明雄さんのにっぽん農業ノート

男米

2002年にひとめぼれとタカネミノリの交雑種。いもち病に弱い。強いいもち病抵抗性の遺伝子を持たないと考えられる。

新男米

2007年に毎年、いもち病に悩ませられていた男米といもち病に強いふくみらいを配合し、病気に強いTOKIOオリジナルの品種、新男米づくりを目指している。

ひとめぼれ コシヒカリと初星の交配種。耐冷性が強い。いもち病に弱い。
たかねみのり アキニシキとヨネシロの交配。耐冷性は強いが暑さに弱い。いもち病に強い。
ふくみらい 平成3年に中部82号を母、チヨニシキを父とし交配を行い10年間かけて育成された品種。倒伏に強く、耐いもち病や耐冷害への抵抗性遺伝子を持ち安定供給できる。

2011年度

  • 村から避難する際に持ち出した種もみを東京の礼斗の実家で育苗。
  • 全国でも有名な米所・新潟県の魚沼地区で米づくりについて学び、毎年悩まされていた「イモチ病に100%かからない」という、鈴木清さんの棚田の一部をお借りして、田植え。
  • 10月に無事稲刈りを行い、4段式の稲架木(はさぎ)にて天日乾燥。
  • 収量は130kgと2010年と同量。
  • 今回は、初めてJAの検査に提出。いい形の状態の米が全体の7割以上で一等米に認定されるのだが、整粒歩合が68%とわずか2%届かず、二等米に。

2012年度

今年は、ふるさとである福島県に戻り、明雄さんの紹介で福島市に住む難波さんの田んぼの一角で植えことに。
【面積:1000㎡】

2012年の田んぼの場所

福島県福島市

吾妻連峰の麓に位置する盆地だが、平坦に広がっているため、風通しの良い環境。

吾妻連峰

福島県と山形県の県境に位置する。西吾妻山2035mを最高峰に西大巓(にしだいてん)、東大巓(ひがしだいてん)、中吾妻山などの2000m級の峰々を総称して吾妻連峰と呼ぶ。

吾妻小富士

標高1707m。富士山によく似た形状の火口であることから、その名がついた。
吾妻連峰の1つに含まれる。
福島市内の農家は吾妻小富士に積もった雪渓がウサギの形になるのを種蒔きの時期の目安にしている。

難波憲吾(けんご)さん(65歳) / のり子さん(61歳)

元はバス会社で仕事をしていた。仕事をしつつ、農業は趣味程度に行っていた。定年後、本格的に農業を行うようになった。主にコシヒカリを栽培し、今年からヒトメボレを栽培している。

難波さんの田んぼ

  • 震災以来、福島の地を離れていたが、久しぶりに故郷に戻って来ての新男米づくり。
  • およそ一反の田んぼに新男米を植えさせて頂く。
  • 難波さんが栽培する「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」の田んぼと隣接しているため、混植しないように四方に間隔をあけて田植えを行なう

明雄さんメモ

  • 難波さんの田んぼがある一帯は昔、川だったとも言われているんだ。そこに、吾妻連峰から土を持って来て、埋め立てて田んぼを作ったらしいぞ。
  • 吾妻連峰から「吾妻おろし」という西風がよく吹くから、病気になりにくいんだ。村は、山に囲まれて、風が停滞しやすいから、いもち病などの病気に悩まされたな。

種蒔き

塩水選を明雄さんと礼斗で明雄さんの畑で行った。
※一昨年は塩水選で残る種もみは5割程だが、今年は9割程が残った。
塩水選・・・水10Lに対して1.9㎏の塩を溶かした比重1.13、濃度19%食塩水の中に種もみを入れ、充実したものを選別する方法。
今年は、DASH村でも使用していたポット育苗箱に1粒ずつ蒔いた。

田植え (5月)

  • ポットは難波さんのハウスに置かせて頂き、一ヵ月後には田植え出来る大きさに生長。
  • DASH村で毎年、田植えのお手伝いに来て頂いていた金光さんも合流。

出穂 (8月)

無事出穂し、たわわに穂も出揃ったが、今年の福島は猛暑に悩まされた。

明雄さんメモ

今年の夏の福島市は本当に暑かったぞ。しかも、出穂する時期に猛暑で雨が少なかったから、米にも少し影響がでたかもな。やっぱり、出穂する時期に雨が降らないとダメなんだ。田んぼに水をかけ流すように、対策は出来るけど空気中に湿気も必要なんだ。

稲刈り (10月上旬)

  • 無事に成熟した稲を今年は、DASH村の仲間と共に総勢15名で刈る。
  • 慣れた手付きでテキパキと刈っていくので、村より広い田んぼだったけれど、あっという間に終わった。
  • そして、全て刈り終わると、村では横一列のはせがけで天日乾燥をさせていたけれど、この地方で昔から行なわれている「棒がけ」という方法で天日干しする事に。今では、機械を使った乾燥が主流だが、新男米が植わっていた田んぼの周辺でも、この棒がけによる天日乾燥している様子がよく見られた。

棒がけ

方法

  1. 棒を地面に突き立て、倒れないように下を三点で支える。
  2. 稲穂が外側になるように四方に交互に積み重ねていく。
    ※途中、横木を通し、すき間を空け、風通しを良くさせる。

利点

  1. 風が良く吹き抜ける土地なので、乾燥に便利
    ・川に沿って風が吹く(山谷風)地域では、棒がけによる米の乾燥が適していた。最上川流域、北上川流域、雄物川流域でも棒がけが多く見られる。
    ※難波さんの田んぼは、吾妻連峰から阿武隈川に流れる荒川や須川などの支流が流れている。
    ・稲刈りの時期に吾妻連峰の山々から福島市内に吹く季節風(吾妻おろし)が多い。
    ※風がよく吹き抜ける地域ははせ掛けよりも適していた。
    ※海岸線にも棒がけが多く見られるが、それは海陸風を利用しているため。
  2. 立てるのが簡単
    はせ掛けなど、長い木を使用する場合、組み立てるのに労力や時間がかかる上、運んだり、保管するにも手間がかかる。それに比べ、棒がけは持ち運びにも保管にも便利。
  3. 材料が手に入りやすい
    天日干しが主流だった頃、山から離れた平坦な土地は、長くて良質な木材が手に入りにくかったので、短い枝を何本も使用する棒がけを行なうようになった。
    ※棒がけが一般的に行なわれている場所は、山岳地帯より盆地や海岸地帯に多く見られる。

明雄さんメモ

棒がけは、初めてやったぞ。DASH村は山に囲まれていて、木材が豊富だったから、はせ掛けが主流だったぞ。

脱穀 (10月下旬)

村では、昔ながらの方法、足踏み脱穀機や千歯こきを利用していたが、今年は難波さんが所有しているハーベスタ(脱穀機)にて行なう。15分とかからず完了してしまった。

籾すり

新潟県でも使用させてもらった籾すり機にて籾すり。DASH村で使用していた木摺臼(きずるす)は力と時間がかかったが、こちらもあっという間に籾が剥かれ、玄米になった。

放射能検査

  • 今年、福島県は全ての米に対して、放射能検査を義務化。新男米も検査して頂いた。
  • 機械の中に袋詰めの玄米を通し、放射能を測る。
  • 基準値以下だと青いランプが光り、安全が証明される。
  • 赤いランプが光ってしまうと、要精密検査になる。
  • 新男米では、無事に青いランプが点灯し、安全が証明された。

食卓

精米し、昨年同様、DASH村の仲間たちが、明雄さんの畑に集合。一年ぶりに会う方も多く、久しぶりの再会を喜んだ。DASH村で定番だった豚汁とみんなが持ち寄ったおかずで新男米の大収穫祭を行なった。
最後には、明雄さんが小学生の頃から所有していたと言うハーモニカで「ふるさと」を披露。城島さんと若い頃、バンドに所属しギターを弾いていた難波さんの伴奏に助けられながら演奏し、みんなは大熱唱。大盛り上がりの収穫祭となった。

田んぼと平行して、10種類もの作物を福島市内で植えていた。
(トマト/トウモロコシ/ナス/ピーマン/スイカ/キュウリ/パプリカ/オクラ/インゲン)
そして、5月に出張DASH村で熊本県を訪れた際に伺った農家・井村さんの畑で見させて頂いた日本一長い大長なす。これを気に入ってしまった明雄さんが井村さんに頼み込み頂いた苗で栽培に挑戦した。熊本よりもずっと北にある福島県で栽培出来るか不安だったが、そこで使用するのが同じく出張DASH村で訪れた長野県で発見したピンクハウスを利用した。この中で大長なすを栽培してみたら、効果があったのか長くて甘い大長なすが何本も収穫出来、稲刈りの後にみんなであの絶品の焼き大長なすを味わった。