794年に平安京が都になって以来、京都は野菜の栽培が盛ん。
海から遠く、新鮮な海産物が入手しにくいため、野菜の栽培が盛んになった。
また、京都の野菜が発展を遂げたのは、京都の風土が野菜の栽培に向いていたため。
京都市の風土の特徴
京野菜とは、京都で生産された野菜の総称で、厳密な定義はない。
定義付けされているものとしては、京都府が定める「京の伝統野菜」と「ブランド京野菜」があり、2つの異なる選定基準によって指定されている。
京の伝統野菜
1987年から京都府により認証が始められ、現在では41品目が「京の伝統野菜」として認定。
条件は以下の4つである。(絶滅したもの、準ずるものを含む)
ブランド京野菜(京のブランド産品)
1989年から京都府、流通団体、農協等が中心になり認証を始め、現在21品目が認定。
上賀茂の地は西に賀茂川(鴨川)、東は高野川という2つの川に挟まれた扇状沖積地で、砂質土壌の肥沃な土地。平安京が造営される前から開拓が進み、古くから農耕が営まれていたという。
京の伝統野菜の代表格。
京都市を流れる賀茂川の上流、上賀茂地域を中心に多く栽培されている。
上賀茂地域では、5月半ばから7月が収穫期。
(※賀茂なすは高温に弱いため、梅雨明け後の8月は品質の良いものができないため、7月で収穫を打ち切る)
形はソフトボールのような正円形で、直径10~12センチ、重さは300~500g。
大果は1キロにもなる。
鋭く長い3枚のへたが特徴で、にぶく黒光りする重厚な紫色をしている。
賀茂なすの歴史
賀茂なすの起源は明らかにはなっていないが、京都の地理や特産物を記した江戸時代の書「雍州府志」(1684)には、『処々にこれを種ゆ。あるいは紫茄・黄茄・白茄の異あり、民間に長茄と称す。しかれども、風味、円大のものに及ばず。洛東、河原の産、殊に絶えりとす』この円大のものが賀茂なすと考えられている。
元々は、洛南の下鳥羽村芹川で生産されていたが、北方の上賀茂に伝わり、盛んに栽培されるようになり、明治時代に『賀茂なす』と呼ばれるようになったといわれている。
とげがある
元々、ナスには、虫などから自分の実を守るためにとげがあった。
賀茂なすは品種改良をしておらず、原種に近いため、実のへたや葉っぱや茎にとげがある。
現在のナスは、人が作業しやすいように、トゲがなくなるように品種改良されている。
肥料のあげ方が難しい
賀茂なすは「肥料食い」「水食い」と言われるほど、肥料と水をたくさん必要とする作物。
しかも、肥料を一気に吸い上げてしまうと、割れてしまうので、肥料の与え方が難しい。
水も2日に1度はたっぷりとあげるという。
また、肥料が少なかったり、木に負担がかかりすぎると、花ができなかったり、花ができても実ができないこともある。
昭和50年5月14日京都・上賀茂生まれ。
上賀茂の地で代々続く農家の5代目。
平成10年に大学を卒業後、就農。現在、上賀茂特産野菜研究会会長。
車が好きだったので自動車関係の仕事に就きたかったが、両親の農業の手伝いをしているうちに、農業にのめり込み農家になった。
平成元年に上賀茂地域の若手農家有志の17名で発足した生産者組織。
京の伝統野菜の一つ「賀茂なす」栽培を伝承している。
上賀茂神社内において採種用の賀茂なす栽培を行うほか、3月中旬に豊作祈願、5月の葵祭で賀茂なすの奉納、8月に収穫感謝祭など、神社と連携した活動を通じて賀茂なすをはじめとした地元野菜の振興に貢献している。
その活動が認められ、平成21年度地産地消優良活動表彰で農林水産大臣賞(地域振興部門)を受賞。
賀茂なすの共同で出荷を行っており、5月~7月は月・水・金の週3日上賀茂神社内の集荷場で集荷・出荷作業を行っている。
また、賀茂なすの種子保存も行っており、種取りを毎年役回りで行い、伝統野菜の種を守り続けている。
賀茂なすの果肉はムッチリと厚く、舌にのせればトロリと滑るような感触と深い濃い味わいが特徴。肉質が締まって密なため、煮ても焼いても崩れない。
生でも食べれるが、他のナスに比べ、油を吸いすぎないため、油との相性が良く、素揚げして調理した方がより美味しくなる。