さつまいも農家
松下 一志さん(58歳) 指宿市
農業歴35年。青果用、加工用(菓子等)のサツマイモを栽培している。
栽培種:ベニサツマ/高系14号
鹿児島県内の食用で最も栽培されている品種。焼き芋、蒸かし芋、天ぷら用として食される。
農機具
サツマイモ用小型自走式収穫機
- 前方のドラムでマルチを外し、巻き取りながら収穫する。
- 収穫には、前方に付いたフォークで畝ごとすくい上げる。
- 掘られた芋はベルトコンベアで自動的にあがり、コンテナに収められる。
音声式重量選別機‥分太Ⅱ
- サツマイモが入ったカゴ全体の重量を計り、取り出し芋をその重量から引き算する事で重さを割り出す。判断に迷う重さの物も正確に判断できる。
- Mサイズが男性の声の理由は、LとMが聞き分けにくいため。
カンショ洗浄研磨機
ブラシ3本・高圧ノズル・動力噴霧器の高圧洗浄により、サツマイモの曲がりやくぼみ等のなかなかブラシが届かない部分を傷付ける事なく綺麗に洗浄出来る。
明雄さんメモ
昔っからサツマイモをよく作って来たけど、いつも手作業で掘ってたから収穫は大変だった。こんな機械があると便利でいいな。
土壌
【礫質土壌】
- 火山礫で水はけの良い土壌。
- 粒子が荒い為、土中に日光を通し地温が上がり、サツマイモの生長が促進される。
- 礫土質のため、成長過程のサツマイモに石が当たり表面がボコボコになり易いという欠点を補う為に、土がやわらかくふかふかになるように緑肥をすきこむ。有機物補給にもなる。
明雄さんメモ
鹿児島県の土壌は水はけが本当にいいな。
水はけがいいと畑の栄養素も流れちまうが、ある程度は抜けた方がいい。毎年肥料を当てがい、畑の土をよく循環させた方がうまい作物が穫れるんだ。
害虫・食害対策
ソルゴー
- アフリカ原産でイネ科の一年草。
- 松下さんが栽培している品種は「つちたろう」といい、サツマイモに寄生し病気の原因となるサツマイモネコブセンチュウに対して抑制効果がある※センチュウが寄生しても成長・産卵が出来ない為、減少する。
- 枯れた葉の部分は、畑にすきこめば緑肥になる。
イノシシ対策
- 人毛をネットに入れ、イノシシが来るであろう方向にぶら下げる。
※人間の臭いを嫌い、畑に近寄らなくなる。同じようにタヌキの被害も無くなる。
人毛は、行きつけの理容室などから譲ってもらう。お礼に美容室に収穫後のイモを届けている。
村のイノシシ対策
- 村では、サツマイモや南瓜などが被害にあった。
- 竹の鳴子やネットで畑を囲ったり、北登の毛を畑の周りに置くなどして対策。
明雄さんメモ
イノシシの被害にはよく悩まされていた。イノシシ対策に人毛を利用する方法は、今度試してみようかな。
食卓
蒸かし芋
- ゆっくりと温度を上昇させながら煮る(蒸かす)。
※酵素が働き、デンプンを糖に分解するので、甘さがいっそう引き立つ。
- 水を全てきり、火にかけ水分を飛ばす。
※水気を切る事で味が濃くなり、香ばしさも出る。
- さらに、カツオ節では使わないエラ下部分(ハラス)を塩漬けしたもの(「カツオの腹皮」)と一緒に食べる。
※塩気がイモの甘さを引き立てる。
サツマイモ農家
平山 義孝さん(46歳)
農業歴は17年。元々、サラリーマンをしていたが、テレビで見た農家に憧れ、鹿児島に移り住み、サツマイモを栽培する事に。現在では13種類ものサツマイモを栽培している。
土壌
シラス土壌
- 南九州一帯に厚く堆積している鹿児島湾の北部を噴出源として約22000年前に起こった最大級の火砕流噴火の産物からなる。成分は、天然ガラス。
- 鹿児島県内でおよそ数十mから、最大約150mの厚みがある。
- 酸性の強い土壌で水はけがよすぎるため、本来農業にはきわめて不適とされた。
- 粒子同士が、黒ボク土の様に団結しない為、さらに水はけが良い。さらさらしているのでサツマイモの皮を傷つけない。
天地返し
- 下のシラス土壌と入れ替える為、7mも掘り、天地返しを行う。
※通常は、菌がいない50cmから1m程度を掘り天地返しを行う。
- 天地返しを行うのは、細かい土質にする為。表面を傷つけず、見た目がキレイになる。
- 7mもの天地返しを行うので、病害虫の影響が無い土壌になる。
畝の高さ
- 平山さんは、畝を高く設定しサツマイモを栽培している。
※畝高:約30cm(村の畝高:10cm)
- 根の広がる体積が大きくなるので,土中の養分をたくさん吸収できる=大きなイモができる。
- 畦を高く設定すると、太陽光線をたくさん受けて、地温が上昇する。
※さつまいもの発根は18℃以上なので、鹿児島で4月に植えるには地温は低いが、高い畝だと地温も上がりやすくて,冷めにくい。
明雄さんメモ
やっぱり、いい土づくりは重要だ。サツマイモがあんなに良く出来れば、他にもたくさんの作物がうまく出来る。
薩摩酒造
「さつま白波」の銘柄で芋焼酎を製造・販売している。
芋焼酎の品質を保つ為、原料である芋(コガネセンガン)の品質からあげる努力を行う。
※県農業開発総合センターから購入した苗を培養増殖。薩摩酒造にコガネセンガンを納品している農家にバイオ苗を販売している。
バイオ苗とは
- 病気の無い無菌状態で栽培された苗を切り分け、さらに葉の部分を切り分ける。そこから新たな芽を出し生長する。
- ウィルスに感染していないので、良質な苗を多く作りだすことができる。
- 1月~8月中に苗を増やし、9月にはウィルスに感染しないように水耕栽培で増殖させる。
- 通常、種芋を選抜するだけだが、それではウィルス感染は防ぎきれない。
※ウィルスに感染した芋は、本来の食味などの性能を発揮出来なくなる可能性が高くなる。
- 優れている品種・系統本来の形質を受け継ぐなど、親苗の良い特徴を受け継ぐことができる。
食卓
せんのすもん
せん=さつまいもをすったもの。すもん=吸い物がなまった言い方。餅の様な食感で、すいとんと似ている。
- 蒸かしたサツマイモをすり潰し、サツマイモデンプンをまぜる。
- 耳たぶ程度の固さになったら、程よい大きさに切り分ける。
- ニンジン、ネギなどが入ったエビの出し汁に落とす。
- 浮いてきたら完成。