2017年9月24日 放送内容グリル厄介 ~沖縄県 食物連鎖の頂点~

今回、太一がやってきたのは、沖縄県。
太一「そんなに沖縄には外来種が増えてるんですか?」
加藤「いろんな(外来種の)生き物が身近の所にもいる」
そう言うのは、静岡大学で外来種を研究している加藤英明。
と、道の脇の水路に、
加藤「小さい魚が泳いでますよ!」
いたのは、北米原産の“カダヤシ"。
プランクトンから稚魚まで食べる雑食のうえに、攻撃的。
その名の由来は“蚊を絶やす"から。
蚊の子供であるボウフラ駆除に輸入されたが、
生息場所やエサが重なるメダカが減る原因になってしまった。
さらに、木の根元には、
加藤「これ外来種の“アフリカマイマイ"」
東アフリカ原産、20cmにもなる世界最大級のカタツムリ。
食用に輸入されたが、捨てられ繁殖。
柔らかい葉を好み、農業被害があるだけでなく、
殻を成長させるカルシウムを摂るために、コンクリートまで食べてしまう。
そして、池にも、
加藤「アフリカの魚“ティラピア"がいますね」
食用に輸入されたが普及せず、放流され繁殖。
口に入るものは何でも食べる雑食で、エサが無ければ共食いするほど凶暴。
季節を問わず、2000個ほどを産卵し、定着すれば生態系を完全に破壊する。
そんな外来種だらけの沖縄の状況に、太一は助っ人を呼んでいた。
岡村「来たぜ!」
ナインティナイン・岡村隆史!
太一とは、「ぐるナイ」を通して19年来の親友。
生き物と沖縄を愛する男でもある。
そして、今回捕獲する厄介な生き物は、
加藤「台湾からやって来た“タイワンスジオ"」
台湾原産、タイワンスジオ。
革製品の材料に持ち込まれたものが野生化。
沖縄では、猛毒のハブよりも厄介と言われ、
環境省が懸賞金を設け、捕獲に乗り出していた。
最大2mを超え、成人男性の腕ほどの太さな上、食欲も旺盛。
しかも、ハブのような待ち伏せではなく、エサを求めて動き回るため、捕獲が困難。
ハトやウサギくらいなら、一飲みにしてしまう。
つまり、沖縄で食物連鎖の頂点に君臨。
加藤「生息域を拡げて日本の固有種を食べてしまう恐れがある」
タイワンスジオは捕食のため昼間に行動する。
その捕まえ方は、専門家いわく
加藤「腕を噛ませて捕まえる!噛まれたらチャンス!」
太一「確認なんですけど…毒はないんですよね?」
加藤「ないと、言われている
岡村「言われている?ホンマに大丈夫なん!?」
少々不安だが、捜索開始へ。
加藤「実の生っている木の上に潜んでいる場合もある」
マレー半島原産・モモタマナ。果肉は鳥やコウモリの大好物。
種の中の「仁」と呼ばれる部分は、生でもローストでも食べられる。
タイワンスジオは、そんな木の実を食べに来る鳥たちを狙う。
加藤「日当たりの良い森の淵には木の実がたくさんある」
そして、忘れてはならない
太一「ハブ注意の看板あるじゃん!」
噛まれると毒で血が止まらなくなり、死に至ることも。
生息地域を徐々に拡げているが、夜行性。
日中は、物陰や藪の中でじっとしている。
加藤「ハブがいるってことはいいポイントです」
タイワンスジオもハブも、森の淵に潜んでいる。道なき道を進むと
岡村「こんだけ草が高いとヘビがおっても分からんよね」
そして、点在する水辺にも、
加藤「水を飲みに来るネズミや鳥を襲ったりします」
と、そこには卵らしきものが。
加藤「“シロアゴガエル"の卵ですね」
これも東南アジア原産の外来種。
米軍の物資に紛れ込んできたと考えられている。
昆虫など、在来のカエルのエサも食べ尽くす恐れがある。
加藤「このオタマジャクシを狙って来た哺乳類や鳥類を食べる」
と、太一が繁みの奥に怪しい隙間が。
太一「あそこに何かいそう!」
というのも、自分で体温調節できないヘビは、
30℃以上の日は、穴の中などで涼んでいる。
太一「(穴の中に)アフリカマイマイがいる!」
それは湿度が高い証拠、ヘビもいる可能性が高い。さらに、
加藤「何かいた形跡がありますね。穴の中がキレイです」
というのも、使っていない古い巣穴なら、中に枝葉が溜まっているはず。
加藤「8月は卵が孵化するタイミング」
タイワンスジオの卵は、鶏の卵ほどの大きさ。
孵った時点で50cmと、他のヘビよりはるかにデカい。
と、太一が木の上に見つけた。
加藤「これは“キノボリトカゲ"。在来種です」
外来種の昆虫も食べることから、生態系の門番の役割を担う。
縄張り意識が強く、腕立て伏せのような動きで威嚇する。
ヘビ捕獲のための予行演習に捕まえてみるが、
岡村「痛い痛い!めっちゃ噛んでますやん!」
加藤「最大の武器を使ってる時は無防備!噛まれたらチャンス」
そして、手掛かりを求めて地元の人に聞き込み。すると、
地元の方「古い洗濯機の中で(タイワンスジオを)見た」
そこで、その洗濯機の扉を恐る恐る開けてみると、
岡村「びっくりした!ネズミおった!」
体型から推測するに、東南アジア原産・クマネズミ。
人間と同時代に大陸から渡ったとされる。
ねずみ算式に増え、ダニやノミ、病原菌をまき散らす。
太一「ネズミがいるということは(タイワンスジオの)住処も近い」
そこで、道路脇を探している時だった。
3人の目の前を何かが横切った!
加藤「マングース!マングース!」
それは、東南アジア原産の哺乳類。
ハブの駆除目的で放されたが、ハブに食べられる事態も。
しかし、驚異的な繁殖力でハブより増加。
雑食で貴重な固有種を食べるだけでなく、農業被害も。
ハブに食べられるということは、タイワンスジオの餌食にもなる。
つまり、周辺にタイワンスジオが潜んでいてもおかしくない。
太一「怪しくないですか?あの辺」
気になったのは、路肩に土嚢袋がいくつも置かれた場所。
その隙間は湿っていて、いかにもタイワンスジオが好みそうだが、
加藤「何かが出入りした跡がありますね」
と、ブロックの隙間にヘビが!
岡村が、手掴みでなんとか捕獲!…が、
加藤「これはタイワンスジオじゃなく、在来種の“アカマタ"」
ヘビの中でトップクラスの気性の荒さ。
毒はなく、大きさもタイワンスジオに及ばないが、肉食でハブも襲う。
しかし、日本の固有種ということで、リリースしなくては。
加藤「雲が厚くなってきました。ここで雨が降ってくれるといい」
雨が降れば、湿った環境を好むタイワンスジオが動き回り、見つけやすくなる。
そこで、湿った場所を重点的に探す。
と、溜め池の脇の穴に、
岡村「ヘビおった!なんか色が違う!」
加藤「これは“ガラスヒバァ"という在来種です」
奥の牙に毒があるため、深く噛まれると死に至る可能性も。
カラスのような黒さと、沖縄方言のヘビ「ヒバァ」が名前の由来となった固有種。
と、今度は岡村が、
岡村「(ヘビが)身を隠せそうな小屋がある」
その側には、脱皮したヘビの皮も。
加藤「このウロコの大きさはタイワンスジオの可能性が高い」
確かに、ハブの抜け殻にしてはウロコが大きい。しかも、
加藤「(皮が)雨で汚れたりしてないから、まだ脱皮して間もない」
そこで、所有者の許可を頂き、近くの小屋の中を捜索。
と、岡村がとぐろを巻いたヘビを発見する!
しかし、素早い動きで小屋の外へ!
太一と岡村が追いかける!
息の合った連携で捕まえたが、
加藤「タイワンスジオじゃない。アカマタ」
またも、在来種。
加藤「もうすぐ(タイワンスジオが)巣に戻る時間」
タイワンスジオは昼行性、タイムリミットは日没までの1時間。
そこで、タイワンスジオの罠を設置。
上手くいけば、翌朝にもタイワンスジオが入る可能性が。
おびき寄せるエサは、タイワンスジオの好物のネズミだが、
網に囲まれ、食べられることはない。
それを、ヘビが好む小屋の物陰に設置。
他にも、ネズミがいた洗濯機の脇に一つ。
そして、ガラスヒバァがいた溜め池脇の木陰にも。
翌日、岡村は名古屋。太一は早朝に赤坂入り。
多忙な2人の代わりに、仕掛けの回収を買って出たのは、
沖縄出身・地元を愛する、AD盛。
まずは、洗濯機の脇に設置した罠を確認。
AD盛「うわあ!なんかいる…」
中にいたのは、タイワンスジオ!
加藤「尻尾を振って注意をそらせようとしてますね」
ヘビは苦手だが、愛する地元・沖縄のため、必死に取り出そうとする盛…
だが、なかなか掴むことができない。
加藤「早く!両手で掴んで!逃げられたら終わりだから!」
AD盛「はい…!りょう、りょうて…で!あー、すいません!」
盛は、テンパると謝るクセがあった。
苦戦しながらも、何とか取り出したヘビの体長は150cm。
AD盛「ハブみたいな2本の牙はないですね」
毒の無いヘビは牙を持たず、返しの付いたノコギリ状の小さな歯で獲物を捕らえる。
と、一瞬の隙を突き、盛の指に噛み付くタイワンスジオ。
AD盛「わー!ちょっと…!ごめんなさい…本当すいません!」
加藤「とぐろ巻かせて!そうしたら大人しくなるから」
巣穴の中で寝たり、休むときの体勢にすることで安心する。
そして、噛みつこうとする相手と格闘すること数分。
AD盛「すいません、お待たせしました」
とぐろを巻かせて、大人しくさせたところで、捕獲完了。
これを東京に持ち帰って、美味しく頂く。
そして、東京・中央区には、再びあの3人が。
加藤「(捕獲できたのは)1匹だけでした」
かといって、数が減ってきたわけではない。
今年の沖縄は、深刻な雨不足。
乾燥を嫌うタイワンスジオは、巣穴にこもってしまった。
大物ほどエサの食い貯めが出来るため、長い間、穴から出てこず。
しかし、美味しく頂ければ数は減る。
そこで、太一は腕を見込んだ、馴染みのシェフの元へ。
イタリア料理「リストランテ・フィオレンツァ」シェフ・橋本直樹。
腕を磨いたイタリア・トスカーナ州だけでなく、
各地で様々な食材を学び、その伝統と、日本人ならではの味覚を融合。
本場のイタリア人をも唸らせた。
しかも、前回、同じく厄介者の爬虫類・カミツキガメを、
美味しいジュレやパスタに生まれ変わらせた。しかし、
太一「今までヘビは料理したことありますか?」
橋本シェフ「あるわけないじゃないですか」
橋本シェフが学んだトスカーナ州は、イタリアで最も肉を食べる地域。
様々な野生動物を調理するのだが、ヘビはしない。
ともあれ、まずはタイワンスジオの皮を剥いでいく。
すると、肉を見たシェフは、
橋本シェフ「鶏の首の部分“セセリ"に似てます」
脂が少なく、クセもなさそうだが、
橋本シェフ「かなり強靭な筋があるかもしれない」
さらに、厄介なのは筋以外にも、
橋本シェフ「ものすごい小骨です。骨切りが通用するかどうか」
続いて、肉質と味を確かめるために茹でてみると…
橋本シェフ「めちゃ硬いです。やっぱり鶏肉に近い」
では、台湾からやってきた厄介者を調理開始。
橋本シェフ「肉にクセがないので優しい味付けに」
そして、出来上がった一品目は“タイワンスジオのサラダ"。
橋本シェフ「素材の持ち味を生かしてサラダにしてみました」
イタリアでは、野生動物の硬い肉を煮込んで、柔らかくする料理が定番。
圧力鍋で20分、通常の鍋なら2~3時間も煮ると、程よく柔らかく。
その肉をほぐしたら、千切りにした野菜と混ぜる。
太一「美味しい!臭みないし、ドレッシングの酸味とよく合う」
シェリー酒を発酵させた酢とオリーブオイル、エシャロットにニンニク、
塩胡椒を加えた、シェフ・オリジナルのドレッシングが、
淡白な肉にアクセントを加える。
太一「やっぱり鶏と比べると歯ごたえは強め」
岡村「これは(食感は)ハムです」
続いて、二品目は“タイワンスジオのスープ"。
橋本シェフ「煮たらいい出汁が出たので」
サラダに使う肉を柔らかくするために、圧力鍋で煮た残り汁。
そこに、身を外した骨を戻し、再び煮る。
太一「タイワンスジオってこんなに美味しいの?ヘビ感ゼロです」
橋本シェフ「筋が多いから味が出る。香味野菜を少し加えただけ」
最後の一品は、“タイワンスジオのパストラミ"。
パストラミは、塩漬けした肉を燻製させたもの。
塩漬けにより肉が締まり、スモークすることで、熟成して味わいが深まる。
擦り潰したピンク岩塩と砂糖をまぶして、真空包装。
すると、一晩寝かせたかのように、味が熟成される。
これに、フライパンとオーブンで火を通したら、定番の桜チップでスモークする。
肉に香りが移るだけでなく、表面は香ばしく飴色に。
中は熟成し、味わいが深まる。
スモークした身をほぐし、容器に入れてパティー状に。
冷蔵庫で冷やし固めれば、完成。
太一「すごく肉を感じる。スモーキーでとても美味しい」
橋本シェフ「サンドウィッチにしても合うんですよ」
では、イタリア発祥の温かいパン・パニーニに挟んで、
太一「これが一番美味しい食べ方かも!」
世界各地の硬い肉質の動物たちも、知恵と技術で、肉の食感を楽しめる料理に。
そして、今日、人間だけが持つ料理の力で、厄介者を有り難く。
岡村「身の硬さと骨の多さを克服すれば、美味しく頂けます!ぜひ」
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