツァ」のシェフ・橋本直樹。
本場イタリアのお店でも働き、各地の産地を訪ねて食材を集め、
イタリアンの伝統技法と日本人ならではの手法を融合、
本場の人の舌をも虜にした。
シンプルだが素材の旨みを限界まで引き出した料理が、人気を集めている。
果たして、カミツキガメは料理になるのか?
橋本シェフ「昔はカメ料理というのがあった」
地中海に面したイタリアでは、以前、ウミガメの料理が食べられていた。
しかし、カミツキガメを前に一流シェフも、
橋本シェフ「海産物のような…獣のような…」
オリーブオイルにニンニク、生クリームにバター、
調理法が豊富なイタリアンの技法で、この北アメリカ原産の
厄介者を美味しい料理に!
まず、甲羅や胴体を切り分け、
橋本シェフ「意外と肉がついてますね」
加藤さん「きれいな赤身」
太一「なんか、ささ身肉みたい!」
橋本シェフ「脂が少ないキジとか赤身の鶏肉に似てる」
しかし、気になるのは、
橋本シェフ「この強靭な筋肉の繊維。硬そうですね」
そこで、これを柔らかくする調理法が、
橋本シェフ「煮込むことによって(筋繊維を)ほぐす」
イタリアでもよく食べられるキジやウサギなどの野生動物は、
煮込んで柔らかくするのが定番。
そこで、肉を茹でてみると、大量のアクが。
橋本シェフ「肉に水分が多い。これ(アク)が臭いの元かな」
そして、数分茹でた肉を味見してみると、
橋本シェフ「少し匂いは残ってるが、もっと煮込めば消えるはず。
筋肉の1本1本が太いから肉はやっぱり硬い」
素早い動きを支える強靭な筋肉。
それを料理に生かしたい。
橋本シェフが学んだトスカーナ州は、イタリアで最も肉を食べる地域。
野生動物の癖ある肉を様々な方法で魅力へと変えてきた。
その培った技法で、カミツキガメをどんな料理に仕上げるのか?
そして、出来上がった一品目が、
橋本シェフ「“カミツキガメのソプレッサータ"」
イタリアの前菜、サラミの一種。
通常は豚の首から上の肉で作る料理だが、
橋本シェフ「煮込んだら、豚のこめかみ肉によく似ていた」
まずは、肉を十分に茹で、そこへ、臭いを取るため、
ローズマリーとローリエ、粒胡椒、そして、白ワインを加える。
肉は煮込めば煮込むほど、アクとともに臭みが抜ける。
硬かった肉が手でほぐせるようになったら、ニンニクと玉ねぎを
刻んだものと、先ほどの煮汁を合わせて煮詰める。
さらに、その風味で爽やかさを生み出すイタリアンパセリ。
冷ましたらラップでぐるぐる巻きに。
カミツキガメの肉から出たコラーゲンで筋繊維が一体化する。
それを冷蔵庫で冷やしながら固めて完成。
では、罪はないが厄介者、その命を頂きます。
太一「美味しい!噛むと味がしみ出てくる」
達也「食感が強いコンビーフみたい」
そして、二品目は、
橋本シェフ「“カミツキガメのジュレ"です」
実はこれ、作る予定ではなかったが、
橋本シェフ「煮汁を味見したら美味しかったので急きょ作った」
ソプレッサータを作った際に出た煮汁を冷蔵庫で冷やし、固めた。
橋本シェフ「思いのほかコラーゲンが豊富だった」
太一「ほんといいダシ出てる!」
味は濃厚だが、
橋本シェフ「味付けは塩だけです」
そして、三品目は、
橋本シェフ「“カミツキガメの生ハム スーゴのパスタ"」
岩塩、砂糖、それに風味づけのコショウ、これらを肉に丁寧に揉み込む。
塩は余分な水分を臭みとともに排出する。
寝かせた後、さっと水洗いし、通常は1ヶ月自然乾燥させるが、
オーブンで即席も。
橋本シェフ「生ハムにするとタンパク質がアミノ酸に変化する」
アミノ酸は旨み成分。さらに、乾燥させるとカットしやすく、
筋繊維が気にならなくなる。
フィレイヤと呼ばれる南イタリアのパスタと合わせて、
太一「濃い味にトマトソースがめちゃくちゃ合う!」
ちなみに、これをお店で出すなら、お値段は?
ゴチ歴19年の太一が予想。
太一「2千円…いや、2200円!」
果たして、正解は?
橋本シェフ「2200円です」
今や人気のジビエも、その独特の臭いと硬さを克服し、旨みに変えてきた。
そして、今日、人間だけが持つ料理の力で、厄介者をありがたく。
太一「臭いと硬さを解消すれば、美味しく頂けます!ぜひ」
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