佐賀県白石町(しろいしちょう)は佐賀県の南西部に位置し、東南部は有明海に面している。
白石町は江戸時代から有明海の干潟をせき止め、中の海水を抜き取り作られた干拓地。
白石の土壌は有明海のミネラルが豊富で粘土質の土が特徴。農業好適地帯となっている。
そのため、佐賀を代表するレンコンの産地。収穫量全国3位、九州での生産量は第1位。
レンコンは蓮の根と書くが、実は、根ではなく茎で、地下茎(ちかけい)と呼ばれる茎の一部が肥大したもの。
春先にレンコンの元となる種レンコンの植え付けをし、暖かくなってくると、地下茎の先が伸びて節を作る。
節からまた茎が生まれ、それを繰り返しながら地下茎は伸びていき、約8メートルくらい伸びる。
花と葉が成長している時期は、地下茎は養分を葉や花に奪われるためとても細いが、花が終わり葉の成長も止まると、地下茎の先端が大きくなっていく。
3~4節のレンコンが形成されるが、やがて秋になり気温が下がると地下茎の生長も止まり、土の中で休眠期に入る。
DASH村でもレンコンを育てたが、収穫したレンコンは小ぶりであった。
白石町の土壌は滑らかであるためレンコンの生長を妨げないが、DASH村の土壌は硬い赤土でゴツゴツしていたためレンコンが大きく育つことができなかった。
8月~9月のレンコンがまだ生長途中のものはやわらかく、えぐみも少ないので先端部分を生で食べることができる。
ただし、土から掘って収穫してから数時間以内の、新鮮なものしか食べることができない。
先端のレンコンには水分がたっぷり含まれており、まだデンプン質があまり生成されていないことから柔らかく、食べると梨のような味がするという。昔は作業中に水が飲めないときにレンコンをかじっていたほど。
しかし、レンコンは規定の大きさに合わせて節ごとに販売しているため、生で食べられる先端は小さすぎるため商品としては規格外になってしまう。
商品にはならないが、1番おいしいといわれている部分であるため、自宅で食べたり肥やしとして畑に残すこともある。
とれたてのレンコンを割ると、細かい糸が出てくる。これは、ムチンという、糖類とたんぱく質の複合体からなる粘性物質。
レンコンは葉から実まで全体が繊維質のため、新鮮なものほど糸引きがよいとされる。
ムチンはヤマイモやオクラ、ナメコ、サトイモ、納豆などに含まれるだけではなく、DASH島の海にも数多く生息しているヌタウナギから出る粘液にも含まれる。
胃液や唾液にも含まれている成分で、粘膜を潤し、損傷を防ぐのに役立つ他、疲れがたまっているときに摂取すれば、疲れがとれやすくなるといわれる。
また、唾液腺ホルモンの分泌をうながして食欲を増進したり、便秘の解消や殺菌効果もあるという。
レンコンの穴は外と呼吸するための重要な穴で、葉から取り込んだ空気を穴から通して全身に送る。
穴の数は種類によっても変わるが、ほとんどがまわりに9個と中心に1個の合計10個の穴が空いている。
茎にもたくさんの穴があいており、光合成で作られた酸素や養分を葉から吸収し、茎を通って実に送り込んでいる。
葉の中心に小さな穴をあけて、蓮の葉にお酒を入れ、茎の切り口からお酒を飲む。
これが、古代中国から伝わる客をもてなす最高のお酒の飲み方といわれている。
また、不老長寿、暑気払いの薬として飲まれていた。
その姿が象が鼻を上に向けている格好に似ていることから「象鼻杯」という。
作業をする際は腰のあたりまで水につかるため、ゴム製の胴長を着て作業する。
収穫方法は主に「くわ堀り」と「水堀り」の2つに大きく分けられ、くわ堀りは、蓮田の水を抜き、茎を刈ってからレンコンを傷つけないように慎重に専用のくわで少しずつ掘る方法。
水堀りはくわを使わず、用水路から水を汲み上げ、ホースから勢いよく水を出してレンコンのまわりの土を吹き飛ばす方法。
佐賀県では水堀りでの収穫が主流。
レンコンはとても折れやすいが、収穫中に折れてしまうと穴の中に泥水が入って劣化が激しくなるため、レンコンを傷つけたり折れないように掘り上げる。
白石町のレンコンは泥付きで出荷しているため、レンコン畑の泥をレンコンにのせ陸へ運ぶ。
泥を塗ることで乾燥を防ぎ、日持ちがよくなるため。
収穫後、泥を塗り直してから、箱詰めをする。
泥の塗り方は薄く、まんべんなく。4kgごとの出荷のため、泥が厚いとその分重さが出てしまう。
泥を塗りながら、根もむしり取る。
また、出荷規格があり、2L、L、M、S、2S、3S、Aの7種類。大きさごとに細かく選別してから、泥がついたままビニールを敷いたダンボールに入れ出荷する。
地元スーパーでは泥付きのまま一節ごと販売されている。
基本的に先端の「第一節」が一番やわらかく、第二、第三と根元に近づくにつれて繊維が増えて硬くなる。また、硬さによって合う料理も変わる。