皮が薄く肉厚なので、梅干しを作るのに最適な大型の梅(大梅:25g以上。開花期は遅く、収穫期も遅い)。
和歌山県みなべ町
- 日本一の梅の産地
- 熊野灘に面した温暖な土地。
- 紀伊山地に覆われ平地が少ないので、山の急斜面を利用した梅や果樹の栽培が江戸時代の初めころから盛んになった。
梅農家
松川 哲朗さん(53歳)
3代続く梅農家。梅を栽培し始めて30年以上になる。
松川 薫さん(52歳)
孝子さんと梅の話しを通して意気投合。お互いをお互いの「弟子」であると言い合う。
梅の栽培ノート
①斜面を利用
- 斜面は60度以上。
- 南高梅は完熟になると自然と落ちる。落ちた梅は斜面を転がり、集まる仕組みになっているので回収しやすい。梅が傷つかないようにネットが敷き詰められている。
②他品種との交配
- 他品種と交配させる事により収量が上がる。
- 松川さんの農園では、受粉樹に「織姫」という小梅を使用。
※小梅:10g以下と果実は小さく、収穫時期が5月下旬と早い
③西洋ミツバチを利用
- 急斜面のため人工授粉は作業効率が悪く危険が伴うので、25年前からミツバチによる受粉が行われるようになった。
- 受粉樹を取り囲むように南高梅が植えられているので、ミツバチが行き来すれば必ず受粉するように植えられている。
④機械を利用した作業の効率化
- 選果機
洗浄から、サイズごとの選別まで行われる。
※村では「芋洗い棒」を使い、梅を洗った。
明雄さんメモ
- みなべ町の山はどこも急斜面で陽がまんべんなく当たるからいいんだ。特に、朝日がしっかり当たるのは梅だけでなく作物にとってもとてもいい事だから、よく育つんだ。人間と同じだな!
- 運搬機は一つレールだから場所もとらないし、急斜面やくねくねと曲がった不便な所でも利用出来るから本当に便利だ!村にもあったらいいな。
日本生まれのみかんと言われる。一般的に出回るみかんの中で一番多い。
有田地域(有田市、有田川町、湯浅町、広川町)のみかん農家は、3500軒にのぼる。
有田地域の特徴
- 傾斜地が多い
- 土壌に岩や石が多い
- 石垣階段型の畑
- 温暖な気候
みかん農家
花田 正幸さん(52歳)
みかん農家の10代目。畑で200本程のみかんの樹を栽培する他、ハウスでも栽培し、一年を通して収穫している。
みかんの栽培ノート
①水の管理
水の管理は、みかんの糖度が決まる大事な作業。
8月までは、実を肥大させるため水分を与え、9月になると根元に透湿性のある白いマルチを敷き詰め、雨水の浸入を防ぎ、余分な水分をカットして水分ストレスを与える。水分過多で糖分が分散する事を防ぐ。
※村でトマトを甘くする為にビニールハウス内で栽培したものと同じ原理。
②土壌
風化土壌で岩や石を適度に含んでおり、排水性・通気性が良好。みかんには最適な土壌。
③根はり
根は深さ20~30cm、半径20~30cmと浅くて狭い範囲に張っている。養分過多・水分過多を防ぐ。
④石垣の段々畑
石垣には、「排水効果・光の反射効果・保温効果」がある。岩や石が適度に含まれてたいる土壌なため、水はけや通気性が良い。さらには、段々畑は日当りが良く、石にあたった日光は反射し、背面にも光が注ぐ。
石積み
石積み職人
菅原 光平さん(37歳)
みかん栽培歴・石積み歴ともに11年。みかんを栽培する傍ら、石垣積みや庭剪定を行っている。
野面積み
自然石を特に加工せずにそのまま積み上げる。 一番下の石(根石)は、背面(尻)が下がるように積む事で安定感を持たせて据える。積んだ石の隙間に小石をかまし、石が動かないように固定する。二段目からの石は、下や隣接した石に少しでも接するように積み上げる事で、お互い荷重し合い、重さが一石に集中する事なく分散され安定する。
ハウスみかん
露地みかんが出荷されない時期、4月頃~9月頃までの期間で収穫される。その為、一年を通してみかんが食べられるようになった。
特徴
- 温度管理・水分管理が自在に出来るので、品質が安定している。
※年ごとの、天候による影響を受けない。
- まだ生産量が多くないため、露地みかんより値段が高い。(1個およそ150円)
- 中の皮がとても薄いので、皮ごと食べられる。
- ビニールハウス内にあるので、強風に当たる事がなく傷がつきにくい。
明雄さんメモ
- 村も斜面が多いから、梅や柑橘類などの斜面を利用した作物の栽培が出来るかもしれない。
- みかんを村で栽培するのは難しいかもしれないな。村の冬は−10℃まで下がる極寒だから、露地では冬は越せない。もし露地で栽培するとなると、冬はハウスが必要だな。
- もし、柑橘類を育てるなら、母屋裏の斜面が最高だ。東向きで朝日が良く当たるから、寒ささえ乗り切ればうまいのが出来るぞ。
硬度15度以上。主にウバメガシという樹から作られることが多い。
一定の火力が維持でき、黒炭の約3倍の時間持続する。起源は、空海が唐から製炭技術を持ち帰り、伝わったとされる。
紀州備長炭
- 全国の備長炭の8割が紀州備長炭
- およそ9割がウバメガシを使用。
- 硬いものなら鋼鉄ほどの硬さになる。
- 和歌山県の炭焼き職人は全体で170人、みなべ町は最も多く、40人ほど。
炭焼き職人
原 正昭さん(40歳)
炭焼き暦20年の3代目。父親も現役の炭焼き師。現在では、炭焼きの指導も行う。
山本 久子(ひさし)さん(42歳)
炭焼き歴5年。森林組合員をしていたが、炭焼き職人に転職。原さんの指導を受ける。
ウバメガシ(馬目樫)
- ブナ科コナラ属
- 温暖な、房総半島以西の太平洋沿岸に多く見られる常緑広葉樹。
- 急傾斜や岩地など水分の少ない場所に自生している。
- コナラが30年で10m生長するのに対し、ウバメガシは6mしか伸びない。
- 木質は密で硬いため備長炭づくりには最適。
- 都内でも街路樹などに利用されている。
- みなベ町では昔から、生長の遅い幼木を倒さないよう、太い樹のみを切る(=択伐)方法で絶滅を防いでいる。
備長炭づくりのポイント
①木ごしらえ
木が真っすぐになるように、チェーンソーで切り込みを入れ、切れ込みにクサビを入れ調整する。
※木をまっすぐにすることで窯の中に木を立てやすい。
②窯詰め/放り木
窯の中の温度が非常に高温なため、中には入らず昔ながらの方法で木を並べる。
備長炭の石窯内の温度 約1000℃
黒炭の窯内の温度 約700℃
③窯出し
備長炭は高温状態のまま窯から出し、すぐに灰を被せて冷却する。