タケ(イネ目 イネ科 タケ亜科)
歴史
古くから日本に生息し、生活圏内という身近な場所で入手できる極めて利用度の高い植物であり、捨てる所がないといわれるほどさまざまな用途に使用された。しかし、高度経済成長に伴い昭和30年代以降、工場で大量生産される金属・プラスチック・ビニール製品などに取って代わってしまった。
DASH村での竹利用
ハチク(淡竹)
福岡県 八女市
恵まれた気候風土と伝統技術に育まれた八女の農業は、全国ブランドとして、茶・菊・ぶどう・いちご・キウイ等がある。竹林は2,461haと全国でも最大級の竹林面積を有している。
タケノコの生産量
1位 | 福岡県 | 13,225.8t | ※その約7割が八女市で生産される。※全国にすると2割以上 |
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2位 | 鹿児島県 | 10,791.3t | |
3位 | 熊本県 | 2,952.9t |
平成22年の統計データ(農林水産省調べ)
林業試験場や森林林業技術センター等で『竹』の研究をしていた。退職後、30年以上放置していた自宅の竹薮を整備する現役の生産者。竹林利活用アドバイザーとして全国から注目される。
定年後、野中さんの指導の元、所有していた竹山を整備し、タケノコ栽培を開始。平成16年に竹林品評会で林野庁長官賞を受賞。平成20年度には最高賞の農林水産大臣賞を受賞した。
モウソウチク(孟宗竹)
・稈長20m以上、直径10~18cm。
・中国を含むアジア大陸の東南部が代表的。
・国内で食用タケノコとして利用されているものの大部分がモウソウチク。
・材質がマタケに比べて劣り、折れやすいために繊細な工芸品などには適さない。
マダケ(真竹)
三大有用竹
タケ亜科の種は、世界で1200種とも言われ、そのうち日本には650種があるといわれる。
ハチクとマダケとモウソウチクで日本三大有用竹と呼ばれている。
節間 | 強靭さ | 直径 | 柔軟性 | タケノコ | |
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モウソウチク | 25~30cm | ○ | 10~18cm | 折れやすい | エグ味あり |
ハチク | 40cmほど | ○ | 6~10cm | 雪圧に弱い | 美味 |
マダケ | 30~50cm | ◎ | 8~12cm | 良い | 苦みがある |
竹の寿命と竹年齢の把握
竹の寿命は10~15年程だが、5年以上経つと地下茎の働きも衰え、タケノコの量や質が悪くなる。そのため、5年目の竹を毎年秋に伐採し、同じ数の若い竹を残す事でタケノコの質や量を維持している。年によって残す竹が変動すると、タケノコ発生量も変動するため、農家はタケノコが発生した年を把握する為にカラーテープやペンキで色分けし、誤伐がないようにする。
竹の生長
タケノコとして地面に出る時点で完全な節の構造が備わっており、約60ある節の数は増えることはなく、太さもそのまま。生長は40日程でストップして、所定の長さに伸びきってしまうと、後は何年たっても伸びも太りもしない。
植物において、伸長生長の速度はタケ類が群を抜く。
モウソウチクの場合、1日に1.2m伸びたという記録がある。
生長が速い理由
①生長に必要な栄養源をすべて母竹から地下茎経由で得ることができる
多くの植物は,種子に蓄えられた栄養を使い果たした後は,光合成によって自力で栄養をつくりながら生長するが、タケは周りの親竹から地下茎を通じて栄養をもらうことができるため,驚異的なスピードで生長できる。
②節のくり返しからなるタケの構造
多くの植物は、茎の先端に生長点をもち,ここで活発に細胞分裂を行って伸びるが、タケはすべての節に帯状の生長帯をもつため各々の節が同時に生長。まるで提灯を広げるように伸びる。
地下茎・芽子(がし)
地下茎とは地中に伸びる茎で、タケノコ発生の母体となる。地下茎には約5cm間隔で節があり、左右交互に芽子という芽がつく。発芽すると大部分はタケノコとなって地上部に伸びるが、いくつかは地下茎として分岐。地下茎には根が広がっており、地中の水分や養分を吸収して地下茎に送り、タケノコに送られる。地下茎は5~15cmの深さを上下に波打ちながら伸びる。
竹の区分
竹は雌雄同体で地下茎によって繁殖するため、生物学上は雄と雌の分類はないが、タケノコ農家は最下枝が1本のものをオス竹、最下枝が2本のものをメス竹と呼んで区別している。これはメス竹のタケノコ発生量が多く、オス竹は古い地下茎から発生した竹でタケノコの発生が少ない。
竹や笹の花は見た事があるぞ。やっぱり、イネ科だけあって咲いた後に出来る実は稲穂みたいだった。磐梯山の詩にも、「会津磐梯山は宝の山よ 笹に黄金がなりさがる」って歌われてんだ。
竹林を間伐する理由
その①日光と水分の補給
親竹密度が高くなれば、親竹1本1本に太陽光線が十分に当たらず、下枝の数段が枯れ枝となり、親竹の光合成も減少し、地下部では養分や水分の奪い合いとなるため、タケノコを生産する力が減退。そのため、竹林は適度に間伐し、地面に日光が当たるよう整備しなければならない。
地温を上げればタケノコ発生を促進できる。
その②竹害
竹林の手入れを怠ると,周囲の森林にタケが侵入して植生を破壊することがあり,「竹害」として問題になってしまう。
間伐した竹の利用法
竹粉砕機
竹を丸ごと1本潰して2mm~8mmの粉にすることができる。竹を入れると手前のローラーで竹をプレスしながら引き込み、奥にある2枚の刃で細かく砕く。20m位の竹を、1分半で粉砕できる。
竹食器
伐採竹を粉末化した竹繊維と、とうもろこしから作られたPLA(生分解性樹脂)を比重51%と49%で混ぜ合わせたもの。割れて使えなくなったとしても1年で土に戻る。八女市の全小中学校に導入されている。
タケノコ掘り
地割れ
地割れを探して掘ると、地表面に出るより15日~20日も早く収穫できるため柔らかくエグミのない良質なタケノコが収穫できる。地表に出てしまうと酸化してえぐみが出てしまうので地中にある物を収穫しなければならない。地割れはモグラなどの小動物が通った後にも似ているため間違えやすい。
良いタケノコ
茹でタケノコの下処理
穂先を切り落とし、中身が切れないギリギリのところまで包丁で切り込みを入れておくと、火の通りも良くなり、あとで簡単に皮を向く事が出来る。
アク抜きの仕方
一般にはアク抜きの時、米ぬか、もしくは米のとぎ汁か、生米を利用したり、重曹やふくらし粉などのアルカリ性の水で加熱することでえぐみが抑えられる。
お湯から茹でると、中心と外側の煮え具合に差ができて食感が悪くなるので水から茹でる。