■村づくり1年目の2000年、秋。
荒地をおこしてつくった畑で、たくさんの大根、白菜が収穫できた。
この大根と白菜を使ってつくったのは、漬物。
漬物は、おいしくいただけるだけでなく、収穫できるものが少なくなる冬の保存食としても重宝される優れた食品。
DASH村で初めて挑んだ漬物づくり。いったい、どんな漬物ができたのか。


漬物とは
 漬物とは、野菜、果実、魚貝などを、塩、米ぬか、こうじ、みそ、しょうゆ、酢、酒かすなどでつくった漬床に漬けこんだ食品で、種類は様々。日本では漬床または漬液によって、塩漬、ぬか漬、こうじ漬、みそ漬、しょうゆ漬、酢漬、かす漬、からし漬などに分けられる。
漬物のできる原理は、材料の細胞機能の生活力を、食塩などの浸透圧によって脱水して失わせ、それと置き換える形で、漬液に含まれる食塩や有機酸などの成分を細胞中に浸入させて漬液の風味を与えることで、この原理により、貯蔵性も材料に付与される。
漬物は、日本では奈良時代からつくられていたといわれ、材料の味の工夫とともに、腐敗を防いでの貯蔵や、凶作時に対する備蓄を目的に発達。歴史は古い。
なお、漬物は全世界にそれぞれ文化があり、韓国のキムチ、中国のザーサイ、インドのチャツネ、欧米のピクルスなどが知られている。



■1年目のDASH村でつくった漬物

漬物づくりの名人、三瓶孝子さんの心のこもった指導のもと、室(むろ)という地中に掘った穴で冷蔵保存しておいた大根と白菜を取り出し、DASH村の漬物づくりがはじまった。

 

■漬物づくり

1)たくあん漬け

<材料>:大根(20本)、米ぬか(4升)、塩(2合)

<つくり方>
(1) 大根を干す。
(2) よく洗って葉を落とした
(3) 大根を縄でしばり、約2週間、軒先に吊るし、天日に干す。この間、低温によって大根が凍ってしまわないよう注意。




●大根を干すことによる効果
・ デンプンが糖化して甘みが増進する
・ 水分が発散して栄養分が濃縮する
・ 水分が発散するため、
  保存性がよくなる
・ 弾力性を帯び、弓形に曲がるようにな  るため漬け込みやすくなる
・ 歯切れがよくなる

●たくあんとは
干した大根をぬか漬にした漬物。
語源については、江戸時代初期に名僧とうたわれた禅僧「沢庵」の創製によるものという説、〈貯え漬(たくわえづけ)〉のなまりであるとかいう説など諸説がある。
日に干して小じわのよった程度の大根を樽に入れ、ぬかと塩で漬けこむとできあがる。




2)大根のぬか漬け

<材料>:大根、大根葉、塩 水米糠5升(9L)、塩4合(720ml)、水5合(900ml)、赤唐辛子・適量

<つくり方>
(1)ぬか床づくり
煎った米ぬかを甕に入れ、塩、唐辛子と混ぜて、ぬか床をつくる。

(2)大根をぬか床に入れる
たくあんにするには大きさが足りない小さめの大根を細長く切って、ぬか床に埋め込むようにびっしり詰め込む。

(3)漬け込み
毎日手でかき混ぜて空気を入れて手入れをしていると、最初さらさらしていたぬかは、次第に大根の水分が染み込んでしっとりとなる。また大根にもぬかと塩の奥深い味わいが染み込んでゆく。
この期間は、日々味を見る。そして、程よい漬かり具合で、取り出していただく。

●ぬかに含まれる栄養素
ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシンなどの栄養素を豊富に含む米ぬかを塩と共に漬けると、塩の排水作用で水分が抜けた分、野菜の細胞内にビタミンB1が浸透し、特に大根の場合、ビタミンB1が生の状態の何と12倍に増加。ぬか漬けにすることで、そのまま食べるよりも栄養が豊かになるのである。



3)白菜の塩漬け

材料:白菜7個、塩2合(約360g) 、赤唐辛子適量

(1)樽で塩漬けにする。
白菜を包丁で半分に割り、大きめの樽にびっしりと入れて、塩をまぶす。
塩は2合を、樽の下層に7の割合、真ん中に5の割合、上層に3の割合で入れる。このとき、塩の量が少ないと、水が上がる、つまりは塩分により野菜の中の水分が出て、塩と置き換わる状態にならない。また、塩が多すぎると、しょっぱくて食べられない。
この塩加減は、ちょうどいい具合に入れることが大切だった。

(2)漬け込み
塩漬けにした白菜の樽に、重石をのせておくと、2日目頃より水が出るようになり、樽の中には、重石の重さによってしみ出た白菜の水分が、溢れるほどに溜まる。
そして、約2週間で、白菜にほどよく塩が回り、酸味もある白菜の塩漬けのできあがり。



●漬物をうまく漬けるコツは、重石(おもし)にある。

重石は、ある程度の重量がないと、水が上がってこないため、漬物にならないが、重すぎても水が上がりすぎて味が濃くなってしまう。
この重さは、経験と勘によるものだが、DASH村では畑づくりの際に出た、持ち上げるだけで腰を痛めそうな大きな石を使用。
この重さが、たまたまよかったのか、大変おいしい白菜の塩漬けができた。

●塩の持つ生もの保存効果

 野菜の細胞は、収穫してからも呼吸活動を続けているため、放置しておくと細胞内の栄養素を消費してしまう。
そこで、塩をまぶすことにより、細胞の呼吸が停止し、細胞内には栄養素が残る。
また、生野菜に含まれる水分は腐敗菌を生み出す。そこへ塩を加えると、浸透圧で細胞に塩が溶け込み、細胞内の水分を排水、腐敗を防ぎ保存性を高める効果がある。




■なすの塩漬け
なす、塩、50ミリ程度の釘10本
 
なすのへたをとる。
甕に、なすを底から寝かせるように並べる。
塩をふる。一段なすを並べたら、たっぷりと塩をふる。そして、また、重ねるようになすを並べ、さらに、塩をふる。この繰り返しで、樽いっぱいになすを詰める。
鉄の釘10本くらいを布でくるみ、樽の真ん中あたりに入れる。
これは、なすにつやのある美しい青紫色を出すための孝子さんの知恵。鉄分の補給にもなるという。
ふたをして重石を乗せ、漬けること約1ヶ月で完成。

■きゅうりとすいかの塩漬け
きゅうり、すいかの皮、青いときの唐辛子、塩
 
きゅうりはそのまま、すいかは皮の部分を使うため、赤みと、縞模様の皮を、包丁でとる。
木の樽に、きゅうりを、底から寝かせるように並べる。そして、あいだにすいかの皮も入れる。
塩をふる。一段並べたら、たっぷりと塩をふる。そして、また、重ねるように並べ、さらに、塩をふる。この繰り返しで、樽いっぱいにきゅうりとすいかの皮を詰める。
味をひきしめるために、輪切りにした唐辛子を、中に混ぜる。
ふたをして重石を乗せ、漬けること約1ヶ月でできあがり。

■大根のぬか漬け
大根、ぬか、塩
 
ぬかをフライパンなどで、軽く煎る。
煎ったぬかを甕に入れ、塩をよく混ぜてぬか床をつくる。
大根を半分に切り、さらに細長く、1本の大根が8等分になるように切る。
ぬか床に大根を埋めるように入れ、ふたをして重石を乗せる。
日々、かき混ぜて手入れをし、味見を繰り返す。そして、好みの漬かり具合でいただく。2日くらいからでも食べられる。



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