山形県鶴岡市・庄内砂丘
- 南北に長く伸び、砂丘の長さは全長約35kmで日本一の長さを誇る。
- 海岸線には黒松の防風林が植林されており、季節風から庄内の田畑と集落を護っている。
庄内メロンのはじまり
- 庄内でのメロン栽培は大正7年から始まり、昭和初期から本格的に開始する。
- 昭和50年頃にアンデスメロンが開発されるとともに導入し範囲を拡大。今では、山形県は全国第5位の生産量を誇る。
- 出荷期間は6月下旬~8月中旬。出荷が他県よりも早いため、真夏のメロン市場は山形県が支えている。
鶴姫
- 今回収穫したメロン。庄内砂丘で栽培される鶴岡オリジナルのメロン。
- アンデスメロンよりもネットの盛りがよく、形が長めで実が大きい。
- 夏の期間に栽培され、選果の際の糖度が15度以上でないと出荷しないという全国的にも高品質なメロン。
- 味は爽やかな甘さで後味が良く、果肉がやや固めでしっかりした食べごたえがある。
- 食べごろの期間が他よりも長い。
- 編目が盛っているメロンほど糖度が高い。
メロン農家
阿部健一さん(48歳)
メロン栽培歴、約30年。JA鶴岡西郷砂丘畑振興会会長を勤める。
栽培法は露地栽培(トンネル開閉タイプ)中心で、年間約2万3000玉のメロンを出荷する。作業は阿部さん、阿部さんの奥さん、おばあさんの3人で行っている。
おいしいメロンが育つ要素
- 水はけのよい砂地
庄内砂丘特有の砂地は水はけが非常にいいため、与える水分の調整がしやすい。メロンは収穫期に近づくと水分がいらなくなり、このときに水切りをすると、甘さが凝縮される。
- 昼夜の寒暖差
寒暖差が大きいことにより編目の盛りがよくなり、甘く育つ。
村のメロン栽培
村はハウスでメロンを栽培したが、編目の盛りが悪く、糖度も11度と低かった。
理由
- 気温が暑い日が続いたため、編目が固まる際に必要な寒暖差がなかった。
- 収穫時期を逃した。
露地栽培(トンネル開閉タイプ)
- 砂の上に水が流れるパイプを通し、マルチを張る事で水分の調節を行う。
- 畝の上に、ビニールをトンネル状に被せることで、温度の調節し雨から守る。
- 日々の管理や収穫が行ないやすいように、地這い式で栽培。
- 自然に近い状態で育てられるため、夏にのみ収穫される。
- 最初は1株に10個ほど実をつけるが、4個までに摘果する。
※4個以上だと品質が落ちてしまう。
露地栽培のメリット
- ハウスメロンより日が当たりやすく、寒暖差が大きくなるためメロンの甘みが増す。
- 海から吹く風を存分に受けるため、網目の元となる液が固まりやすく、盛りが綺麗に仕上がる。
※液を乾かさないと菌が入り、病気になりやすい。
収穫
- 収穫ばさみを使い、最初は茎を長めに切り、手に持ってから実と茎のギリギリのところを切り収穫する。
- 茎を切ったさい切り口から水分は新鮮さの証拠。
- 収穫の目安は、
①メロンの付け根から生えている葉が枯れる。
※茎にある栄養素が実に行くということで、もう十分に実が養分を吸い込んだということになる。
②果尻が割れる直前を見極める
安く出荷できる理由
鶴姫は1玉1000円弱ほど。高級メロンのクラウンメロンとくらべ遥かに安い。
※理由としては様々あるが、主なものとして、
①クラウンメロンが1株に1玉しか実を付けさせないのに対し、鶴姫は1株に4玉の実をつけさせる。
②寒暖差のおかげで、ハウスのように温度管理をする必要がなくコストが安くすむ。
香りメロン(名前も無いメロン)
- 近年開発された新品種で、名前がまだ付いていないが、農家さん達は「香りメロン」と呼んでいる。
※東京のケーキ屋「キル フェ ボン グランメゾン銀座」にて、「まだ“名前も無いメロン"のタルト」として売られていた。※現在は販売終了
- 外皮はオレンジ色で桃の様な香り。果肉は白く、食感は洋梨に似ているが味はメロン。
- 畑で完熟させるタイプのメロン。完熟するとメロンが茎から外れる。
- 市場に卸しても食べられる期間が短いため、市場販売の予定はない。
- 阿部さん以外に、香りメロンを作っている農家は2名ほどいる。
明雄さんメモ
- メロンは他の作物と違って、栽培が難しいんだ。一株ずつ手入れをしっかりしないといいのができないからな。個人でやるには大変なんだ。村で栽培した時も、アブラムシにやられたりと色々苦労したな。
- この手入れ次第でメロンのおいしさも変わるからしっかりとしないといけないんだ。
だだちゃ豆の特徴
- 今では全国的に知られている幻の枝豆。鶴岡市の伝統野菜。
- 一般的な枝豆に比べ、豊富な旨味成分、栄養素を持つ。
- 枝豆の一種で、山形県鶴岡でのみ栽培される。
- 鮮度が落ちやすく、鶴岡市周辺でしか食べられなかったが、近年冷凍技術の発達により全国に出回るようになった。
- 収穫期間が7月下旬~9月上旬までの約1カ月しかなく、この期間外の豆はだだちゃ豆とは呼ばれない。
- 表面に茶色のうぶ毛がある。また、豆についている薄皮が少し茶色いことも特徴のひとつ。
- 味はとうもろこしの様な甘さで、畑に生えた状態でも匂いが伝わってくるほど香りが強い。
だだちゃ豆農家 (豆豆クラブ)
小南 智さん(59歳)
昔は、田んぼをメインでやっていたが、転作としてだだちゃ豆の栽培を開始しし、現在16年目。
13年前、近所に住んでいた幼なじみの菅原さんと「豆豆クラブ」を結成。妻:小南美弥子さん(53歳)
菅原 淳さん(54歳)
豆豆クラブ名付けの親。農協からの振込口座名を決める際に、畑近くのカントリーエレベーター「米米ランド」からネーミングを思いつく。妻:菅原澄子さん(54歳)
だだちゃ豆 名前の由来
明治時代、当時の鶴岡を治めていた庄内藩の殿様が大の枝豆好きで、ある農家のお父さんが献上した枝豆の美味しさに感動し、「あのだだちゃ(山形の方言でだだちゃ=お父さん)の作った枝豆が食べたい」と口にしたことからその名がついたという。
おいしいだだちゃ豆の育つ要素
①寒暖差
昼夜の寒暖差があるほど、日中に光合成で得た栄養を蓄える。
②朝もや
だだちゃ豆畑の近くの湯尻川には、湯田川温泉の温泉水が含まれているため水温が高くなり、空気中の湿度が上がる。さらに、夜の涼しい状態から朝方の急な温度上昇により朝もやが発生する。葉やサヤに朝もやの水滴が付くと株の温度も下がるので、栄養を溜めやすくなる。
③根粒菌
- 豆科の根に共生し、根粒をつくる土壌細菌。
- チッ素の少ない土地で豆科植物を育てると、根には根粒菌がつく。
- この根粒菌は、空気中のチッ素(根・茎・葉の発育を助ける)を植物が取り入れやすいアンモニアに変えて供給してくれる。
④水はけがいい土地
- だだちゃ豆の畑一体は「砂状土」と呼ばれ、水はけがいい。
※水はけが悪いと根張りも悪くなる。
- 根粒菌が空気を取り込みやすい。
管理/収穫機械
管理機
最初は平らな状態から徐々に管理機を使い、最大で8回かけて畝を作る。
うねる事により、土に空気を含ませ根粒菌の働きをよくする他、倒伏防止、発根促進、除草、排水なども兼ねる。また、畝を1回作る事は、肥料を1回蒔くのと同じ効果があるという。
収穫機「まめ一番」
豆専用の収穫機。機械の下に付いた刃が土に潜り、根元から茎を切断し収穫する。これで余分な土や根を取り除き、後の選別作業を楽にし、土に根粒菌を残す事ができる。値段は150万円ほど。
脱莢~袋詰め
収穫したてのだだちゃ豆は鮮度が急激に落ちるため、いかに短い時間で収穫からパック詰め、冷蔵出来るかがポイントとなる。機械を使う事により、作業がスピーディーになる。
脱莢(だっきょう)
機械で茎からサヤをはずす。サヤの付いた茎をチェーンに引っかけ流し、回転するパイプについたゴムがサヤのふくらみに引っかかり茎とサヤが分かれる。
洗浄
収穫した豆には泥などが付いているため、洗浄する。この際、豆の特徴であるうぶ毛が取れてしまう。
収穫して少し経つと豆は発熱するため、発熱した豆を冷やす働きもある。
脱水
洗浄した豆を入れたザルを回転させ、脱水する。水分を取る事により、後の作業がしやすくなる。
選別
脱水した豆をベルトコンベアでゆっくり流し、目で見て選別する。はじくのは「1粒豆」「実の入っていない豆」「病気の豆」「虫食い豆」など。約3割ほどが加工食品になる。
袋詰め
選別し終わった豆を計量し、袋詰めする。この状態にしたら直ぐに自宅の冷蔵庫に入れて冷やし、決められた日に出荷する。正真正銘のだだちゃ豆にはJA鶴岡の認証マークを付ける。
美味しいだだちゃ豆の塩ゆでレシピ
- 収穫した豆を水で洗い、茶毛を取る。
- ザルに開けて水を切り、塩をもみ込む。
- 熱湯に2~3分入れる。
- 1~2サヤ割れてきたらザルにあけ、氷水で一気に冷やす。
- 最後に塩をふりかけ完成。
☆最初に塩もみをすることで湯で上がった豆が色鮮やかになり、氷水で冷やすことで食感をよくする。
明雄さんメモ
土・環境と様々な要素を含めて、その作物の味が変わってくるから、学ぶ事は本当に沢山あるな。枝豆は作った事があるけど、味は全然違ったぞ!