明雄さんのにっぽん農業ノート

新男米

2013年度 種蒔き・田植え

  • 今年はDASH村で行なっていたように一粒ずつボットに種を蒔き、難波さんのハウスにて栽培。一ヵ月後には無事に田植えが出来る大きさに生長。
  • DASH村では毎年三角定規を使いながら田植えをしていたが、道具を持ち出す事が出来ないので、今回も『がじ棒』をお貸し頂いた。

がじ棒

田んぼに直接、縦・横と線を引き、交わった点に苗を植えていく。
竹で出来た歯の感覚は均等だが、間隔が30cmのものもあれば、20cmのものもある。

明雄さんメモ

子供の頃は、肥料が十分になかったから、堆肥と山からとって来た葉っぱを切って土にすき込んで、肥料にしてたんだぞ。

出穂

新男米の生育は順調。分けつ数は、45本!!
→去年の27本でも多かったのに、倍近く激増していた。

非常事態発生

順調に生育し、頭を垂らしたばかりの稲穂が、枯れたように変色していた。
→正常な場合、白い液状の物質が詰まっているが、異常な粒は、中身が全てなくなっていた。

原因

よく観察していると、犯人はスズメ。
→米の元となる、まだ液状のデンプンを吸い取っていた。食べられた米は、もちろん収穫できない。
→通常、同じ品種の米を広い土地で育てるので、その一帯の田んぼは同時期に出穂し、スズメも分散する。
→新男米は周辺のコシヒカリよりも1週間~10日ほど早く出穂したため、新男米に集中した。
→一度、味を知ると、例え、後に他の品種が出穂しても、同じ品種を狙い続け、食べ尽す。

受精~登熟までの流れ

稲は開花すると、蕾の腹が割れておしべが飛び出す。
風の力で花粉が飛び散ると葯の中のめしべに花粉がつき、受精する。
すると、子房が膨れ、10日後には殻一杯になる。

鳥追い

昔から、米農家さんはスズメの被害に悩まされ、一年に2度、鳥追いを行っていた。
→1度目は、種まきのあと。昔は苗代に直播きしていたので、種もみがスズメに食べられる事が多く、常に監視するなど対策を行う。蒔いた種もみの芽が伸びて、苗が緑になるまで鳥追いを続けなければならなかった。
→2度目は稲穂が出てきてから。

スズメ追い用の鳴子

田んぼの中央に棒を立て、棒の上部に結んで四方に渡した綱に鳴子がつけてある。
追い払う時は1本の綱を引くと鳴子が一斉になる。

明雄さん vs スズメ

明雄さんが、大きな音がなる一斗缶でスズメを脅し抵抗していたが、効果はそのとき限り。さらに泥を投げて威嚇するも、懲りずにすぐに襲来してくる。
※かつて、鳥追いは子供たちの仕事だったので、学校から帰り、日暮れまで行っていた。スズメの大群が来ると、石油缶を叩いたり、手を叩いたり、大声で「ホーイホーイ」と叫んで追い払った。子供たちが学校に行っている間は、年寄りが代わりに行う。

現代の対策

鳥害防止ネットを一面に張り、スズメの侵入を防ぐ。
→スズメは網を警戒し、近寄らなくなったので、スズメの被害は激減した

明雄さんメモ

子供の頃から、スズメには悩まされてたぞ。だから、俺もよく鳥を追っ払ってたんだ。
田んぼの真ん中に吊るして、縄で繋ぎ、遠くから見張ったんだ。スズメが来たら、縄を引っ張って、一斗缶を鳴らし、大きな音を出して追っ払ったんだ。

稲刈り

今年も、DASH村の仲間と共に稲刈り。慣れた手付きでテキパキと刈っていくので、村より広い田んぼだったけれど、あっという間に終わった。そして、「棒がけ」で天日干しし、乾燥させる。

稲こうじ

  • 出穂後に現れる深緑色のカビの塊で、天然の麹菌。
  • 稲霊(いねだま)さまとも呼ばれ、昔は稲麹がつくと、その年は豊作といわれた。
    →豊作の年によく発生していたので「豊年病」と呼ばれてきたが、豊作以外でも発生しており、近年ではあまり呼ばれなくなった。
    →稲こうじ菌と豊作の関係性について、明確な理由は解明されていない。
  • 稲の中で穂が形成される時期に低温(13~15℃)で降雨が多いと菌に感染し、出穂後は高温(25~30℃)が続くと菌が増殖し、籾を突き破り団子状になる。
  • 毒ではないが、米の育ちが悪くなったり、米粒が黒くなり品質が落ちるため、今では稲麹病と呼ばれ、農薬で防除されている。

明雄さんメモ

「稲こうじ菌がついた年は豊作になる」というのは、俺の両親や祖父母から聞いたんだ。
理由は分からなかったけれど、代々言い伝えられているんだな。

脱穀

  • 今年も棒がけで天日乾燥する。
    →しかし、今年は台風が多発した影響で、乾燥が終わった後はビニールシートで濡れないよう対策。
    →強風でなぎ倒される心配もあった為、台風が直撃する直前、雨が降る中での脱穀となった。
  • 村では、昔ながらの方法、千歯こきで脱穀していたが、今年も難波さんのハーベスタ(脱穀機)で脱穀を行った。
    →20分とかからず完了。
  • 去年は、200kgだったが、今年は2倍以上の約420kgもの新男米が収穫出来た!

籾すり

今年も籾すり機にて籾すり。DASH村で使用していた木摺臼(きずるす)は力と時間がかかったが、こちらもあっという間に籾が剥かれ、玄米になった。

放射能検査

福島県は全ての米に対して、放射能検査を義務化。新男米も検査して頂いた。
機械の中に袋詰めの玄米を通し、放射能を測る。基準値以下だと緑のランプが付き、安全が証明され、出荷される。しかし、赤いランプが光ってしまうと、要精密検査になる。
もしここで、赤いランプが点灯してしまったら、半年以上かけたお米が食べられなくなってしまうので、ハラハラしたが、無事に青いランプが点灯し、安全が証明された。

食卓

精米し、昨年同様、DASH村の仲間たちが、明雄さんが野菜を作る畑に集合。一年ぶりに会う方も多く、みんなで久しぶりの再会を喜んだ。DASH村で定番だった豚汁とお漬物で、新男米の大収穫祭を行なった。
最後には、若い時、バンドに所属しギターを弾いていたと言う難波さんと、ギタリストが本職の城島さんの伴奏にみんなでDASH村を思い出しながら『ふるさと』を歌い、一年を締めくくりました。