「行け! カラクリ流しそうめん」

DASH村をいつも支えてくれていた近隣の方々は未だ自宅に戻る事が出来ず、ばらばらに暮らす状態が続いている。
今回、猪苗代で開かれるお祭りに久々にみんなが集まるということで、密かに計画した事があった。明雄さんにも内緒にしていたプロジェクトは、村で一度チャレンジしていた「流しそうめん」を集まった皆さんに振る舞う事。みんなで楽しめ、思い出に残るように、そうめんが色々な仕掛けを乗り越えていく「カラクリ」を考えた。例えばそうめんが流れる事によって鳴る風鈴やそうめんの重さで傾く鹿おどしなど。しかしどれも実現させるのが本当に難しいものだった。

例えば、竹の組み合わせが悪いとそうめんがコースアウトして落ちてしまったり、鹿おどしはそうめんを受ける位置と落とす位置とがうまい具合に調整されていないと失敗してしまう。本番直前まで成功させる事が出来なかった。
何より難しかったのは、「球道くん」。力加減や高さの調整、球道くんが投げたそうめんを受ける板の位置。これら全ての要素が合わないとうまくいかない。しかも、風の影響をもろに受けるため、微調整しても試すたびに変わってしまう。シミュレーションを重ね準備を整えたが、例え練習でうまくいっても、次にまたうまく行くとも限らず、本番に成功する保証は全くなかった。




不安なまま迎えた本番。
みんなに麺がたどり着くまでハラハラした気持ちが治まらなかった。
けれどその分、カラクリを一つクリアするにつれ、喜びが増した。無事、そうめんがみんなの所まで流れ着いた時には、うれしさと同時に安心した。試行錯誤を繰り返したカラクリ流しそうめんがなんとかうまくいったのは本当に嬉しかったけれど、何よりみんなが喜んでくれていたのが本当によかった。
前回の熱海磐梯温泉にはいけなかったので、みんなと会うのは震災があってから初めて。

あまりじっくりと話せる時間がなかったけれど、みんな元気そうだったのでよかった!
みんな一人一人が厳しい状況なのに、一番に「元気だった?」など僕の心配をしてくれた。そんな気持ちに触れて、何だか泣きそうになった。みんな優しくて、本当にタフな人ばかりだ。
今まで当たり前のように過ごして来たDASH村での日常が、今では非日常になってしまい、お世話になっている方々とは4ヵ月以上も顔を合わせる事が出来なかった。今回、久々に再会し、皆さんと一緒に何気なく過ごした日常をどんな形であれ取り戻せたらと思った。

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