明雄さんのにっぽん農業ノート

梅雨明け後の新男米の様子見に新潟県南魚沼市、鈴木清さんの棚田に訪れました。

2011年7月下旬 出穂

  • 分けつも終わり、穂が出始める時期。
  • 出穂後20日間は水分を最も必要とする時期なので、水の管理が重要。
  • 出穂し、40日前後は登熟する期間。最適登熟温度はおよそ24℃。この期間にしっかり登熟すれば良質な米が出来る。
    この時期、村では暑い日も多かったが、南魚沼市は例年の平均気温がおよそ24℃。

2011年7月の終わり ゲリラ豪雨

被害状況

  • 新潟加茂市では、72時間に623.5ミリを記録。(観測史上1位)
  • 塩沢町では、7月平年(195.9mm)の約2.5倍を越える雨が降った。
  • 三条市の五十嵐川や魚沼市の破間川など8河川が30日早朝にかけて決壊。
  • 長岡市の魚野川など4河川で堤防から水があふれた。
  • 冠水や土砂流入による水稲被害が18市町村で1万1246haに上った。
    (県内の作付面積の1割近くに被害に及ぶ)

このゲリラ豪雨で、新男米二米目は被害を受けなかったが、田んぼをお借りしている鈴木清さんのコシヒカリの4割が土砂に埋まるなどして被害を受けた。

棚田の畦が倒壊し、田んぼ上下ともに大きな被害。

上段:畦が崩れた事で水の歯止めがきかなくなり、水分管理が難しくなる。
畦シート(畦の水漏れ防止用のもの)で応急処置

下段:出穂し始めたコシヒカリが土砂に埋まる
完全に埋まってしまったものは、収穫は出来ないが、根元部分のみ土砂に埋まってしまったものは、手刈りなら収穫が可能。コンバインによる収穫は、流木などが邪魔をして難しい。

2011年10月 稲刈り

2011年度の新男米二枚目

  • どの穂も均等に実がぎっしり詰まり、害虫にやられたり、病気にかかった米が少なかった。
  • 毎年悩まされたイモチ病にもかからなかった。
  • 黒ずんだモミが少ない。
  • 南魚沼式に乾燥。
    4段式のはさ木で2週間乾燥させる

明雄さんメモ

  • 今年の新男米は、上出来だ!穂先が重く、いつも以上に頭を垂れてたな。
  • 清さんにお借りした土地は、日当り・風通し・良い土壌と三拍子揃っている。村の場合、山に囲まれてるから、風通しが悪いし、日当りも充分じゃないんだな。
  • 毎日管理出来ないし、雑草も多く生えていたけれど、あれだけ実れば立派。

稲架木(はさぎ)

  • 村では例年、一段に組んだはさ木に掛けて乾燥させていたが、南魚沼式は4段。
  • 場所を取らず効率的に乾燥させられる。
  • 風通し・日の当たりがいいので、4段でも良く乾燥する。

明雄さんメモ

  • 4段の稲架木は福島でも見た事あるが、村の近隣では1段に組むのが主流だな。村の近隣の場合、木を使って作っていたから、一段の方が作りやすいんだな。
  • 新潟の稲架木は組み立てるだけだから、手間があまりかからず簡単に出来ていい!

あんぼ

  • 新潟版おやきに似た、新潟県の主に豪雪地域に伝わる郷土料理。
  • 昔は主食にしたり、おやつ代わりに食べられていた。
  • おやきと良く似ているが、おやきが小麦粉を使うのに対し、あんぼは米粉を使用。よもぎを交ぜる事も多い。
  • 団子状にし、中に具(野沢菜、大根の菜っ葉、小豆など)を詰め、仕上げに焼く。

2011年11月 脱穀/精米

脱穀

  • 村では、足踏み脱穀機を使用していたが、今年は清さんにお借りしたコンバインで脱穀。
  • コンバインは、稲刈りから脱穀と一連の流れで一度に出来る。
  • 脱穀方法としては、足踏み脱穀機と同じ仕組み。足踏み脱穀機の回転させる部分がそのままコンバインの内部に入っているようなもの。
  • 脱穀された籾は一カ所に集められ、そのまま袋詰めが可能。
    この時点で、実の詰まった籾と藁や籾殻、そして軽い未熟な籾を選別もしてくれる。(村では唐箕で行っていた)
  • 2011年の収穫量:130kg
    ※去年とおよそ同量の収穫量

籾すり

  • 村では籾すりには、木摺臼(きずるす)を使用していたが、今回は清さんにお借りして籾すり機を利用する。
  • 回転速度の違う二つのローラーの摩擦によって籾殻を剥がし、玄米にする。籾がらは風に飛ばされ取り除かれる。
    木摺臼の場合、動かせる上臼と固定された下臼との摩擦によって籾殻を取り除く。
  • 通常、新潟県の農家の方は玄米になった米をさらに選別にかけ、JAなどに出荷。

精米

村では、水車内にあるつき臼を使用していたが、精米機を使用し精米した。

等級検査

国が検査規格を決めて、一定の基準で検査されたものは、産地と品種と等級で価格が決まる仕組みになっている。

JAしおざわ
田村 雅史さん 営農企画係長

お米の検査に携わる。今回、等級検査にてお米の見分け方や方法などを教えて頂いた。

検査の流れ

JAに搬入されて来た米を出荷前に20gのサンプルを取り、水分量を計り、目視と機械で整粒具合をWチェックする。

水分量の測定

流通するものなので、保管方法や期間が重要になる。この保管には水分量が関係する。

適量:14.5%~15.5%

過多:16%以上
味が落ち、保管中に虫カビが生えやすくなるので、搬入する事が出来ない。

不足:13%以下
味が落ちる、粒がわれやすくなる。
※15%未満だと、その分、一粒当たりの重さが減ってしまうので、一袋により多くの米が必要になる。(=収入量が減る)

整粒具合の確認

①目視
人が目で見て、整粒歩合を検査。1000粒(約20g)の玄米の中に、整った形をしている米粒(整粒)の割合を主として判定。1等米~3等米、そして規格外があり、基準の元に区分される。

等級基準

等級 整粒歩合 着色粒混入率 被害粒
1等米 70%以上 ~0.1% ~15%
2等米 60%以上 ~0.3% 15~20%
3等米 45%以上 ~0.7% 20~30%
規格外 上記規格に該当せず、異種殻粒・異物を50%以上混入しているもの

目視検査には黒い皿と白い皿を使い分ける。
黒い検査皿:くず米があるかどうかなど、お米の形を確認。
白い検査皿:米の着色具合や害虫の食害具合を確認

未熟粒
完全に成熟していない玄米(死米を省く)を指す。基準より軽微な場合は未整粒として扱う。

  • 青未熟粒
  • 白濁米

被害粒
登熟途中または、その後に損傷を受けた粒。

  • 胴割れ粒
  • 砕け粒

着色粒
カビ、菌、害虫などにより米粒の表面全体か一部が黄、茶、黒色などに変色している米粒。
玄米から精米にしても色が残るもの。
カメムシ等の食害によるお米は「着色粒」にあたり、良品が70%以上であっても1,000粒の中に1~2粒あると等級落ちになる、非常に厳しい検査。

②機械
整粒度の測定器:着色米・くず米・虫食い米などの計測を行う。

新男米二米目の結果

JAの検査によると、整粒68%の二等米。一等米にわずか2%届かず。

①栄養不足(細い、いびつな形をしている)
特に肥料を与えていない。
昨年と比べ、アイガモ農法を行っていないことにより、雑草が大量発生し、栄養を取られた。

②品種改良の途中
10年かかる品種改良の途中なので、まだ米の品種が定まっておらず、米の大きさにバラツキがでた。

明雄さんメモ

いい米を作るには、田を起こす時期から初めて、一年間みっちり手間をかけてやったほうがいい。来年は、もっと手間をかけてやって、今年の経験も活かしてもっといい米をつくりたい!